グッドキャリア企業アワード2024
シンポジウムを
開催しました!
令和6年11月27日(水)、時事通信ホール(東京)において「グッドキャリア企業アワード2024 シンポジウム」を開催しました。当日は、表彰状授与のほか、審査総評、基調講演、「幅広い支援で従業員の成⾧を実現する」をテーマにしたパネルディスカッションを行いました。
表彰式
受賞したのは、「大賞」5社と「イノベーション賞」10社の計15社で、表彰式では、福岡資麿(厚生労働大臣)の挨拶を田中誠二(厚生労働審議官)が代読し、「従業員の継続的なキャリア形成やリ・スキリングを積極的に支援し、「人を育て、人が育つ」組織づくりを進めることが極めて重要であり、そのような企業こそが日本経済の発展を牽引する存在になり得る。今回の受賞内容は、従業員一人ひとりが、自分のキャリアについて考えながら、能力を高め、生かして活躍できるよう、様々な取組がなされており、今後も更なる取組を進めていくことを期待したい」と述べました。
大賞(厚生労働大臣表彰)(5社) ※五十音順
株式会社関西鳶(奈良県磯城郡、職別工事業、従業員数27人)
キヤノンマーケティングジャパン株式会社(東京都港区、各種商品卸売業、従業員数4,541人)
住友生命保険相互会社(大阪府大阪市、保険業(保険媒介代理業,保険サービス業を含む)、従業員数42,511人)
西日本電信電話株式会社(大阪府大阪市、通信業、従業員数1,410人)
ネクスキャット株式会社(東京都豊島区、情報サービス業、従業員数36人)
イノベーション賞(厚生労働省人材開発統括官表彰) (10社) ※五十音順
株式会社岡崎土質試験所(愛知県岡崎市、技術サービス業、従業員数15人)
キャレオス株式会社(広島県福山市、社会保険・社会福祉・介護事業、従業員数853人)
株式会社サカイエステック(福井県福井市、総合工事業、従業員数61人)
株式会社就労センター(愛知県半田市、社会保険・社会福祉・介護事業、従業員数52人)
株式会社セーフティ&ベル(東京都江東区、設備工事業、従業員数120人)
株式会社ダイナム(東京都荒川区、娯楽業、従業員数7,496人)
株式会社デンソー(愛知県刈谷市、輸送用機械器具製造業、従業員数54,292人)
株式会社日本エー・エム・シー(福井県福井市、金属製品製造業、従業員数185人)
株式会社ビジョン・コンサルティング(東京都港区、専門サービス業(他に分類されないもの)、従業員数1,066人)
株式会社Massive Act(東京都港区、情報サービス業、従業員数9人)
審査総評
表彰状授与の後には、藤村博之氏(グッドキャリア企業アワード2024 審査委員⾧)がグッドキャリア企業アワード2024において受賞した各社の取組の紹介、審査における評価のポイント、審査に携わった感想を交えた審査総評を行いました。
<審査委員⻑> 藤村 博之 ⽒
(独立行政法人労働政策研究・研修機構 理事⾧)
審査総評概要
今回の「グッドキャリア企業アワード2024」には94社から応募があった。
キャリア開発においては、「売れる能力」あるいは「必要とされる能力」を高める必要がある。しかしながら、これはとても難しく、現在売れている能力は理解できるが、5年、10年先にどのような能力が必要とされるかは誰にも予見できない。そのため「この分野では恐らくこのような能力が必要とされるであろう」と従業員一人ひとりが考え行動し、それを企業がしっかりと支えていく必要がある。
「キャリアを考えてください」「会社としてこのような仕組を用意しました」と従業員に投げかけるだけでは、なかなか従業員はついてこない。「実際にどうやったらいいかわからない」あるいは「挑戦して上手くいかなかったらどうするんだろう」といった不安や恐れを抱く者は非常に多い。
今回の受賞企業は、この点をしっかりとフォローし、挑戦することに躊躇してしまう従業員を支え、背中を押す施策を実践している。特に大賞に選ばれた企業は、取組に全社的な広がりがあり、その成果がある程度見えてきている企業である。ゆえに、他の企業の参考となる取組をしていると考えられる。
