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本サイトは厚生労働省の表彰事業「グッドキャリア企業アワード」を通じて、企業や働く方に自律的なキャリア形成について発信するためのサイトです。

グッドキャリア企業アワード2017
企業向けセミナーを開催しました!

平成30年1月24日(水)、リファレンス駅東ビル(福岡)においてグッドキャリア企業アワード2017企業向けセミナーを開催しました。
当日は、企業の人事担当者を中心にご来場いただき、厚生労働省による挨拶、高橋 俊介氏による「企業が支援する自律的キャリア形成とは」をテーマとした基調講演と、高橋氏をコーディネーターに迎え、2017年度受賞企業3社を交えたパネルディスカッションを実施しました 。

開会挨拶

厚生労働省より、開会の挨拶として「グッドキャリア企業アワード」の事業目的などについてご説明しました。

基調講演

「企業が支援する自律的キャリア形成とは」をテーマに、高橋 俊介氏(グッドキャリア企業アワード2017推進委員、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科特任教授)による基調講演を行いました。

≪基調講演概要≫

日本もいよいよ一人一人が自律的に自分のキャリアを作る時代に入ってきた。

「日本の終身雇用」が崩壊した1990年代後半から20年が過ぎ、雇用の不安定化以上に「キャリア」が不安定化している。AIやIOTをはじめとした技術革新・ビジネスモデル革新、企業破たんや事業売却撤退、経営統合などにより、企業にとって従業員の20年後のキャリアはもちろん企業自体の20年後を見通すことは困難となった。さらに「人生100年時代」において、人間の寿命が延びると同時に、「キャリアの寿命」が延びている。

「自律的なキャリア形成」といった習慣・認識のなかった日本において、
今後、「企業が社員の自律的なキャリア形成を支援していく」ことが主体になっていく。
経営環境の変化に伴う人材流動化が始まり、なかにはキャリア支援を行うことで「人材の流出につながるのでは」と誤解する経営者もいるが、自律的なキャリア形成支援を行うことはミスマッチによる離職抑止に効果があり、人材求心力にもつながる。
若者においては、「一生涯の雇用を補償された正社員」という旧来の概念の限界を認識しており、キャリア形成に不安感を抱えている。そういった意識・能力の高い若者ほど「自身のキャリア形成を支援してくれる企業に入りたい」という考えを持つようになっている。グッドキャリア企業アワードのように、企業風土の可視化を図ることが採用においてもメリットであると考える。

では、どういう意味のキャリア自律支援が重要か。
若者においては昇格・昇進よりも意味・やりがいに満足を求める傾向にある。女性活躍などキャリアの多様性による個人別モデルの必要性が生じたことから、それぞれの従業員には自律性や自分らしさの発揮が求められる。
しかし、先の見通せない時代において目標から逆算した長期的なキャリアゴールは実現が難しく仕事に対する満足も得られない
企業においては「具体的・明確な目標を持つことが重要」という歪んだキャリア観をもつ従業員に対し、正しい自律的キャリア形成を教える必要がある。
イノベーション人材の育成についても、会社任せのキャリアで世界に通用・活躍する人材は育たない。シニア世代の活用についても人生100年時代に向けて個別性への対応と支援が必須である。

求められる3要件
①目標より習慣(仕事に対する主体性、良好なネットワークへの投資や布石、自己啓発)
②普遍性の高い学びの能力(異職種へのキャリアチェンジが生じた際に求められる応用力に繋がる深い学びの姿勢、リカレント教育=学び直し)
③健全な仕事観(仕事について自問自答した際に腹落ちする機会があるか)

会社が取り組むべき自律的なキャリア形成支援
①ポリシーの伝達…会社が「自律的なキャリア形成」の重要性をどのように捉え、なにを社員に求め、どのような支援を行うのか
②気づきへの働きかけと個の支援…周囲からの助言や、節目による従業員個人の気づき・内省の機会の創出。支援を必要とする人にはキャリアコンサルタントなどの個別支援。
③個に応じた多様な機会提供…主体的な学び(自己啓発)の機会、キャリアチェンジの機会と支援、兼業・副業や社会活動など外部の刺激の機会

パネルディスカッション

グッドキャリア企業アワード2017受賞企業3社の人事担当による取組・事例紹介をはじめ、コーディネーターに高橋氏を迎えパネルディスカッションを行いました。

≪コーディネーター≫

高橋 俊介 氏

≪パネリスト≫

グッドキャリア企業アワード2017 大賞:
オムロン太陽株式会社 中野 恵美 氏

グッドキャリア企業アワード2017 イノベーション賞:
島根電工株式会社 山本 翔 氏
トラスコ中山株式会社 木村 隆之氏

≪パネルディスカッション概要≫

冒頭での登壇企業の事例紹介を踏まえ、高橋氏が質問を投げかけ、各パネリストが回答することを通じて、各企業・分野の置かれた状況、今後の課題などを議論した。

高橋氏から「今後の抱負・経営課題」についての問いかけに対し、
各企業の登壇者は以下のように回答した。

「諦めずに取組を継続すること、また、ソーシャルニーズ・従業員のニーズをきちんと汲み取り、取組の精度をさらに向上させることが重要。なかには『上へ上へ』という教育に無理が生じる従業員も出てくる。そうした際には、プロフェッショナルに向けて緩やかに上っていけるような教育も必要と考えている。今後、定年による人員の減少にあたり、障がい者雇用についても前倒しによる採用の実施、及びニーズの高い知的障がい者や精神障がい者の受け入れ態勢強化を進めていきたい。社長や工場長に相談したところ、背中を押してくれるため非常に心強く感じている。」(オムロン太陽株式会社)

「企業として、社員が学ぶ場・機会の提供はできていると考えるが、社員が夢中になって取り組めるサポートを強化していきたい。社員一人一人の良好なメンタル維持に向けて、予防が大事だと考える。個人的な抱負としては、集団(事業所)に対するアプローチを行い、ポジティブに働ける環境づくりを推進していきたい。」(島根電工株式会社)

「前提は人生雇用。近似値・目先の近未来しか見通せない状況の中で、社員に対していかに5年後10年後の未来を見せていくかが目下の課題。50代の従業員はとかく60歳をゴールと考えがちだが、75歳まで働く上で、どのように仕事人生を作っていくのか、という意識・行動の変化が求められる。女性比率が増えライフイベントにより人材が抜けた際、どのように人員を埋めるかという経営課題もあるが、30代以上についても、定年までの残り45年間に向け現在視点から未来視点へ変えるために、教育・制度を継続していくことが重要であると考える。」(トラスコ中山株式会社)


総括の中で、高橋氏は「本日、登壇頂いた三社の他に、様々な業種・規模の企業が今年度・昨年度以前にもこのアワードを受賞している。そういった企業の取組や事例を是非参考にし、自律的なキャリア形成支援に取組んでもらいたい。また、人材獲得競争が激しくなっているこの時代に、「人材育成」「キャリア形成支援」という外から実態の見えにくい要素を可視化する点においても是非グッドキャリア企業アワードにチャレンジしてもらいたい。」と述べ、セミナーを締めくくった。

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