薬系技官の関わる
プロジェクト

PROJECT #01令和4年薬機法等一部改正の内容(緊急時の薬事承認、電子処方箋の仕組みの創設)

医薬品や医療機器等の取り巻く状況の変化を受け、令和4年に「医薬品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)等の改正が行われました。この改正では、緊急時に新たな医薬品等を迅速に承認する「緊急承認制度」と、現在紙で行われている処方箋の運用や処方情報等のやりとりを電子的に行える「電子処方箋」の仕組みが創設されています。

医薬局 医薬品審査管理課 主査

緊急時のための特別な
医薬品等承認制度の創設

医薬局
医薬品審査管理課 主査

新型コロナウイルス感染症に対する薬事上の対応と課題

新型コロナウイルス感染症の発生以来、本邦でも様々な対策が取られてきましたが、その中でも医薬品等の実用化は特に力を入れて対応されてきたものの一つです。2020年5月7日にはじめての治療薬であるレムデシビルが特例承認され、ワクチンについては2021年2月14日にコミナティ筋注が特例承認されました。現在では、多数の治療薬、ワクチンが承認されています。

これらの医薬品等の承認にあたっては「特例承認制度」を用いて迅速な承認を図りました。特例承認制度は海外で流通されている医薬品を対象に、緊急に使用されることが必要である等の場合に、特例的に迅速に承認ができる制度です。しかし、通常の承認と同じレベルで有効性と安全性を確認する必要があること等から、諸外国に比べると特にワクチンにおいて導入が遅いことが課題とされました。これを受け、有事により早期の実用化を可能とするための仕組み作りが行われました。

緊急承認制度の創設

制度の創設にあたっては、まず医薬品医療機器制度部会という会議において、どのような制度にすれば国民の不利益になることなく、迅速な承認を行えるか、専門家に意見を伺い、制度の概要をとりまとめました。このとりまとめを踏まえ、実際の制度の形、つまり法律の案へと落とし込んで、国会で改正法案の審議をしていただきました。

このような経緯で創設された「緊急承認制度」は、これまでの承認と大きく異なり、安全性を「確認」した上で、有効性が「推定」されたときに、条件や期限を付して承認を与えることができる制度となりました。有効性が推定された段階で承認することから、その後有効性をきちんと「確認」できるデータを集めて再度承認申請を行う必要があります。

そして、みなさんご存じの通り、11月22日に塩野義製薬のゾコーバ錠が初の緊急承認品目となりました。今後、さらに良い制度へとブラッシュアップするべく、ゾコーバ承認で見えた課題に取り組んでいくところです。

今ある制度を運用して課題に立ち向かうこと、今ある制度では不足している点を踏まえて新たな制度を作っていくこと、そういった「大きな」仕事がこの職場の最大の特徴とも言えると思います。その一端を感じ取っていただければ幸いです。

医薬局 医薬品審査管理課 主査

デジタル技術を医療現場に
つなぐ電子処方箋

医薬局
総務課 企画調整専門官

DXの波に乗る医療制度改革

現在、ありとあらゆる科学技術は目まぐるしく発達し、様々な仕組みに影響を与えています。中でもデジタルの発展は目覚ましく、デジタル技術によってこれまでの仕組みを変えていくことはDX(デジタル・トランスフォーメーション)と呼ばれています。医療分野でも、医療DXとして、医療現場の効率化や医療の質を高める改革が進められています。医療DXでは情報の共有や利活用に重きが置かれており、医療従事者や自治体が必要な時に必要な情報を共有できるようにするだけでなく、国民・患者が自ら予防・健康づくりに利活用することも期待されています。

始まる電子処方箋

令和4年7月から、電子処方箋の運用開始に向けた業務を担当しています。電子処方箋は、単に処方箋を電子化しただけではありません。システムを導入した施設では、患者のマイナンバーカードによる同意があれば、他の施設で処方・調剤された薬をリアルタイムで確認することができます。これにより、患者の記憶に頼らず、患者の過去の治療歴を把握した上で治療に当たることができるなど、医療の質向上が期待されます。また、処方・調剤しようとする薬について、重複投薬や禁忌のチェックをする仕組みも備えており、医療安全にも繋がります。運用開始後にも、当初は搭載できていない様々な機能拡充を予定しています。これからもこのような医療DXの流れは続いていきます。電子処方箋はその中の先駆的な取り組みと言えます。

電子処方箋は医療機関から薬局まで、加え、国民・患者全てに関係するものであり、厚生労働省の業務の中でも最もウイングの広い業務の一つです。具体的な業務については、法的な整理から、国民・患者用の動画作成など、多岐にわたります。複数の部局にまたがっている内容も多く、厚生労働省としての集大成的な施策とも言えるでしょう。そういった中で、関係者の合意形成をしながら一つずつ進めていくのはとても大変ですが、同時に、とてもやりがいのあるものです。広い視野を持ち、様々なことへのチャレンジ精神がある方と一緒に仕事ができることを期待しています。