また、イノベーション賞では、他の企業が真似することは難しいが、興味深くユニークな取組をしている企業であり、この受賞をきっかけに、さらに取組を全社的なものに進めていただきたい。
今回の取組の中で、従業員の自己啓発を積極的に支援する企業も多く見られた。また受賞企業に共通して見られたのは、社員を一人にしない、管理職や人事部が社員をフォローする。
そのためには各社員の一番近くにいる管理職がある程度の余裕を持ち、部下一人ひとりの面倒を見ていく。管理職が管理職としての役割を果たせる仕組みを作ることが今問われている。
また、人事評価制度は社⾧からのメッセージを具体化したものである。ボーナスや昇進といった部分に目が行きがちだが、従業員の育成という観点も大事にして設計してほしい。
今回のグッドキャリア企業アワードで取組が終わるわけではないので、もう一度その点を認識し、さらに従業員が生き生きと働く会社にしていただきたい。
<審査委員>
坂爪洋美(法政大学 キャリアデザイン学部 教授)/島村泰子(キャリア・エンパシー代表、法政大学 キャリアデザイン学部 兼任講師)/馬場 洋介(日本キャリア・カウンセリング学会 会⾧、帝京平成大学大学院臨床心理学研究科⾧ 教授)/廣石忠司(専修大学 経営学部 教授)/山内麻理(国際教養大学 国際教養学部 客員教授)
基調講演
「自社ブランドは『優秀な社員』を目指して」をテーマに、津曲 慎哉 氏(えびの電子工業株式会社 代表取締役社⾧:グッドキャリア企業アワード2022 大賞)による基調講演を行いました。
基調講演概要
2017年当時、高卒・新卒採用を開始したものの、就職説明会のブースには学生が集まらず、また、組織内では、ベテラン社員は若者の出世意欲の欠如を嘆く一方で、若手社員は先輩のようにバリバリは働けないと不満を漏らしていた。このような状況から、「人を育てる」「社員を大切にする」という思いを強くし、キャリア支援の取組をはじめた。
これまでの固定概念や偏見を組織から取り除くことはとても難しく、多くの社員から寄せられた「どこにそんなことに取り組むお金があるのか?」「今できるのであれば、とっくにやっている」との声は社員からのSOSと捉え、現場の悩みを率直に聞いて解決していくための取組を推進した。その中で生まれたキャッチコピーが「地元で家族と自分らしく」であり、働きながら頑張る社員を会社として応援するためのキャリア支援に取り組んだ。
キャリア支援の取組、効果
具体的な取組の1つ目が、「加点式の育成型人事評価制度」の導入で、全社共通の成⾧チェックと、責任者(管理職)向けの成⾧チェックに分けて開始し、自己評価と上司評価を合致させなければならない点がポイントである。また、残業が月平均30時間以下、有給を年10日以上取得していなければ、今の仕事の負担が大きいため昇進・昇給ができないという縛りを設け、しっかり休みながら成果を出した人を高く評価するようにしている。評価が見える化され、本人が客観的に自分のできていることを確認できる体制になったことで、優秀な女性社員が管理職に就くことに対して納得・安心できるようになり、女性管理職が13.9%から30.6%へ大幅に増えている。
2つ目の取組として、管理職への「教え方(コーチング)」研修を実施し、育成型のコミュニケーションを学ぶ機会を設けた。
管理職が優秀であるほど、部下のミスを防ぐために仕事を奪いがちで、結果的に部下が育たず、管理職自身も休めない状況に陥ることが多かった。多くの管理職は「自分が犠牲になっても構わない」と頑張りすぎる傾向があり、部下から「あんな風にはなりたくない」と思われてしまうこともあった。
そこで、会社全体で「管理職も休みが必要」「ずっと働き続けることは現実的ではない」といった内容について学ぶ機会を作り、社員全体での意識改革を進めた。
3つ目の取組として、多様な応援制度や支援を充実させ、状況に応じてパートと社員の身分変更を可能としたり、パートの退職金制度の導入等、「ライフステージに合わせた自分らしい働き方」が実現できる仕組みを推進することで、ダイバーシティ&インクルージョンが進み、求人応募や社員転向の増加、障害者雇用、技能実習生の受け入れなどに繋がっている。
