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本サイトは厚生労働省の表彰事業「グッドキャリア企業アワード」を通じて、企業や働く方に自律的なキャリア形成について発信するためのサイトです。

グッドキャリア企業アワード2017
企業向けセミナーを開催しました!

平成30年2月1日(木)、オーバルホール大会議室(大阪)において「グッドキャリア企業アワード2017企業向けセミナー」を開催しました。当日は企業の人事担当者を中心にご来場いただき、厚生労働省による挨拶、坂爪 洋美氏による「自律的なキャリア形成の支援と働き方改革」をテーマとした基調講演と、坂爪氏をコーディネーターに迎え、2017年度受賞企業3社を交えたパネルディスカッションを実施しました。

開会挨拶

厚生労働省より、開会の挨拶として「グッドキャリア企業アワード」の事業目的などについてご説明しました。

基調講演

「自律的なキャリア形成の支援と働き方改革」をテーマに、坂爪 洋美氏(グッドキャリア企業アワード2017審査委員かつ推進委員/法政大学 キャリアデザイン学部 教授)による基調講演を行いました。

≪基調講演概要≫

自律的なキャリア形成を狭義に考えると、変化する環境を前提に「どのような仕事に取り組み、どのようなキャリアを形成したいのか」と、「その実現に向けて自律的・継続的に試行錯誤すること」が求められる。
「デザインしたものを計画通りに実現していく」と考えがちだがキャリアは思ったようにはいかない。想定外の出来事が起きた場合でも、その都度ビジョンを修正したり、ときには挫折・失敗をしながらもより良いキャリア形成に向けて前向きに取り組む姿勢が大切である。

なぜ今、「自律的なキャリア形成」が求められているのか。
時代の変化によって企業・個人のおかれた状況が変わり、我々が生まれた頃とは「グッドキャリア」の考え方が変わってきている。
会社が主導(決定)するだけではなく、個人もキャリア形成に関与することが大事になってきている。個人が関与し考えることで自らのキャリア形成に対して積極的になれる。また、会社側の要因として、主導するうえでの課題が顕著になってきている。

個人がキャリア形成に関与する意義として、自身に裁量権があること=自分の問題として考えることでキャリアに対する意欲を高めることができる。また、上司や人事部がその人のモチベーションを高め、キャリア形成に向かわせるためには、人によって異なる「働く上でのモチベーションの源」が見えやすくなるため、人材マネジメントのきっかけ(スイッチを得るきっかけ)になり得る。

管理職になる割合が低下(長期的なキャリア展望の実現性が低下)、また、働く人々の価値観や働き方が多様化することで、既存のキャリア・ラダーに魅力を感じない従業員が出現してきたことから、会社がキャリア形成を主導する上での従来の「昇進・昇格」というシンプルなキャリア目標に代わる目標提示が企業の大きな課題である。

「個人が主体的にキャリア形成に関わる=会社がキャリア形成でやる範囲は狭まった」ということではない。自律的なキャリア形成には企業による支援が必要であり、むしろ会社ができることの幅は広がり、個別的なアプローチについても不可欠となる。

「自律的なキャリア形成」と考えたときに、「やりたいこと」にフォーカスされがちだが、
キャリア形成支援の前提は「仕事に必要な能力を高める」ことである。
企業は従業員の積極的な育成(OJT・Off-JT)、育児や介護による離職防止や非正規から正規への転換を可能にするなどキャリア形成上のハードルを取り除き「やりたいこと」と「できること」を擦り合わせることが必要となる。
また、「自律的」という言葉を従業員が前向きに捉えるために会社に対する信頼感、キャリアに対する納得感を得ることも重要である。

これらを踏まえ、企業が従業員の自律的なキャリア形成支援に取り組むうえで重要なことは、以下のようなものがある。
・「キャリア」を考えるきっかけを従業員が分かる言葉を用いて伝えること。
・従業員の「自律」につながる職場環境整備と、獲得するステップを提示すること。
・継続的な能力開発に取り組むこと。
・会社が目指す方向ならびに従業員に求めることを今まで以上に明示すること。
・「わが社におけるキャリアの成功パターン」を複数提示すること。


従業員からすれば自律的なキャリアがゴールになり得るが、
企業にとってのゴールは、あくまでも「仕事に対して主体的に取り組む従業員」、「自らの能力向上に積極的な従業員」を増やし、「やらされ感」以上のパフォーマンスを従業員が発揮できるようにすることにある。「自律的なキャリア形成支援」に取り組むことを途中経過の指標とすることは良いが目標としてはならない点に注意が必要である。

