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企業の取組

荷主との対等なパートナーシップで「2024年問題」に挑む。
パレット輸送の推進でドライバーの負担と拘束時間を大幅削減

株式会社ミツノリ(福井県福井市)

株式会社ミツノリ

地域物流を支える老舗企業と「ドライバーの高齢化」への危機感

福井県福井市に本社を置く株式会社ミツノリは、1950(昭和25)年の設立以来、半世紀以上にわたり北陸地方の物流インフラを支え続けている総合物流企業だ。三井倉庫グループの一員として強固なネットワークを持ち、福井県内と石川県内に計3拠点を構え、従業員数は135人を数える。常温及び定温倉庫での保管事業と、北陸3県を中心とした区域配送、関西・中京方面への中長距離輸送を事業の柱としている。

同社が過労死防止や働き方改革に本格的に着手した背景には、日本の物流業界全体を覆う「トラックドライバーの高齢化と人材不足」に対する強い危機感があった。同社でもドライバーの平均年齢は50歳を超えており、20代は1人しかいない状況に陥っていた。寺嶋和紀社長は「あと5年経てば大半が60歳になり、会社が回らなくなってしまいます。高齢者や女性でも長く安心して働ける環境をつくらなければならないという危機感がありました。」と振り返る。

寺嶋和紀社長

寺嶋和紀社長

給与を維持しながら段階的に労働時間を削減

2024(令和6)年4月から自動車運転業務の時間外労働の上限規制が適用される「物流の2024年問題」が本格化する前の2019(令和元)年頃から、同社はすでに「改善基準告示」を見据え、段階的に拘束時間を減らす取組みを始めていた。

一般的に、トラックドライバーは走った距離や運んだ量が収入に直結しやすい給与体系であることが多く、単に労働時間を減らすだけでは残業代が減り、ドライバーの収入低下を招いてしまう。そこで同社は、ドライバーの給与が下がらないよう事前に賃金体系を改定し、ベースアップを行った上で時間を減らしていく方針をとった。

ドライバーの給与は基本給に加えて、走った距離と運んだ量をベースにした「運行手当」を加算する仕組みにしている。ドライバー自身がメーターや荷量を見れば「今月はいくら手当がもらえるか」を自分で計算できる仕組みにしたことで収入面の不安を取り除き、会社主導の労働時間削減策に対する現場の理解と協力を得た。

荷主企業との対話による「パレット化」と現場の交渉力

物流現場における長時間労働や過労死リスクの多くは、自社内だけの改善活動では解決しきれない外部要因、すなわち手作業での荷役(荷積み・荷卸し)や、荷主先での長時間の荷待ち(待機)時間に起因している。同社が運ぶ輸出用の生地(カートン)は一つ60〜70キロもあり、これをドライバーが手作業でトラックに積み卸す(バラ積み)のは重労働であり、時間もかかっていた。

パレット化された積荷

パレット化された積荷

この根本的な課題を解決するため、同社は荷主企業との直接的な対話と交渉を進めた。主要な荷主の一つであるサカイオーベックス株式会社(本社・福井市)と実証実験を行い、事前にパレットに積んだ状態で準備してもらうよう協力を要請した。

このパレット化の推進においては、経営層のトップダウンだけでなく、現場のドライバー自身の交渉力も大きな役割を果たしている。

勤続32年目のベテランドライバーである野尻一郎さんは「荷主の現場の方とも長く付き合っているので、『これ、このまま(パレットで)持って行っていいか?』と自分たちから直接交渉して、協力してもらうこともありました。現場同士の人間関係ができているからこそ、現場主導でスムーズに改善が進んだ部分も大きいです。」と語る。長年培ってきた現場単位での信頼関係が、業務改善を後押しした。

荷主側での作業分担と出荷日調整がもたらした効果

サカイオーベックス側も、持続可能な物流の維持を自社の重要課題と認識し、ミツノリの要望に歩み寄った。同社に出荷場所を用意し、これまでドライバー自身が工場で行っていた荷物の仕分けや積込み作業を分担して、事前にパレットに積んだ状態で準備する体制へと変更した。加えて、受注の「翌日出荷」を遅らせるなど、出荷スケジュールの調整にも協力した。これにより、以前は荷待ちと積込みで最大9時間ほどかかっていた作業が、現在では荷待ちもなく2〜3時間程度で終わるようになった。

野尻さんは「パレット化のおかげで肉体的な負担も全然違います。昔は荷主の工場で重い荷物をバラ積みしていましたが、今はパレットに載っているので、リフトで積むだけで済みます。」と作業環境の変化を説明する。

パレット化された積み荷をリフトで積む

パレット化された積み荷をリフトで積む

全線高速道路の利用と「土日の休暇」がもたらした生活の変化

ミツノリ側での自社努力による支援も進めている。これまでは経費などの兼ね合いで一般道の利用もあったが、現在は全線で高速道路を使えるようにルールを変更し、ドライバーの運転時間の短縮を図った。

野尻さんは「昔に比べて拘束時間は劇的に減りました。全線で高速道路を使わせてもらえるようになったため、片道6時間半かかっていたところが4時間で行けるようになり、運転時間が減って体も本当に楽になりました。」と話す。

さらに、運行スケジュールの見直しはドライバーの私生活にもゆとりをもたらした。

野尻さんは「昔は金曜日や土曜日に荷物を積んで、日曜日に出発していましたが、今では金曜日のうちに積込みを終えて、土曜日はしっかり休んでから日曜日に出発できるようになりました。家庭での生活にも余裕ができましたね。」と笑顔を見せる。

「余裕ができたことで、時間にも追われなくなり、事故も全くなくなりました。安心して仕事ができています。」という野尻さんの言葉は、労働環境の改善が交通事故の未然防止や過労死防止に直結していることを示している。

こうした「パレット輸送の拡大」「荷役作業の削減」「高速道路の利用拡大」が組み合わさった結果、同社の夜間運行ドライバーの1か月当たりの平均拘束時間は、取組開始時の2016(平成28)年度の292時間25分から、上限規制が適用された2024(令和6)年度には233時間45分へと、約20%もの劇的な削減に成功した。

運行スケジュールの見直しはドライバーの私生活にもゆとりをもたらした

運行スケジュールの見直しはドライバーの私生活にもゆとりをもたらした

一企業の枠を越え、地域全体で持続可能な物流を目指す

こうした現場の声をすくい上げる風土について、寺嶋社長は「現場を一番知っているのはドライバーなので、彼らから情報をもらって会社が動くという形ができています。」と語る。この結果、同社は他社に比べてドライバーの離職が少ないという成果を上げている。

今後の展望について、寺嶋社長は「現在は月の拘束時間を社内目標として、法的な上限(284時間)を下回る『250時間』に設定しています。将来的にはホワイトカラーと同じような労働時間に近づけていくべきだと考えています。さらに今後は、同業他社や複数の荷主を巻き込んで、ラックやパレットの『共同利用』などを進め、地域全体での効率的な輸送システムを作り上げていくことが課題です。」と語る。

長時間労働や過重な肉体労働という業界の構造的課題に対し、経営層の判断と現場ドライバーの自発的な行動、荷主企業との対等なパートナーシップによって改善の道を開いた株式会社ミツノリ。物流に関わる全てのステークホルダーが連携し、適正な労働環境を共に作り上げていく同社のアプローチは、日本の物流業界の持続可能性を高める一つのモデルを示している。

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