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本サイトは厚生労働省の表彰事業「グッドキャリア企業アワード」を通じて、企業や働く方に自律的なキャリア形成について発信するためのサイトです。

グッドキャリア企業アワード2019
シンポジウムを開催しました!

令和元年11月27日(水)、渋谷ストリームホール(東京)において「グッドキャリア企業アワード2019シンポジウム」を開催しました。 当日は、表彰状授与のほか、審査総評と「グッドキャリア企業―社員が成長できる企業―とは」をテーマにしたパネルディスカッションを行いました。

表彰状授与

受賞したのは、「大賞」と「イノベーション賞」各5社の計10社で、表彰式では、加藤勝信(厚生労働大臣)のあいさつを、土屋喜久(厚生労働審議官)が代読し、「一億総活躍社会の実現に向け、働き方改革や人づくり革命を進めている。働く方一人ひとりが能力を存分に発揮できる環境を整備するためにも、各企業が『人を育て、人が育つ』組織づくりを進めてほしい」と話しました。また、各受賞企業から受賞の喜びのコメントを頂きました。

大賞(厚生労働大臣表彰)(5社)※五十音順

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(東京都千代田区、情報サービス業、従業員数4,462人)
SCSK株式会社(東京都江東区、情報サービス業、従業員数7,375人)
日鉄工材株式会社(新潟県上越市、製缶板金業、従業員数105人)
日本生命保険相互会社(大阪府大阪市、生命保険業、従業員数73,260人)
株式会社ミツイ(宮城県仙台市、老人福祉・介護事業、従業員数145人)

イノベーション賞(厚生労働省人材開発統括官表彰)(5社)※五十音順

コニカミノルタウイズユー株式会社(東京都八王子市、管理、補助的経済活動を行う事業所、従業員数145人)
日本電産株式会社(京都府京都市、電子部品製造業、従業員数2,794人)
服部農園有限会社(愛知県丹羽郡、農業、従業員数15人)
三井住友海上火災保険株式会社(東京都千代田区、損害保険業、従業員数21,922人)
三菱ケミカル株式会社(東京都千代田区、有機化学工業製品製造業、従業員数18,087人)

審査総評

表彰状授与の後には、藤村博之 氏(グッドキャリア企業アワード2019審査委員長 法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授)がグッドキャリア企業アワード2019において受賞した各社の取組の紹介・審査における評価のポイント・審査に携わった感想を交えた審査総評を行いました。

<審査委員長>
藤村博之 氏
(法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授)


≪審査総評概要≫

今回の「グッドキャリア企業アワード2019」には54社から応募があった。本アワードの部門は「大賞」と「イノベーション賞」の2つがあるが、「大賞」が上位で、「イノベーション賞」が下位ということではない。前者は企業全体で取り組み、それに対して成果が顕著に出ている企業である。後者は「特にこの取組はとても評価できる」という視点で選出した。

様々な取組をしている今回の受賞企業を見てみると、大事な共通点が3つあるといえる。

1,「言葉で表現する」
社員の将来的なキャリア形成を支援するには、まずは現状の取組の評価が必要である。きちんと言葉で表現して初めて足りているところと足りていないところを認識することができる。これは社員の本人任せにはできないことであり、企業が用意した様々な支援プログラムを活用することで明らかになってくる。今年度受賞したほぼ全社が取り組まれていた。

2,「自分の頭で考える」
会社には会社の都合がある。一方、社員には個人個人の希望がある。社員が希望する部署に配属されないことの方が多いと思うが、いざ新しい仕事をしてみると思わぬ才能を発揮することがある。各企業の取組を見ると、社員の将来プランや考えを企業側がなんとか実現させていこうと努力している。ただ、その前に自分の頭で考えさせている。普段から自分の頭で考える習慣が身につくと、変化に対応する力が高まり、予期せぬことが起こったときにも対処できるようになる。そうした社員が増えることで社内が活性化し、ひいては企業全体の競争力強化につながる。今回の受賞企業も、この「自分で考えること」を奨励している。

3,「ダイバーシティ」
多様性を追求していくと、いろいろな意見があるので現場は大変になる。しかし、一方では人それぞれの意見や考えが得られるというメリットがある。ダイバーシティは非効率的に見えるかもしれないが、一人ひとりを大切にするとそれぞれの考えが“活きる”企業になる。そうした取組をしている企業が、最後は生き残っていくのではないかと思う。

「今回受賞した企業の“事例を”学ぶのではなく、“事例に”学ぶようにして欲しい。この企業の取組からわが社は何ができるのか?という視点で、ぜひ事例に学んでいただきたい」と審査総評を締めくくりました。

<審査委員>
井手明子(日本電信電話株式会社 常勤監査役)/北浦正行(武蔵大学 客員教授)/坂爪洋美(法政大学 キャリアデザイン学部 教授)/日置政克(THK 株式会社 社外取締役、株式会社小松製作所 顧問、株式会社すき家 社外取締役、株式会社瑞光 社外取締役、立命館大学大学院経営管理研究科 客員教授)/井内雅明(厚生労働大臣官房審議官)

基調講演

「令和時代における企業と従業員のキャリア創りの新しい関係性とは」
というテーマで、河合聡一郎 氏(株式会社ReBoost 代表取締役社長)による基調講演を行いました。

