閣議後記者会見概要

H14.03.22(金)9:26~9:51 厚生労働省記者会見場

広報室

会見の詳細

閣議について

大臣:
今日の閣議におきましては、大臣発言としましては経済産業大臣から石油代替エネルギーの供給目標の見直しにつきましてのご発言がございました。総務大臣から地方財政の状況につきましての、地方財政白書についてのご説明がございました。外務大臣からアフガニスタン暫定行政機構による医療機器等の購入に対する資金供与、パキスタンにおけるアフガニスタン難民に対する緊急援助、エイズ基金に対する資金供与及びアフリカ難民に対する緊急援助についてのご発言がございました。大臣発言は以上でございます。

質疑

記者:
C型肝炎の話なんですけれど、こちらの厚生労働省の対応が遅れているという指摘もあるようですけれども、大臣のお考えを聞かせていただけますか。
大臣:
私、就任させていただきましてから、最優先課題としてこの問題進めさせていただいているわけでございますが、歴史的に見ますとこの問題に対する対応が遅れていたことだけは事実だというふうに思います。C型肝炎そのものの実態が明確になったのが非常に遅れたということもあろうかと思います。C型肝炎ウイルスが発見されましたのが1988年でしたか、平成元年ぐらいだったというふうに記憶いたしておりますが、C型肝炎ウイルスが発見をされましたその後、それを今度は検査をする検査方法、それが確立をしましたのが、やはり平成2年から3年にかけてぐらいだったと思います。そうしたことがございまして、日本におきましてもC型肝炎ウイルスに対する検査が導入されましたのが平成元年からでございますが、改正をされまして本格的な検査が導入されましたのは平成4年からでございます。この頃から一様に0.何パーセント、0.1パーセントとか、それぐらいはそれでも尚かつそこをくぐり抜けるのはいるけれども、そのぐらいに抑えることが出来るようになったということでございます。
私がこの血液に関わりを持ちました頃、かなり前の話でございますが、その頃は売血が主体でございまして、ですからそれは昭和40年ですから1965年くらいですかね、そのくらいだった時には、この保存血液の売血が中心でしたけれども、50パーセントぐらい、いわゆるその頃C型肝炎というのは分からなかったものですから、輸血後肝炎、あるいはまた血清肝炎、こういうふうに呼んでおりました。50パーセントぐらい罹患をしていたわけでございます。そしてそれを献血に切り替えてなんとかこれをくい止めようというふうにしたわけでございますが、献血に切り替えましても尚かつ30パーセントぐらいの血清肝炎、輸血の肝炎の発生率がかなり長い間続いておりました。これはなぜ献血に切り替えても続くのかというのが良く分からなかったわけでございますが、一つは病院で売血によります血液と献血によります血液の双方をミックスして使っていたということも考えられますし、あるいはその他の医療の中における問題も無しとはしないというふうに思っておりましたが、それがやはり落ち着いてまいりましたのが1980年代、ですから昭和50年代になりましてようやく輸血の血液によりまして血清肝炎の起こる人が約一割、10パーセント前後、そのぐらいのところまでは抑えることが出来たというふうに思っておりますが、尚かつそれだけの血清肝炎が発生してきたわけでございます。
昨日来、皆さん方の方の新聞紙に取り上げられております問題は1977年ですから、昭和52年ですか、その頃日本におきましては、輸血用の血液によりましても10パーセント前後の発生率があった時代でございます。フィブリノゲンとか、そういう血液製剤を作ります前には一人の人の血液ではなくて多くの人の血液をミックスして、そして一つの製剤を作るものですから、一つの製剤の中に多くの人の血液が入っておりますので、この血清肝炎に罹る確率というのは非常に高いことも事実でございます。したがって、アメリカが1977年、昭和52年に製造禁止しました理由も、多分多くの血液を使っている血液製剤は血清肝炎に罹患する可能性が高いということが一つの大きな理由ではなかったかというふうに思います。そうではなくて、それに変わるべきクリオというようなことがよく言われておりますが、一人の人の血液を使ったその製品、代替品を使ってやることの方が血清肝炎を予防するという意味で非常に効果がある、効果があると申しますか、危険性が少ないという判断ではなかったかというふうに私は想像いたしております。そこがアメリカの偉いところでございまして、日本の中には血液、あるいは血液製剤を使うことによって、その後血清肝炎、輸血後肝炎というものが起こることはなんとなく止むを得ないことという、そういう雰囲気と申しますか、そうしたものが医療界全般にありましたことも事実でございまして、どうしてそれを減らしていくかということに対する努力、そしてそれをどうしたら避けることが出来るかということに対する取り組みというのが、非常に私は遅れていた時代だというふうに思っております。全体がそういうことでございまして、旧厚生省としましてもその頃の、したがって取り組みが非常に甘かったと言わざるを得ない。
