第10話

給付水準の
将来見通し

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将来の年金額は実質的な価値でみます

仮に将来の年金額が現在の倍になっていたとしても、物価も同様に現在の倍になっていた場合、購買力については現在も将来も変わりません。このように、将来の年金額をみる場合は、名目額でみるのではなく、その実質的な価値でみる必要があります。

将来の年金額を実質化する際には、その年金額でどの程度購入できるかが重要な指標となるため、物価水準に応じた経済的価値でみることが一般的です。

財政検証においても、将来の年金額については、物価上昇率を用いて現在の価値に割り戻した値で示しています。

所得代替率現役世代の賃金に対する年金の相対的水準を測るものですが、所得代替率が同じ(すなわち賃金に対する年金の比率が同じ)であっても、賃金の実質価値が上昇し、現役世代の購買力が上昇すれば、年金の購買力は上昇します。そこで、将来の年金水準を確認する際には、所得代替率に加え、物価上昇率を用いて現在の価値に割り戻した年金額も示しています。

物価上昇率を用いて現在の価値に割り戻した年金額は購買力の絶対的水準、所得代替率は現役世代の賃金に対する相対的水準を表すものとなり、財政検証においては、その両方で年金の水準を確認しています。

所得代替率と実質的な年金額の見通し

令和6(2024)年財政検証の「高成長実現ケース」、「成長型経済移行・継続ケース」、「過去30年投影ケース」及び「1人当たりゼロ成長ケース」における、モデル年金の給付水準の見通しは次のとおりでした。

ガイド年金額や手取り収入は物価上昇率で割り戻した金額だから購買力を表しているのね

ガイド実質賃金の上昇がある程度あれば、マクロ経済スライド調整があってもモデル年金の購買力は低下しないのね

ガイド一方、基礎年金のマクロ経済スライド調整期間が長くて調整が大きいのが課題だニャ

このように、令和6(2024)年財政検証では令和6(2024)年度の所得代替率が61.2%ですが、マクロ経済スライドによる給付水準の調整が行われる結果、最終的な所得代替率は高成長実現ケースで56.9%、成長型経済移行・継続ケースで57.6%、過去30年投影ケースで50.4%となる見込みです。一方、実質的な年金額は、令和6(2024)年度には22.6万円でしたが、それぞれのケースでマクロ経済スライドによる給付水準調整が終了する年度でみると高成長実現ケースの場合、令和21(2039)年度で25.9万円、成長型経済移行・継続ケースの場合、令和19(2037)年度で24.0万円、過去30年投影ケースの場合、令和39(2057)年度で21.1万円になる見込みです。

また、マクロ経済スライドは、報酬比例部分(厚生年金部分)については高成長実現ケース及び成長型経済移行・継続ケースの場合は調整を行う必要がなく、過去30年投影ケースの場合は、令和8(2026)年度で終了する見通しとなっています。また、基礎年金部分については、高成長実現ケースの場合は令和21(2039)年度、成長型経済移行・継続ケースの場合は令和19(2037)年度、過去30年投影ケースの場合は令和39(2057)年度に終了する見通しです。

一方、1人当たりゼロ成長ケースの場合、物価や賃金の上昇率が低いことによりマクロ経済スライドによる調整が十分に機能しないため、機械的に給付水準調整を続けると令和41(2059)年度に国民年金の積立金がなくなり完全賦課方式に移行せざるを得なくなる見通しです。その後、保険料と国庫負担だけで賄うことのできる水準は37%~33%程度となる見通しです。

マクロ経済スライドって?

マクロ経済スライドとは、そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組みです。

マクロ経済スライドについてはマンガで読む公的年金制度 第7話の「マクロ経済スライドってなに?」をご覧ください。

なお、次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、「調整期間の終了について検討を行い、その結果に基づいて調整期間の終了その他の措置を講ずる」こととされていますが、令和6(2024)年財政検証はこれに該当していませんでした。
(次の財政検証の予定時期(令和11(2029)年度)における所得代替率は50%を下回る見込みとはなっていませんでした。)

令和6(2024)年財政検証では、人口や経済については複数の前提を設定しており、それぞれの前提における最終的な所得代替率は次のとおりでした。

ガイド人口や経済が変わると、所得代替率も結構変わってくるのね

賃金水準別の給付水準

令和6(2024)年財政検証において、モデル年金の給付水準だけでなく、賃金水準が異なる世帯における給付水準を成長型経済移行・継続ケース、過去30年投影ケースの場合で示したものが以下の図です。

年金額は世帯の賃金水準が高いほど上昇することを示しており、右上がりの直線(赤線)となっています。一方、所得代替率は世帯の賃金水準が高いほど低下するため、右下がりの曲線(緑線)となっています。

公的年金の負担と給付の構造

ガイドこうやってグラフで見ると、賃金水準が上がる(右にいく)ほど所得代替率が下がるのが、よくわかるわね

ガイドでも、給付額をみると、賃金水準が高いほど給付額も高くなっているんだね

まとめ

  • 公的年金の給付水準を表すものさしとして「所得代替率」を使っている
  • 所得代替率とは、給付開始時におけるモデル年金額の現役世代の手取り収入に対する割合
  • モデル年金の所得代替率は、一定の経済成長を仮定するケース(高成長実現ケース~過去30年投影ケース)では将来も5割を上回る見通し
  • 一方、より低い成長を仮定するケース(1人当たりゼロ成長ケース)では機械的に給付水準調整を続けると、完全賦課方式に移行せざるを得なくなり、5割を下回る見通し
  • ※モデル年金:夫婦2人の基礎年金と夫の厚生年金の合計額
  • 現役時代の所得が高いほど所得代替率は低くなり、所得が低いほど所得代替率は高くなる。
  • 実質賃金が一定程度上昇すれば、所得代替率が低下しても、年金の実質的な価値(購買力)は維持・向上する見通し
財政検証の
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令和6年財政検証結果
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