グッドキャリアプロジェクトグッドキャリアプロジェクト

本サイトは厚生労働省の表彰事業「グッドキャリア企業アワード」を通じて、企業や働く方に自律的なキャリア形成について発信するためのサイトです。

サイボウズ株式会社

キャスター・アナウンサー

令和時代を迎え、働く人の価値観や働き方が多様化する中で、企業による従業員のキャリア支援の必要性とは何なのか。異なる業界でキャリアを築いてこられたお二人に、これからの時代に社員が生き生きと働ける組織のあり方について語り合っていただきました。

「好きなこと」に打ち込み続けた結果、
社内外で認められる唯一無二のキャリアに

1人の職業人として、どのように自律的なキャリア形成をしてこられましたか。

中根 弓佳(以下、中根):私は新卒で大阪ガスに入社して、2年後にサイボウズに転職しました。

吉川 美代子(以下、吉川):ということは、いわゆる一流企業からベンチャー企業への転職だった訳ですよね。かなり勇気がいる決断だったのでは。

中根:そうですね。当時のサイボウズは社員50人位のベンチャー企業だったので。でも、自分よりも周囲の方が心配してくれました。

吉川:私が親だったら止めていると思います(笑)。私は入社してから定年までずっと一つの会社にいたものですから。子どもの頃からTBSという放送局のアナウンサーになりたかったんです。尊敬するアナウンサーが多くいらっしゃったので、「”TBSアナウンサー”の輝かしい歴史の中に自分も入れてもらえるんだ」と思うと、何があっても最後までTBSアナウンサーとしての責任を全うしようと思いました。

中根:吉川さんは、TBSのアナウンサーであるということにすごく誇りをもってらっしゃって、やりがいも感じられていたと思うので、恐らく報酬のポートフォリオはお給料ではないですよね。

吉川:私は、アナウンサーとしていい仕事をすることで評価されたらそれで満足でした。アナウンサーとしての評価と会社員としての評価は必ずしも一致するものではないと思っていたので。ところが結果として、私は女性アナウンサーとして初めて部長になり、女性社員として初めての局長になりました。

中根:吉川さんは30代からラッコの研究にも取り組まれていたと伺ったのですが、そのきっかけは何だったんでしょうか。

吉川:その頃、日本にはラッコの研究者がいないということで、アメリカにいる一流の先生に師事しようと思い立ちました。土日にあった自分のニュース番組だけは休まずに、有給休暇を活用しながら、シアトルでの研究活動と仕事を両立させていました。

中根:すごくパワフルですね!

吉川:それは、「現場に行って原点にあたれ」という報道の仕事で得た学びがあったからこそ、とことん研究に打ち込めました。研究で学んだことが自分の仕事にフィードバックされることがあったので、自身のキャリアにもつながって、挑戦してよかったと思っています。


自律的にキャリアを考える社員たち。
そんな彼らに幸せに生きられる選択肢を与える企業の取組とは。

吉川:中根さんはサイボウズに移られてからは、ずっとそこで働いてらっしゃる訳ですよね。その理由はなんですか。

中根:それは、サイボウズが“変化できる会社”だからです。今は、どんな働き方でもできるんですよ。私たちの会社は、かつて社員100人で離職率が28%になったときがあったんです。2週間に一度誰か辞めていくような状態で。そこで、「もっと働き続けられる会社をつくらないといけない」と一念発起し、働く場所や時間を社員が自由に選べるかたちに変えていきました。そして多様な働き方を受け入れることで、優秀な方が大勢入社してくれました。「いいな」と思う理想に積極的にチャレンジし進化していける会社であることは素晴らしいところだと思います。

吉川:それは大きな変化ですね。副業も自由化しているんですよね。

中根:そうですね。当初は副業禁止にしていたのですが、「私たちはどうして副業を禁止にしているんだ?」と振り返ったことがありました。それで副業を許可制にしたら、希望者が増えてきて、今では「むしろどんどんやればいい」と後押ししています。

吉川:すばらしいですね。私の場合、副業ではないですが、有給休暇を使って行った研究がTBSの動物番組にも役に立っていた事実もありました。社員がきちんと働きながら自分のやりたいことにも打ち込んでいるなら、会社もそれを認めて、「みんなももっとやっていいんだよ」と周知する。それができれば、社員から会社に対する信頼感も生まれるのではないでしょうか。

中根:そうですね。初期には、「副業する時間があるなら会社の仕事をしてほしい」といった声もありましたが、副業している社員たちがきちんとやるべき仕事をした上で、副業で得た気付きや成果を本業に還元してくれて、さらに生き生きと幸せそうに働いていたんです。それを見て他の社員たちの考えも変わっていきました。