それ以後、今日に至ります経過をずっとこのエイズの問題、C型肝炎の問題、あるいは若干血液からは外れますけれども、ヤコブ病の問題等々、それらのことを考えていきますと、やはり厚生労働省として考え直さなければならないいくつかの点があるというふうに思います。その一つはやはりこの生命に関わる分野、とりわけ薬剤でありますとか、医療機器でありますとか、あるいは食品でありますとか、そうした分野に対する人の配置というものが十分であったかどうかということだと思います。ヤコブの時におきましても、1973年当時、医療用具の担当者というのは一人の人がやっていた。これは年間700件も800件もあるわけでございますから、それを国内における問題、外国からの問題、一人で処理するというのはそれは大変なことだと思います。そしてその人に外国からの文献まで読めといったってそれは読めるものではないと思うんですね。ですからそういう人の配置の問題というものに、やはり配慮が十分であったかといったことを、今我々は反省しなければならないというふうに思っています。これからまた新しいゲノムの問題等々、新しい問題も出てまいりますし、こうした医療器具、あるいはまた医薬品、あるいは食品の中にも薬なのか食品なのかというような境界線上のものもございますし、こうしたところのものにつきましては、やはり十分な配慮が必要でありますし、人の配置というものもしなければならないというふうに思っております。
もう一つの私は反省点としては、世界の状況、外国の進歩の状況、いわゆる世界の動きというものに対して、もう少しやはり敏感にならなければいけない、対応しなければならない。文献の吟味と申しますか、そうしたものにつきましてももう少しやはり積極的に取り組まなければならない、そういうふうに思います。ですからこの厚生労働省にはもちろん文系の優秀な人も入ってくるわけでありますが、技術系の、医師を始めとして、優秀な人がたくさん入ってくるのですけれども、すぐ辞めてしまう、やはりそういう人達にはそれなりの仕事をさせないからではないかと私は思っております。優秀な人を集めておいて、毎日コピーばかりさせておいては、それはその人達も嫌気をさして、それは辞めてしまうのではないか。それなりのやはり、何も初めから特別な扱いをしようというふうに私は言いませんけれども、そうしたいろいろの訓練もしなければなりませんが、そうした本来やらなければならないことももう少し真剣にやるということをやっていかないと、やはり世界から遅れてしまう。世界から遅れるだけではなくて、世界のいろいろの研究結果というものに対して十分に対応できない、そんな気がいたします。
これはヤコブの時にも言われたことでございますが、もう一つはその厚生労働省及びその所管する研究所等を持っておりまして、その中にはいろいろのことが書かれておりましても、そのことが厚生行政そのものにそれが反映されて来ない、ただその研究所の中の研究者の学問的興味に終わってしまっている。やはりそれではいけないので、そこはひとつそのことが即、敏感に打てば響くように行政の中に反映されてこなければいけないというふうに思っております。その辺のことにつきましても反省をしなければならない。エイズのことやヤコブのことがございましてからかなり内部の体制は立て直しをされておりますし、そうした研究所の皆さん方と、そしてこの行政、この厚生労働省の中と一体となっていろいろと話し合いをする機会も作られておりますから、前のようなことはないというふうに思いますけれども、その辺のところももっと締め直していかなければならないのだろうというふうに反省をいたしております。
そうした反省点を踏まえてこれからいろいろのことを手がけていかなければなりませんが、さて、問題は過去のC型肝炎に罹患をしてしまった人たちに対して一体どうするかという問題、これは最大の課題になるだろうというふうに思います。従いまして、今年は予算要求におきまして、とにかく過去にそういう輸血でありますとか、血液製剤を使いました皆さん方の検査をして、そしてどの人が肝炎に罹患し、そして罹患しただけではなくて現在もウイルスを持っているのかどうかといったようなことを明確にするということがスタートでございますけれども、それをやりながら、じゃあその人たちに対してどう手を打つのか、現在非常に治療方法も限られておりますが、しかし最近C型肝炎に対する研究もかなり活発になってまいりましたし、新しいこういう薬を今開発をしておるというようなニュースも聞いているところでございまして、もう少し研究対象の中にもC型肝炎に対する研究をしていただくところを増やすということも大事でございますし、この皆さん方に対して早く手を打てるような体制を国としても取らなければならないというふうに思っております。今年の予算でというわけにはまいりませんから、こうした問題は来年度予算の、厚生労働省の中でも大きな課題になるものというふうに思っている次第でございます。以上感じておりますことを申し述べた次第でございます。