結び
社員本位のキャリア支援の取組が、働き方改革の推進や生産性の向上に繋がり成果をあげている。社員が「えびの電子工業で働いているのはいいね」と言われた時に「私が頑張って働いているからね」と、誇りを持って言える会社を目指し、今後も努力を続けていきたい。詳細は動画でcheck☞ https://youtu.be/ktS-U7JVKzM
パネルディスカッション
後半では、坂爪 洋美 氏(グッドキャリア企業アワード2024 審査委員)をコーディネーターに迎え、「幅広い支援で従業員の成⾧を実現する」をテーマに、「大賞」受賞企業3社を交えたパネルディスカッションを行いました。
<コーディネーター>
坂爪洋美 氏(法政大学 キャリアデザイン学部 教授)<パネリスト>
西井 弘之 ⽒(株式会社関西鳶 取締役)
<パネリスト>山田 哲之 氏(住友生命保険相互会社エグゼクティブ・フェロー兼人財共育本部事務局長)
<パネリスト>鳥井 真次 ⽒(西日本電信電話株式会社キャリアデザイン推進室室長)
パネルディスカッション概要
パネルディスカッションでは、前半に各パネリストが自社のキャリア支援における主要な取組について解説した。
株式会社関西鳶の西井氏は、十数年前の個人事業主時代に、組織が機能せず、離職率が高くなり、作業効率の悪化や利益率の低下を招いてしまったことをきっかけに、社員一人ひとりが高い志を持つ必要性を感じ、全社員が働きやすい環境を整え、離職率ゼロを目指した経緯を語った。全社員参加の「未来会議」の実施。社員の未来を見据えたキャリア形成のサポート。年齢や国籍の壁を越えた組織を目指し、障害を持つ社員も含め、全員が平等に評価される環境の整備。このような取組を通じて、若者に建設業の魅力を伝えていきたいと考えている。
詳細は動画でcheck☞ https://youtu.be/Ij_SFuBpyuc
住友生命保険相互会社の山田氏は、「人財共育」という理念を掲げ、経営戦略を策定し、上位下達な組織文化から、個々の主体性を尊重する文化へ転換し、会社と職員が対等な関係で共に育ち、選び選ばれる関係を作っていくことを目指し、生産性向上の実現を目的としていると語った。専任チーム『エバンジェリストトチーム』を結成し、社⾧自らメッセージを発信、各部門と対話を重ねながら施策をアップデートし、様々なキャリア支援策を展開している。
詳細は動画でcheck☞ https://youtu.be/ixAaWUy41b0
西日本電信電話株式会社の鳥井氏は、社員の自律的なキャリア開発支援の取組について語った。社内エンゲージメント調査結果から、多くの社員がキャリア支援の機会不足を感じていたことが判り「キャリア相談窓口」を開設し、「キャリアデザイン推進室」を設置した。社内ダブルワーク制度を活用して募集した社員を相談員として配置しており、相談員同士での毎月の交流による応対品質の維持・向上に努めている。「知る、相談する、学ぶ、挑戦する」を柱に多様な支援を展開することで、自律的キャリア形成への意識が高まり、行動の変化も見られている。
詳細は動画でcheck☞ https://youtu.be/Vzu9E_Q-9ak
冒頭での受賞企業の事例紹介を踏まえ、テーマ「グッドキャリア企業~社員の成⾧を企業の成⾧に~」のもと、坂爪氏が参加者からいただいた質問をパネリストへ投げかけ、各パネリストが回答した。主な議論は以下の通りである。
Q1. キャリア自律・キャリア形成支援の意義を社内の人にわかってもらうには。
株式会社関西鳶
建設現場は力仕事で、⾧く同じ仕事を続けることが難しいため、次のステップに進むには、従業員自身が日々学び、成⾧していかないといけないと理解している。「何か能力を身につけないと、この先まずいかもしれない」という感覚を社員全員に持ってもらうことが大事だと思う。
住友生命保険相互会社
キャリア支援の取組を伝播させる起点は管理職だと考えているため、管理職に対する浸透について、社⾧も含めたエバンジェリストチームが日々向き合っている。一方で、社員へ広げていく第一歩は、若手社員に焦点を当てて考えた。若手社員で実施した仕組みを活用し、次にミドル層、その次にシニア層、というように、レールに順番に乗せていくように設計している。