また、「働き方改革」における長時間労働の是正は「自律的なキャリア形成支援」と密接につながっている。企業にとって「いつでも」「いつまでも」働ける従業員は重要だが、「子育てなど家庭の事情により残業できない」=「仕事ができない」と受け取られかねない。長時間労働が根付いている企業においてはそういった従業員の能力を発揮しにくくする環境を作り出し自律的なキャリア形成の目標を阻害する。
労働時間を削減しパフォーマンスを維持するためには、業務改善ないしは従業員の能力を高めることが必要となるが、能力を発揮しきれていない従業員にはキャリア形成上のハードルを取り除き、より積極的な育成を行うことが求められる。

企業が従業員に対し外圧的に長時間労働の是正を求めることは「働かせ方改革」となりかねないが、働き方改革の最終的なゴールは、「限られた労働時間の中で従業員自身が主体的にコントロールし、最良のパフォーマンスを発揮すること」にある。「働き方改革」は労働時間の観点から自律性を求め、「自律的なキャリア形成」はキャリアの観点から自律性を求めることから相互補完的な関係性にあり、二つの取組を組み合わせることは企業の成果につながっていくものと考える。

パネルディスカッション

グッドキャリア企業アワード2017受賞企業3社の人事担当による取組・事例紹介をはじめ、コーディネーターに坂爪氏を迎えパネルディスカッションを行いました。

≪コーディネーター≫

坂爪 洋美 氏

≪パネリスト≫

グッドキャリア企業アワード2017大賞:
川相商事株式会社 宮脇 和孝 氏
大同生命保険株式会社 三田 小太郎 氏

グッドキャリア企業アワード2017イノベーション賞:
有限会社ウェルフェア三重 舟橋 学 氏

≪パネルディスカッション概要≫

冒頭での登壇企業の事例紹介を踏まえ、坂爪氏が質問を投げかけ、各パネリストが回答することを通じて、各企業の取組の苦労や工夫、成果の秘訣、今後の課題などを議論した。
坂爪氏から今後の展望についての問いかけに対し、各企業の登壇者は以下のように回答した。

「他業種と同じく人手不足が経営課題。
多様な人材の活躍に向け、新たに障がい者雇用を増やし、既存の障がいを持ったスタッフについても今まで以上に働きやすい環境整備を進めるなど、更なる支援に取り組みたい。
より付加価値の高いサービス提供のためにロボットの活用も視野に入れている。
オペレーターの育成が必要となるが、会社としてもプラス、従業員のキャリアアップにもプラスになっていくと考えている。」(川相商事株式会社)

「全国の拠点単位で社会貢献活動に取り組んでいるが、チャネルや部門を超えて共通の課題に取り組むことにより、社内のコミュニケーションが活性化され、キャリア形成支援へのプラスの作用を期待している。
また、在宅勤務・サテライトの拡大といったテレワークの推進にも取り組んでいる。
転勤のない地方勤務の方はキャリアが閉塞しがちになってしまうケースがあるため、
地方拠点でもキャリアの幅を広げられればと考えている。
」(大同生命保険株式会社)

介護事業は保守的・閉鎖的なイメージが強いため、利用者にとっても既存の従業員に対しても新しい発想・提案ができるよう介護事業の枠にとらわれないプロジェクトに取り組んでいる。
暗いニュースの多い介護業界に向けて、明るい話題を広げられるようにこれからも取組を進めていきたい」(有限会社ウェルフェア三重)

総括の中で坂爪氏は、三社の取組の共通点を踏まえ、
これらの企業においてはそれぞれの従業員が「何を考えているか」、「どのような人か」をきちんと把握できるようコミュニケーションを活発に行い、そういった姿勢が従業員の様々なスキルに根付いていることが強みであると考える。
キャリアは個人に宿るものではあるが、キャリア形成の土壌づくり、環境整備においても人にフォーカスするだけではなく、より幅広い選択肢を提供できるよう多角的に工夫している。
従業員の能力形成に対し非常に積極的に取り組み、より能力を高めるために様々なアイデアを出し継続的に実行している。本日登壇頂いた企業には是非これからも先駆的な取組を進めて頂きたい。」と述べ、セミナーを締めくくった。

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