記者:
罹患者への対応というのは救済とかというものも含めてですか。
大臣:
一番大事なことは救済と申しますか、この皆さん方の治療をどうするかということだろうと思うんですね、罹患をしている人たちに対しましては。ですから現在のインターフェロン一本槍のようなことではなかなか十分な対応が出来ませんので、ここをどうしていくかということが大事だと思います。こうした人たちに対する常に監視を怠らない、体の状況に対する監視を怠らない、万が一悪化の兆しがあったときにどういうふうに手を打てるか、まあその辺の整理がもう少し必要ですし、新しい研究の必要性もあるだろうというふうに思っております。
記者:
先程出たヤコブの関係なんですけれども、今後のスケジュールで分かっているのがありましたらお教えいただけないかと。
大臣:
私もあまり細かく、具体的なことは今聞いておりませんけれども、とにかく月曜日ですかね、月曜日の日に和解の調印式をやらせていただく、その中でいろいろお話し合いが今進んでいるだろうというふうに思いますから、今後行わなければならない問題もその中で議論されているというふうに聞いておりますから、そうした問題につきましては出来る限り速やかにこれから対応していくのだろうというふうに思っております。
記者:
フィブリノゲンの話ですけれども、FDAが禁止をした2年後に今で言う国立感染症研究所の方がそのことを著書に書いておられるという報道がありまして、そのことどこまで厚生労働省として把握しているのかということをお伺いしたいのですが。
大臣:
ちょっとその頃のことを僕もよく分かりませんけれども、多分ですね、それはいわゆる研究者としての知識はあったんだろうというふうに思いますが、そのことを即厚生労働省の行政にすぐ取り入れなければならないということにはならなかったんだろうと、まず現状から考えますとなってないわけでありますから、多分そういう話にならなかった。それはそういうふうに書かれたことすら厚生労働省に本省の方が知らなかったのか、それともお書きになった先生がそうしたことをおっしゃらなかったのか、まあ良く分かりませんけれども、そうしたところにそれが進まなかったのだろう。ですからいわゆる研究者は学問的興味は持ちますけれども、それを即行政に生かすということがなかなか不得手である、なかなかそういうふうに今までなっていない。それはこのC型肝炎だけの問題のみならず、ハンセンの時もそうでございますし、エイズの時もそうでございましたし、今回も同じパターンだというふうに思っております。ですから行政の側の問題もございますが、研究者としての姿勢、これはもう全体の日本における研究者としての姿勢の問題も私はあると。学者は自分がやっております周辺のことについての学問的興味というものは非常に強いわけでございますが、そのことをどう行政に反映させるかといったことについての思いというのは、あまり持ち合わせていない人が過去には多かった、現在はどうか知りませんけれども、そういう傾向が日本の中にはあったということは事実だというふうに思います。これはもう反省しなければならない点だと私は思います。
記者:
一昨日の年金の方ですけれども、物価スライドの法案の審議の中で、大臣はスライドに当たっては公務員給与と並んでということも一時考えたという発言が答弁にありましたけれども、その辺もう少し詳しくお聞きしたいのと、仮に今年また下がるような事態があったら、来年の改訂に当たってはそういう人事院勧告との連動も一つの検討項目になるという趣旨であるという発言だったのでしょうか。
大臣:
そんなにここを連動して省内で議論をしていたという話ではございませんが、私はこのスライド問題がまもなく起こるであろうことは想像できたわけでございまして、その時に人事院勧告の行方というものを非常に注目をしていたことは事実でございます。もし公務員の定期昇給がストップされるということであるならば、それに合わせて年金の方も一つご辛抱をいただかなければならないというふうに思っておりました。しかしベースアップは一応見送りになりましたけれども、定期昇給の方につきましてはそのままになったという経緯がございまして公務員の方が定期昇給をしておいて、そして年金受給者に対しましては引き下げをするというのはなかなか理解をしてもらいにくいのではないかというふうに実は考えておりました。そうしたこともございますので、今後の議論をいたします時にそうしたことも加味しながら、これから一体どうするのかということを今度こそはやはり真剣にもう少し詰めないといけないだろうというふうに思います。昨年の議論の時にはまだ物価は下がっているということはあまり私も考えていませんで、間もなく物価の下落はストップするだろうと、多分平成14年の法案を審議する頃には少なくとも若干上がっているのではないかという予測をいたしておりましたが、それは私の全くの予測違いでございました。尚かつ下がり続けているというのが現状でございまして、また同じ道を歩まなければならないというのが実情です。

(了)