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本サイトは厚生労働省の表彰事業「グッドキャリア企業アワード」を通じて、企業や働く方に自律的なキャリア形成について発信するためのサイトです。

グッドキャリア企業アワード2017
表彰式を開催しました!

平成29年11月27日(月)、有楽町朝日ホール(東京)において「グッドキャリア企業アワード2017表彰式」を開催しました。 当日は、表彰状授与のほか、審査総評と「グッドキャリア企業―社員が成長できる企業―とは」をテーマにしたパネルディスカッションを行いました。

表彰状授与

当日は、厚生労働省 宮野甚一 厚生労働審議官と安藤よし子 人材開発統括官が出席し、受賞企業9社に表彰状とトロフィーが授与されました。また、各受賞企業から受賞の喜びのコメントを頂きました。

大賞※五十音順

オムロン太陽株式会社(大分県)
川相商事株式会社(大阪府)
大同生命保険株式会社(大阪府・東京都)
株式会社千葉興業銀行(千葉県)

イノベーション賞※五十音順

秋田製錬株式会社(秋田県)
有限会社ウェルフェア三重(三重県)
島根電工株式会社(島根県)
社会医療法人財団董仙会(石川県)
トラスコ中山株式会社(東京都)

審査総評

表彰状授与の後には、北浦 正行 氏(グッドキャリア企業アワード2017審査委員、武蔵大学 客員教授)がグッドキャリア企業アワード2017において受賞した各社の取組の紹介・審査における評価のポイント・審査に携わった感想を交えた審査総評を行いました。


≪審査総評概要≫

大賞※五十音順

オムロン太陽株式会社(大分県)

特例子会社として45年近くの実績を持ち、障がいを持った社員と共に成長してきた会社である。特に、障がいの有無に関わらず社員に研修の機会を与えている点が評価された。研修は、障がいを持っている社員にとって自立への志を高める機会となっている。研修に参加した社員が自立的な行動に前向きな姿勢をとるようになったという効果も出ており、オムロン全社が集う活動発表会で発表者として手話で参加したといった行動にも表われ、大変立派なことであると思う。障がい者と共に育っていくというキャリア形成支援の一つの模範として受賞に至った。

川相商事株式会社(大阪府)

従業員290名の内、6割強が非正規社員である。非正規社員の増加は、日本全国で大きな問題になっているが、当該企業は非正規社員の正規社員への転換に大変力を入れている。
これからの政策課題としても大きなポイントになるところだが、「創喜感働塾」という社内スクールを作り、現場の管理職の力を高めていく取組をしている。
非正規社員含め社員全体が会社の中で意欲をもって働くことができる流れを作り出していることが評価された。

大同生命保険株式会社(大阪府・東京都)

様々な試みはどれも特筆に値するものだが、その中でも特に着目すべきは社内ポータルサイト「Challenge Navi」や「マイプロフィール機能」である。いずれも、いわゆるタレントマネジメントという従業員個々が持つ才能や特性を活かして人事マネジメントを行うというものである。従業員が持つ強みが全体に見える化されたことで、従業員間のコミュニケーションなど社内の風土が活性化されたという効果があったようだ。層別のキャリア研修など全体の研修体系にもつながった制度の整備や運用が評価され、受賞に至った。

株式会社千葉興業銀行(千葉県)

コミュニケーションの機会が豊富であり、キャリアコンサルティングはもちろんのこと、
その他、メンタルヘルスをはじめ、様々な形で従業員のキャリアに関するニーズを非常にきめ細やかに拾い上げる窓口を設けている。また、窓口は設けられているだけではなく、最終的に従業員の自己啓発につながっている。キャリア自律に主体的な意識を持たせるという形式論だけではなく、能力開発という具体的実践へつなげている。このプロセスをきれいに作り上げているという点が当該企業の大きな特徴である。



イノベーション賞 ※五十音順

秋田製錬株式会社(秋田県)

「やらされ感」や「指示待ち」といった従業員が非常に多かったことに対し、「自律自走」を会社のモットーにキャリア形成支援に取り組んできた会社である。現在高卒が3年で離職する割合が一般的には5割ほどであるが、当該企業の離職率は6年間ゼロという高い定着率であり、会社に対する信頼性を高めていることが大事である。風土改善に大きく顕著な取組がされている。

有限会社ウェルフェア三重(三重県)