グローバルな観点から見てみると日本の労働人口は2045年〜2050年にかけて顕著に減っていく。また65歳以上の老年人口の増加は避けられないテーマであり、国内における就業率は増え続けている。あらゆる仕事で幅広く人材が資源となることは必須である。データからの示唆として、労働人口の減少、就業率の向上に伴う多様な選択肢の提供の必要性、人材が資本となる仕事は変わらず存在していくことがわかる。企業の競争力の源泉でもある、従業員との関係性において、今後のキャリア創りはどうあるべきか?その答えとして、私の意見は、企業と個人が互いの成長のために、「共創できる、循環型育成システムとその運用」が重要であると考える。

自社の目指す方針から、どのような人材の育成方針とするか、その上で、「従業員を社内外で活躍できる人材」に育てる支援をすることが、結果的に自社の競争優位性につなげることになる。キャリア育成方針、事業目標と目指す姿、従業員とフェアな関係性を築くことで、「従業員の選択肢と可能性を最大化する」ことが重要だと考える。


また循環型育成システムの構築とその運用のために、働く従業員と企業のVisionのすり合わせを行う必要性がある。
Company Vision・・・会社の掲げる方針にどれだけ共感しているか
Career Vision・・・そのうえで、どのようなキャリアを築いていきたいか
Life Vision・・・どのような人生を歩んでいきたいか

その上で、「自社に最適な従業員とキャリア創りの関係性を定義」する必要がある。
それには自社の経営/事業ミッション、ビジネスモデルを踏まえた上で、組織戦略方針(①業務・役割・成果②人材要件③育成/評価方針)を決めることが重要となる。その方針を情報発信し、仕組化し、運用していくことで、自社に最適な従業員とキャリア創りの関係性を定義していくことができる。

従業員の立場として、「所属」をしつつ「個」としての希望や考えに対する整合性を図り、従業員にどのような理由で自社を選び続けてもらうかを考える必要があり、ES=Employee Successをどのように定義するかを考えることが重要である。

会社基盤 財務状況などが安定しているか
理念戦略 組織の理念やビジョンに共感できるか
事業内容 事業の意義や将来性を感じられるか
仕事内容 仕事を通じてやりがいを感じられるか
組織風土 組織の体質に馴染めるか
人的資源 魅力的な人がいるかどうか
施設環境 働く環境が快適かどうか
制度待遇 評価や待遇や育成が公平・適切か

 「企業と個人が互いの成長のために、『共創できる、循環型育成システムとその運用』を大切にし自社における企業と従業員のキャリア創りの新しい関係性を築いていってもらいたい」と締めくくった。

パネルディスカッション

後半では、藤村博之 氏(グッドキャリア企業アワード2019審査委員長 法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授)をコーディネーターに迎え、受賞企業4社を交えたパネルディスカッションを行いました。

<テーマ>
「グッドキャリア企業 —社員が成長できる企業— とは」

<コーディネーター>
藤村博之 氏(法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授)

<パネリスト>

  • 篠原貴之 氏
    (SCSK株式会社 人事グループ 人材開発部 部長)
  • 石川昌弘 氏
    (日鉄工材株式会社 代表取締役社長)
  • 今井孝之 氏
    (日本生命保険相互会社 人材開発部 部長 「ダイバーシティ推進部長」)
  • 服部都史子 氏
    (服部農園有限会社 総務)

≪パネルディスカッション概要≫

 パネルディスカッションでは、前半に各パネリストが自社のキャリア支援における主要な取組について解説した。SCSKの篠原氏は、「人がすべての事業を動かしている」という共通認識のもと、社員一人ひとりが長期的なキャリアを描き主体的に学び続けることができる制度、人材育成体系について、その内容や趣旨を説明した。日鉄工材の石川氏からは、個人の能力の見える化や能力評価の仕組みを構築するなど、企業ビジョンに連動した人材育成についての紹介があった。
 人材育成を経営基盤の一つと位置づけている日本生命の今井氏は、“固”有の能力という強みを獲得するための多彩な能力開発メニュー、イクボスの意識改革を通じた組織風土づくりなどに触れた。農業法人として初めての受賞となった服部農園の服部氏は、家族経営だからこそ経営者と社員が横並びの関係で育成を行っている点を強調するとともに、「働く人の人生がより豊かになることがグッドキャリアである」との考えを示した。


 企業の規模や業種、社員構成などに応じて、キャリア支援に対する各社の仕組みや取組は様々である。今回のパネルディスカッションでテーマの一つとなったのが、「『会社の都合』と『個人の希望』とのバランス」であった。審査総評でも藤村氏が触れた問題だが、「それらは両立するのか。社員との間で軋轢が生じていないか」とパネリストに投げかけた。実際、この問題は永遠のテーマといえるが、その解決に向けて各社なりに様々な努力・工夫をしているとを語った。

 このほか、「若手・中堅・シニアなど年代ごとのキャリア開発・教育」についての議論では、各パネリストは自社の制度や取組を解説するとともに、現状の課題などについても率直に語り合った。また、受賞企業の取組に対する来場者からの質問をもとに議論するなど、参加者とともにキャリア支援・キャリア開発について考える機会となった。

イベントレポート