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企業の取組

生産性向上推進委員会の「聞く力」と
デジタル化が変える介護の未来。
効率化で入所者と向き合う時間を創出

長井福祉会(山形県長井市)

法人の中心である特別養護老人ホーム「慈光園」

法人の中心である特別養護老人ホーム「慈光園」

社会福祉法人長井福祉会(山形県長井市)は、特別養護老人ホームやデイサービス、ケアハウスなどを展開する地域の福祉拠点だ。法人の中心である特別養護老人ホーム「慈光園」は創立から42年を迎え、長期入所140人、ショートステイ20人の計160人の定員を誇る。県内の単独施設としては最大規模で、長期入所の稼働率は常に99%に達している。

従業員数は195人(2026年4月現在)で、常勤が147人、パートタイム労働者が48人働いている。介護業界全体が直面する深刻な人手不足に対し、同法人ではいち早く外国人材の採用と、現場の声を反映したデジタルトランスフォーメーション(DX)化を両輪で進めてきた。

人手不足の危機感から始まった改革

皆川善典園長は、業務改革に取り組んだきっかけについて「ハローワークに求人を出しても人が集まらない状況が続いていました。働き手を確保するための生存戦略として、まずは外国人人材の受け入れを始めました。」と語る。

皆川善典園長

皆川善典園長

経済連携協定(EPA)によるフィリピンからの受入れを皮切りに、現在は特定技能も含めて12人の外国人労働者が活躍している。そして、人材確保と並行して進めたのが、記録の電子化とICT機器の導入だ。「2023年度にタブレット端末を21台購入し、介護ソフトを導入しました。さらに2024年度には、全160床のベッドにマット型の見守りセンサーを設置し、インカムを導入しました。インカムについては当初ラジオ式でつながりが良くなかったので、Wi-Fi環境を整備してWi-Fiインカムにすることで使いやすくなりました。」と説明する。

生産性向上委員会のアンケート調査が定着の鍵に

須貝崇志・総務課長

須貝崇志・総務課長

同法人は、機器導入に当たって「生産性向上推進委員会」を立ち上げ、現場の声を徹底的に吸い上げた。

須貝崇志・総務課長は「新たなシステムを導入した前後で、委員会が職員に対してアンケートを実施しました。見守りセンサーを導入した当初、現場からは『通知のアラートが鳴りすぎて逆に精神的な負担になる』という意見が上がりました。」という。そこで委員会が中心となって通知設定の見直しや、研修会を実施したことで、スムーズに活用できるようになった。「導入して終わりにするのではなく、アンケートの声を基に利用方法を修正してきたことが、システムの定着と改革の成功につながっていると考えています。」と語る。

介護課の班長を務める渡部綾香さんは「インカムの導入で職員を探し回る手間がなくなり、見守りセンサーの設定を見直してもらったことで精神的な負担もかなり減りました。現在は手元の端末で利用者が起きているか寝ているかが的確に把握できるようになり、夜間の定期巡視の負担が劇的に減っています。」と効果を説明する。

効率化で生み出した時間を「入所者と向き合う時間」に

職員の身体的負担を軽減するためのテクノロジー活用についても、慎重な見極めを行っている。ベッドから車いすへの移動を支援する移乗サポートロボットの導入を検討したが、同園の入所者は介護度が高く、実際の現場ではうまく使えないことが判明したため、導入を見送った。現場の実態に合わないものは無理に導入しないという冷静な判断が、現場の無用な混乱を防いでいる。

Wi-Fiインカムの導入が業務効率化につながった。

Wi-Fiインカムの導入が業務効率化につながった。

一方で、温浴効果の高いミスト浴槽は積極的に導入した。お湯に浸からなくてもしっかりと温まるため、利用者1人当たり5分程度の時間短縮につながり、介助する職員の負担も確実に減っているという。

作業時間が短縮し、利用者にも好評のミスト浴槽

作業時間が短縮し、利用者にも好評のミスト浴槽

渡部さんは、これらの業務削減がもたらした効果について、「タブレット入力によって紙からパソコンへ打ち直す記録の二度手間も解消されました。」と語る。業務の効率化は、現場に大きな変化をもたらした。「心と時間にゆとりが生まれ、その分を入所者さんとしっかり向き合う時間や、より丁寧なコミュニケーションに充てられるようになったのが、現場としては一番大きな効果だと感じています。」と明かす。

介護課の班長を務める渡部綾香さん

介護課の班長を務める渡部綾香さん

さらに、施設に対する信頼についても「法人の方針として、私たちの安全と健康を第一に考えて新しい取組みを導入してくださっているのがすごく伝わってきます。とても安心しますし、感謝しています。」と笑顔を見せた。

ケアマネジャーからの利用情報をデジタル化

特別養護老人ホームだけでなく、デイサービス部門でもデジタル化による業務効率化の恩恵が広がっている。

中央デイサービスセンターで介護員兼相談員を務める牛澤翔太さんは「ケアプランデータ連携システムの導入が非常に役立っています。これまでは地域のケアマネジャー(介護支援専門員)から送られてくる利用者の予定表などの情報が紙ベースだったため、私たちが手作業でパソコンに入力し直すという手間が発生していました。システム導入後はデータ(CSV)で直接取り込めるようになり、入力作業が劇的に省力化されました。」と語る。

中央デイサービスセンターで介護員兼相談員を務める牛澤翔太さん

中央デイサービスセンターで介護員兼相談員を務める牛澤翔太さん

また、日々の送迎管理も紙のバインダーからタブレット端末への入力に切り替えた。「誰が送迎の車に乗車したか、お休みは誰かといった情報がリアルタイムで職員間に共有されるようになり、業務が極めてスムーズになりました。」と効果を強調する。

「長く働ける職場」に向けた今後の展望

テクノロジーの導入と、アンケートを通じたきめ細かな運用改善により、着実に働き方改革を進める長井福祉会。須貝課長は「介護現場では入浴や排せつ介助による腰痛が依然として大きな課題です。今後は身体的負担をさらに軽減するため、リフトの導入なども検討していきたいと考えています。」と先を見据える。

皆川園長は「限られた人員の中で、職員の健康と働きやすさを守りながら、いかに質の高いケアを持続的に提供していくか。効率化で空いた時間を『人』へのケアに振り向けたい。またこうした取組みをアピールして、人材確保につながれば。」と期待している。

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