介護業界においては、研修が非常に大事なことだといわれているが、「ウェルフェアアカデミー」という研修体系を積極的に活用し、会社全体としての能力開発向上に力を入れている。また、レベルアップできない人に対しては個別ケアを行うなどのフォローアップを熱心に行っている。さらに、伝達講習を義務付け、研修を受けた人は現場で教える立場になり、そのことが「自身にとって非常に勉強になった」という声が出ている。人に教えられるようになるということは最大の能力開発のポイントで、非常に顕著な取組である。

島根電工株式会社(島根県)

様々な取組がなされているが、特にOff-JTが盛んな企業である。Off-JTにも様々あるが、特に中堅中小企業において顔の見える関係は非常に大事である。若手社員と若手先輩社員が一緒に取り組むビッグブラザー制度を取り入れており、若手先輩社員は指導役・相談役になることで自身にとってもキャリアにプラスになっている。キャリア形成の取組において、支援される側だけではなく、支援する立場にも能力開発・キャリア形成につながる関係性があるのだと、有限会社ウェルフェア三重に続き、当該企業でも同様のことがいえる。

社会医療法人財団董仙会(石川県)

「知の創造」「技の熟練」「職の進化」をモットーにかかげてそれぞれ立派な取組をされているが、その中でも「職の進化」が一番重要である。キャリアステージを上げるためには「仕事を変えていく」「新しい仕事を作っていく」ということが大事であるが、それに取り組むのは容易なことではない。その中でも専門性を上げていく取組を運用しており、まさに「グッドキャリア企業アワード」イノベーション賞の趣旨にかなうものである。

トラスコ中山株式会社(東京都)

従業員が6つの職掌から働き方を選択でき、それぞれの職掌に見合った研修を行うなど様々取り組まれているが、とりわけシニア層へのキャリア形成についてよく考えられている。高齢化が進む中で、シニア層へのキャリア形成支援に取り組む企業の模範になるような取組である。また、事業のイノベーションのアイデアを提言する「白紙の部屋研修」など、オリジナルで大変興味深い取組も行われている。

大企業に求められることは、取組によって結果を出すことである。
中小企業は取組を制度化することも大事なことであるが、持続性のある取組を実現させることが重要である。今回の表彰においてはいずれの企業もそれらを実現し、受賞に至っている。

パネルディスカッション

後半では、今野 浩一郎 氏(グッドキャリア企業アワード2017審査委員長かつ推進委員会座長、学習院大学 名誉教授)をコーディネーターにお迎えし、受賞企業3社を交えたパネルディスカッションを行いました。


  • 株式会社 千葉興業銀行 人事部
    調査役 / 加藤 陽介 氏
  • 秋田製錬 株式会社 総務部
    統括主任 / 三浦 隆宏 氏
  • 社会医療法人財団董仙会 本部
    本部長 / 進藤 浩美 氏

≪パネルディスカッション概要≫

冒頭の受賞企業人事担当者による事例紹介を踏まえ、 企業として従業員の自律的なキャリア形成支援の取組をはじめる「きっかけ」を皮切りに議論は進められた。
「取組を始めた経緯」「経営者層の説得の仕方」「どうしたら取組を推進する後継者を育てられるか」という質問に対する各受賞企業登壇者の回答を受け、「キャリア形成支援に関わるカウンセリングのスキルや知識についても重要だが、人事において覚悟や志、情熱を持った人材をいかに養成していくかが政策の上でも大切なことなのではないか」とコーディネーターの今野氏は提言した。
また、各受賞企業登壇者は取組の推進を行う上での組織の体制・在り方、現場・経営層への取組の浸透、今後の課題と展望・目標などについてそれぞれ人事の視点から語った。
上記を踏まえ今野氏は、「各社の業種は異なれど、共通する課題として
『従業員それぞれが描く自己のキャリア像に対し、個々人のニーズ・考え方を個別的に支援するような環境整備や制度を作ること』、『キャリアの作り方が個性化・個別化していったときに企業は個人に何をしてほしいのかを明確に提示しなければ双方のマッチングができない』という点が重要である。」
とし、個々の従業員の目線に立ち取組を行うことの重要性を指摘した。
結びに、「従来の日本の企業内における『キャリアは会社が作ってくれるもの(=待ちのキャリア形成)』から『キャリアは個人が作っていくもの(=攻めのキャリア形成)』に発想を転換する必要がある。組織・企業と個人の関係が少しずつ変わってきており、ある意味、雇用関係が変わるために人事の仕掛けは長期的に変わる。そういう点では、今日ご紹介頂いた3社はこれから変わる方向を見させて頂いた先端的な事例であった。」とまとめた。

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