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介護分野における「生産性向上」とは?介護の生産性

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一般的な生産性向上のとらえ方

一般的に生産性向上は、従業員及び労働時間数あたりの付加価値額を設備投資や労働の効率化などによって向上させるものとされます。

生産性は、Output(成果)/Input(単位投入量)の分数で表しますが、実際の生産性を向上させるためには、「Input」と「Output」の間にある過程「Process」に着目して取り組む重要性が指摘されます。

介護サービスにおける生産性向上のとらえ方

本ガイドラインでは、「一人でも多くの利用者に質の高いケアを届ける」という介護現場の価値を重視し、介護サービスの生産性向上を「介護の価値を高めること」と定義しています。本事業における介護の仕事の価値を高める取組は、人材育成とチームケアの質の向上、そして情報共有の効率化です。この3つを生産性向上に取り組む意義とし、介護サービスの質の向上と人材定着・確保を目指します。

生産性向上の目的のとらえ方は様々あり、例えば整理整頓により物を探す時間を短縮し、利用者とのコミュニケーションの充実やどう質を高めるか考える時間をもつことが挙げられます。そのようなとらえ方は、利用者について新しい発見をしたり、仕事の意義を再認識するなど、自らの仕事へのやりがいや楽しさを実感し、モチベーションを向上させることにつながります。

また、評価の観点は量的な効率化と質の向上に加え、職員間での負担の偏りを是正しつつ、チームケアを通じてサービスを提供するという意識も重要です。

「介護サービスにおける生産性向上」

  • 要介護者の増加やニーズがより多様化していく中で、業務を見直し、限られた資源(人材など)を用いて一人でも多くの利用者に質の高いケアを届ける。
  • 改善で生まれた時間を有効活用して、利用者に向き合う時間を増やしたり、自分たちで質をどう高めるか考えていくこと。

介護の価値を高める

本ガイドラインにおいて生産性向上をとらえる目線:事業所の目線

生産性向上をとらえる目線

  • ケア従事者の目線 (介護技術)
  • 事業所の目線
  • 法人の目線
  • 地域単位の目線
  • 政策・制度設計の目線

事業所の目線でみる生産性向上の目的

  • 専門性を高めること
  • 働くモチベーションが向上すること
  • 仕事の価値が見えてくること
  • 仕事に向き合う姿勢を改善すること
  • 仕事の負担と負担感を減らすこと
  • 利用者の存在を支える仕事であることに気づくこと
  • 適切な作業をより省力化すること
  • 役に立っているという実感を高めること
  • チーム意識を高めること

介護の生産性向上を考える場合、立場によってとらえる側面が異なりますが、本ガイドラインでは、職員を含む事業所の目線で生産性向上の取組を扱っています。どのような立場で生産性向上の取組を進める場合でも、介護保険制度の目的・基本理念である利用者の尊厳の保持や自立支援を忘れてはなりません。

業務改善の視点から整理した生産性向上の取組

介護サービス事業所における生産性向上に取り組む意義は、人材育成とチームケアの質の向上、そして情報共有の効率化です。介護サービスにおける生産性を高める方法として、本ガイドラインは業務改善の視点から取りまとめています。

具体的には、日常業務の中にあるムリ・ムダ・ムラを見つけ解消していく一連の取組です。本ガイドラインでは、業務改善の視点から取り組む生産性向上の取組を次ページの7つに分類しています。

生産性向上に取り組む意義

生産性向上の取組成果のイメージ

本ガイドラインでは、介護に関する業務を、利用者に直接触れて行う介護を「直接的なケア」とし、それ以外の業務を「間接的業務」に分け、取組成果の考え方を「質の向上」および間接的業務の「量的な効率化」の2つの視点からとらえています(以降における業務については、特に明示がなければ「間接的業務」を指します)

※例えば、自立支援の観点から、利用者と共に行う掃除や調理は直接的なケアにあたります。

直接的なケア
食事介助、排泄介助、衣類の着脱介助、入浴介助などの身体介護や掃除、洗濯など直接的なケア の生活援助といった、利用者に直接接しながらサービスを提供する業務
間接的業務
情報の記録・入力や各種会議、研修への参加など、利用者とは直接接しない形で行う業務

1.質の向上

業務時間や内容の相対割合

業務の質を高めた成果イメージ

「質の向上」は、業務の改善活動を通じて、ケアに直接関係する業務時間の割合増加や内容の充実を意味します(上図①)。

2.量的な効率化

業務時間量

効率化した成果イメージ

「量的な効率化」は、業務の質を維持・向上しつつ、ムリやムダのある作業や業務量(時間)を減らすことを意味します(上図②)。

「量的な効率化」により業務負担を軽減し働きやすい環境づくりを図り、業務改善によって生み出した時間や人手の余裕を研修の実施やOJTなどの人材育成の時間に振り分け、「質の向上」に活用する考えもあります(上図②)。

また、特定の個人への仕事の偏りを是正することは、仕事に対するモチベーションの向上につながります。その結果、利用者とのコミュニケーションは増え、より理解が深まり、また職員間のコミュニケーションも豊かになるなど、チームケアが促進され明るい職場作り、楽しい職場作りにつながります。

3Mとは・・・

各要素の概要と介護現場における事例

要素 概念図 / 概要 介護現場における事例
ムリ
設備や人材の心身への過度の負担
キャリアの浅い職員がいきなり一人で夜勤になる
体重80kgの男性利用者のポータブル移乗を女性の介護職員1人で対応する
ムダ
省力化できる業務
利用者を自宅に送った後、忘れ物に気づき、もう一度自宅に届ける
バイタルなどの記録を何度も転記している
ムラ
人・仕事量の負荷のばらつき
手順通りに作業する職員と自己流で作業する職員、状態に応じて介助する職員がいる
曜日によって、夕食の食事介助の介護スタッフ数がばらつき、食事対応に差が生じる
介護記録の研修もなく、記載の仕方が職員によってマチマチで正確に情報共有がなされない

3Mの模式図

ムリ
目的に対して手段が下回ること(目的>手段)
ムダ
目的に対して手段が上回ること(目的<手段)
ムラ
目的に対して手段が下回ったり、上回ったりすること(目的>手段 or 目的<手段)

5Sとは・・・

3S(整理・整頓・清掃)の徹底・繰り返しにより、組織の業務プロセスとして習慣化させることが重要。

要素 概要 介護現場における事例
整理 要るものと要らないものをはっきり分けて、要らないものを捨てる 保存年限が超えている書類を捨てる
整頓 三定(定置・定品・定量)手元化(探す手間を省く) 紙オムツを決まった棚に収納し (定置・定品)、棚には常に5個 (定量)あるような状態を維持し、取り出しやすく配置する(手元化)
清掃 すぐ使えるように常に点検する 転倒防止のために常に動線上をきれいにし、水滴などで滑らないようにする
清潔 整理・整頓・清掃(3S)を維持する清潔と不潔を分ける 3Sが実行できているかチェックリストで確認する使用済みオムツを素手で触らない
決められたことを、いつも正しく守る習慣をつける 分からないことがあったとき、OJTの仕組みの中でトレーナーに尋ねることや手順書に立ち返る癖をつける

PDCAのサイクルイメージ

Plan(計画)→Do(改善)→Check(評価)→Action(課題・計画の練り直し)を繰り返し行うことが、PDCAサイクルを回すことです。

何度も繰り返しPDCAサイクルを回すことで、継続的に改善活動に取り組みましょう。