私的扶養と
社会的扶養
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扶養には2つの仕組みがあります
私的扶養って? → 自分で自分の家族を支える仕組みです
私的扶養とは、高齢者や障害者など働くことのできない人を家族・親族で養うという考え方です。私的扶養の場合、主に扶養する側とされる側が、同居もしくは近居であることが特徴です。
公的年金が成熟する前はこの私的扶養が一般的でしたが、扶養される親の寿命や健康状態、支える側の家族・親族の人数などはさまざまで、各世帯の負担にばらつきがありました。
社会的扶養って? → 社会全体で支え合いをする仕組みです
社会的扶養は私的扶養と異なり、働くことのできない人を社会全体で支えるという考え方です。日本の公的年金制度はこの社会的扶養を基本としており、現役世代が年金保険料を納め、国を通じて高齢者へ年金を支給する仕組みです。このため、子や親族と離れた土地にいる高齢者だけの世帯でも、経済的な不安が軽減され、より良い暮らしがしやすくなります。
また、社会的扶養は、すべての人が等しく保険料を負担するため、私的扶養にみられる「世帯、個人の負担のばらつき」をある程度軽くすることができます。
わたしが一人で暮らしていけるのは、社会的扶養の仕組みがあるからなんだね
私的扶養と社会的扶養の違い
私的扶養 | 社会的扶養 | |
---|---|---|
暮らし方 | 主に家族の同居や近居を前提 | 高齢者だけの世帯で生活可能 |
経済的支援 | 仕送りや同居など家族・親族が負担 | 国を通じて社会全体で負担 |
私的扶養、いまの日本では難しい?
私的扶養の場合、扶養する相手(親など)と同居したり、近くに住んで生活を支えたりすることが必要になります。
ですが、戦後の日本では、地方から都会に出てサラリーマンになる若い人が増え(都市化)、都市部に人口が集中していきました。また、その人たちが都市部で家庭を持ち、親と離れて夫婦と子どもだけ(核家族)で暮らすことが一般的になったため、親と同居もしくは近居して扶養することが難しくなっていったのです。
同時に、高齢者だけの世帯が増えたことで、送迎や宅配などさまざまなサービスが発展し、高齢者だけでも生活がしやすくなりました。
また、昔と比べて、医療の技術が発達し、衛生状態が改善するなど、高齢者が健康に生活できるようになりました。このため、平均寿命が延び、親を扶養する期間が長くなってきており、子どもが引退して年金受給が始まった後も両親がまだご健在である場合も珍しくなくなってきました。このような場合、私的扶養では孫世代が両親だけでなく祖父母の扶養まで負うことになり、特に一人っ子には重い負担になるおそれがあります。一方、高齢者からみた場合、不幸にして子どもに先立たれてしまった場合などには、私的扶養を前提にしていると生活が困難な状況となってしまいます。
私たちが田舎に住むのも難しいし、おばあちゃんが都会にくるのも大変。近くで面倒を見るのってハードルが高いよね
だから、公的年金は社会的扶養なんです
上記のような都市化・核家族化によって、同居や近居での私的扶養が難しくなると同時に、平均寿命が延びたため親を養う期間も次第に長くなり、子世代にかかる負担が大きくなってきました。こういった変化のなかで、社会全体で高齢者を支える仕組みが公的年金制度として整ったのです。
現役世代は、年金保険料を納めることで親の生活を心配することなく生活ができ、高齢者は、公的年金によって、自分の子どもに過度な負担をかけず、経済的に自立した生活が送れます。親と遠く離れて暮らすことの多い現代の日本では、社会的扶養が扶養する側にもされる側にも安心できる制度なのです。また、このように社会全体で支えていく仕組みの方が、個人や家族だけで支えるよりも確実で効率的であるといえます。
参考:家族をめぐる代表的な変化
昔(1970年) | 現代(2020年) | |
---|---|---|
三世代同居世帯数 | 485万世帯 | 160万世帯 |
高齢単身世帯数 | 39万世帯 | 672万世帯 |
家族の人数 | 3.69人 | 2.21人 |
平均寿命 | 男性 69.31歳 女性 74.66歳 |
男性 81.56歳 女性 87.71歳 |
平均余命(65歳時) | 男性 12.50年 女性 15.34年 |
男性 19.97年 女性 24.88年 |
サラリーマンの割合 | 64.9% | 89.5% |
出典:「国勢調査」(総務省)、「完全生命表」(厚生労働省)、「労働力調査」(総務省)
まとめ
- 扶養には、自分で両親や親族を養う「私的扶養」と高齢者や障害者への支援を社会全体で負担する「社会的扶養」がある
- ライフスタイルや家族構成の変化によって、私的扶養が次第に難しくなってきた
- 公的年金は社会的扶養の考え方をベースにしている
- 公的年金が社会的扶養であることで、扶養する側もされる側も安心して自分の生活を送ることができる