西日本電信電話株式会社
社内エンゲージメント調査結果をきっかけに取組を始めたので、経営陣や社員に理解されやすい状態だったと思う。ただ、キャリアデザイン推進室を作るなど「社員に本気度を見せる」ことは意識した。若手社員に対するキャリア支援から始めて、特に次の異動を意識する入社2年目の社員と、プライベートや仕事での変化を感じることが比較的多い30代手前の29歳の社員をターゲットにキャリア相談を行うなど、施策を展開した。
Q2. キャリア自律・キャリア形成支援の効果をどのように捉えているか。
株式会社関西鳶
新卒社員が1人も辞めずに頑張ってくれていること。そして、彼らの日記が、組織としての育成力の大きな源泉になり財産となっている。個人の能力開発に際して、日記は本人が日々の業務を見返すことができるだけでなく、先輩からフィードバックをもらうことで目の前にわかりやすい目標が置かれるので、成⾧スピードが毎年速くなっている実感がある。
住友生命保険相互会社
施策全体の効果を測る指標としては、eNPSやウェルビーイング実感に関する数値を取得している。定性面では、管理職の支援体制について、エバンジェリストが現在の理解度を点数制にして評価しており、実際、点数が高い管理職の組織では、社員が自分のキャリア開発について考えている割合が高い結果が出ている。このように、定量的な面と定性的な面を組み合わせて、多面的に効果を見ている。
西日本電信電話株式会社
最終的にエンゲージメントが上がってくることが最も良いと考えている。また、社内への浸透という観点で、相談件数や社内ダブルワークの応募件数が増えてきていることも成果だと感じている。キャリア相談窓口への相談をきっかけにキャリアコンサルタントをめざす方もでてきており、全社的に社員が新たな一歩を踏み出すことを後押しできるようになってきていると感じる。
詳細は動画でcheck☞ https://youtu.be/_3xlukGJT9Q
総括
最後に、コーディネーターの坂爪氏は以下の通り、パネルディスカッションを通じて感じたポイントを挙げた。
今回、最も強く印象に残ったことは、キャリア自律やキャリア形成支援を進めることが、組織にどのような意義をもたらすかを明確にすることが求められているということである。受賞企業の取組からはキャリア自律に取り組む意義を社内に浸透させるためには、三つのポイントがありそうである。
1つ目は、従業員の成⾧と企業の成⾧がしっかりと結びついており、それがわかりやすい言葉で表現されていること。
2つ目は、そもそも何のためにキャリア自律に取り組むのかを明確にすること。
3つ目は、キャリア自律を果たした従業員が活躍できる場を社内に作ること。
「キャリア自律」という言葉は抽象度が高く、自社でのキャリア自律が実現された状態とは何かが定まっていない場合もあると思う。企業ごとに異なるであろう「キャリア自律を果たした従業員」のあるべき状態を見える化していく必要がある。
キャリア形成支援とは、働く人を変えていくことで、企業のパフォーマンスを向上させる施策である。そして、このサイクルが回っていく中で、企業や組織自体が変わっていくことになる。
その意味で単に従業員を支援することだけに囚われないキャリア形成支援のあり方が、恐らく次のアワードで紹介されるのではないかという思いを本日強くした。
改めて、素晴らしい取組を紹介いただいた3社の皆様にお礼を申し上げるとともに、この歩みを止めることなく引き続き進めていただくことで、(受賞企業3社の)皆様の報告を聞いた(ご来場・ご視聴の)皆様がさらに力をもらえるのではないかと思う。
▽シンポジウム当日の模様は、YouTubeでご覧いただけます。ぜひご覧ください。▽
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZuQp87TRMPyCAfxYZoT1OOCv4_GMYowO
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