吉川:会社が認めてくれると、集中して打ち込むことができ、それがよいサイクルを生んでいるんですね。

中根: そうですね。副業もそうですが、企業が従業員の自律性を重んじ、キャリア形成を後押しすれば、当然、他の会社に移るということも起こりえると思います。しかし企業という小さな枠ではなく、社会全体で見れば、個人が自分のキャリアについて考えるということがまず大切だと思います。その上で、「自分は将来的にこういうことがやりたいから別の会社に行くんだ」というのなら、気兼ねなくそれを選択すればいいと思うんです。このような考え方でも、取組を始めた当時と比べると、現在では離職率が4%程にまで下がっています。今では、社員たちが自分のキャリアを考えて、幸せに生きる選択肢を増やせたら良いという思いでキャリア形成を支援しています。

吉川:私も若者から、「吉川さんみたいにやりたいことを見つけたいです」と、よく言われます。ただ、やりたいことは見つけようと思って簡単に見つかるものではありません。だからこそ、会社が社員に対して発見のきっかけを与えてあげられると、その方の人生も充実したものになり会社にも、成果として還ってくるという好循環がつくれると思いますね。
また、個人的には、前向きに仕事に打ち込んでいないと次のステージ、キャリアは見えてこないと感じます。私はアナウンサー人生を全力疾走した結果、理想のキャリア形成ができていて、今振り返ると思い出すのは楽しかったことや褒められたことばかりです。

中根:それは素敵なことですね。吉川さんのように選択したことに対して自分で責任がとれれば、最後に「自分の選択は正しかったんだ」と受け入れられるのだと思います。私、自律の基本は、「色々な選択をすることに対して自分で責任をとれること」だと思うんですよ。社員がワクワクすることをなかなか自分で見つけられないケースには、個人の自律的なキャリア形成を支援しつつ、チームがうまく機能するためのサポートが会社として大事だと考えています。
具体的には、個人と組織のキャリア形成を考える上で、
【1】個人がワクワクする物差し、テーマ、瞬間を見つけるサポートをすること。
【2】個人がワクワクする物事の知識、スキルを得られるサポートをすること。
【3】チャレンジし続けられるように、心と身体を健康で維持できるようにすること。
【4】会社(チーム)で実現したいこと、個人として実現したいことを意味づけしてマッチングさせること。

この4つのサポートを会社としてできれば誰にとってもハッピーで、自律的にキャリアを選択できる形になると考えています。まだ道半ばですけどね(笑)。


自社の支援制度や取組が第三者に評価されることで、
社内にポジティブな変化が生まれる

厚生労働省主催のグッドキャリア企業アワードについて、人事担当としてどのように感じられますか?

中根:キャリア支援の制度って、入社してみないと分からないことが多いですよね。だから入社前から、就活中の学生や転職を考えている人に対してPRできて、取組内容を知ってもらえる機会になるのは大きなメリットだと思います。しかも第三者が評価しているというのがポイントですね。自分の会社を良く言うのは簡単で、だいたい良いことばかり書くじゃないですか(笑)。しかし採用のミスマッチを防ぐという面でも、第三者が客観的に伝えてくれることで、その魅力が正しく大勢の方に知っていただけるところに意味があるなと思います。

吉川:グッドキャリア企業アワードの推進委員として感じるのは、中小規模事業者からの応募もある中で、「大企業に比べたら大したことできてないんですよ」と、どこか謙遜されている気がしたんです。しかし、そんな企業こそもっと積極的に応募していただきたいと思っています。職種や業界によっても、働き方のスタイルは異なりますし、「当社は30人しかいないからこんなことをやってます」って出してくれると、「あ、そんな取組手法もあるのか」と、他の企業の方々の気付きにもなると思います。そんな意味でもアワードの意義はあると思いますね。中根さんはアワードを受賞することに対し、企業人事として取組推進の追い風になると思いますか。

中根:もちろんです。自社の制度を社内に向けて情報発信するという面で、人事としても取組促進のきっかけとなります。また、外部へ情報発信を行う広報部門にも追い風になると思います。外部にも広く知られるようになると、「人事の取組は間違ってないんだ」、「それなら僕たちもそれを理解して活用してみようかな」といったポジティブな変化も起きやすくなると思います。それにより、社員の方からも「次はこういうことやっていきたい」って声も生まれてきます。今、私たちの会社ではそういった声が多すぎて、渋滞しているような状態なんです(笑)。

吉川:それは素敵な効果ですね。ただ、企業にアンケートを取ると「応募したい気持ちはありますが、自社の取組がまだ応募のレベルに至ってない」と言って、応募を見送る企業の方が多いんです。確かに受賞には一定のラインがありますが、本アワードでは多様な取組を募集しています。社内の課題に対して、それを解決する取組であれば、大小関係なくエントリーしてほしいと思います。

中根:個人的には、「この理想は絶対間違ってないんだ」という強い気持ちがあればいいのではないかと思います。人事としては、社員から「この制度がよかったです」とか「これがきっかけでこんな行動をしました」という生の声が挙がった時に手応えを感じますね。その一言だけでも、「やってよかった!」と思いますから。

吉川:ありがとうございます! 会社の規模や取組の大小を気にせず、自分たちの姿勢を社内外に示す意味でも、是非グッドキャリア企業アワードへエントリー頂き、自社の取組を発信してもらいたいと思っています。