戻る

III 調査結果

 賃金の改定の実施状況
 平成13年中に賃金の改定を実施又は予定している企業割合は76.0%(前年78.8%)と,現行の集計方法とした昭和57年以降最低となり,賃金の改定を実施しない企業割合は21.3%(同19.1%)と本調査で調査項目とした昭和50年以降最高となっている。
 なお,1人当たり平均賃金を引き上げる企業割合は73.8%(前年75.8%),1人当たり平均賃金を引き下げる企業割合は2.2%(同2.9%)となっている。
 これを企業規模別にみると,1人当たり平均賃金を引き上げる企業割合は,前年と比べて1,000〜4,999人を除き低下しており,1人当たり平均賃金を引き下げる企業割合は300〜999人で前年と比べて上昇し,1,000〜4,999人で同水準,5,000人以上,100〜299人では低下している(第1表)。

 賃金の改定額及び改定率
(1) 平成13年中における賃金の改定状況(10〜12月実施予定を含む。)をみると,常用労働者数による加重平均で(以下の記述について同じ。),賃金の改定額は,4,163円(前年4,177円),賃金の改定率は1.5%(同1.5%)となり,額は現行の集計を実施している昭和55年以降最低,率は昨年と同水準となっている(第2表第1図)。

(2) 企業規模別にみると,規模が小さくなるほど賃金の改定額は低くなっており,5,000人以上,300〜999人で前年を下回っているが,1,000〜4,999人,100〜299人では前年を上回っている。
 また,1人当たり平均賃金を引き上げる企業の引上げ額は5,025円,引上げ率は1.8%,1人当たり平均賃金を引き下げる企業の引下げ額は12,513円,引下げ率は3.4%となっている(第3表)。

(3) 産業別にみると,賃金の改定額は,鉱業が5,570円と最も高く,次いで,製造業の5,047円,不動産業の4,424円,金融・保険業の4,237円の順となっている。また,賃金の改定率は,鉱業,製造業が1.8%,次いで,卸売・小売業,飲食店の1.6%,不動産業の1.4%の順となっている。
 前年と比べると,賃金の改定額では鉱業,建設業,製造業,運輸・通信業,サービス業が前年を上回り,賃金の改定率では鉱業,建設業,製造業,運輸・通信業が前年を上回っている。(第4表)。

(4) 平成13年中に賃金の改定を実施しない企業割合は全体の21.3%となり,賃金の改定を実施しない企業について,その理由をみると,「企業業績の悪化」が56.5%と最も高く,次いで,「雇用の安定を優先」の24.1%,「その他」の11.5%の順となっている。
 また,1人当たり平均賃金を引き下げる企業割合は全体の2.2%となり,1人当たり平均賃金を引き下げる企業について,その理由をみると,「企業業績の悪化」が96.1%と最も高く,次いで,「雇用の安定を優先」,「その他」の2.0%の順となっている(第5表)。

(5) 平成13年中に何らかの形で1人当たり平均賃金の減額措置を実施した企業について,その実施状況(あてはまるものすべての複数回答。)をみると,「諸手当の減額」が64.5%,「基本給の減額」が53.4%となっており,このうち「賃金カットの実施により減額」が33.3%,「賃金表の改定等により,賃金水準を引き下げた」が23.0%となっている。また,賃金カットを実施した企業については,「ベア,定昇等を実施した」が29.8%,「ベア,定昇等を実施しない」が3.5%となっている(第6表)。
 1人当たり平均賃金の減額措置を実施した企業のうち,「諸手当の減額」及び「賃金カットの実施により減額」を行った企業について,その対象者(あてはまるものすべての複数回答。)と実施期間をみると,対象者は「管理職」が86.7%と最も高く,「管理職以外の全員」が35.1%,「管理職以外の一部」が33.9%となっている。実施期間は,「1年超」が59.0%と最も高く,「半年超1年以内」が30.8%,「半年以内」が10.2%となっている。(第7表)。

 賃金の改定額の分布
 賃金の改定額の階級別企業分布をみると,改定額0円(賃金の改定を実施しない企業を含む)の企業割合が22.1%(前年19.9%)と最も高く,次いで,5,000円〜6,000円未満の14.0%(同12.5%),3,000円〜4,000円未満の12.5%(同11.3%)の順となっている(第8表第2図)。

 賃金の改定の決定時期
 賃金の改定を実施した企業及び賃金の改定を予定し額も決定している企業(複数年協定等により話合いを行わなかった企業を除いた数)の割合は全企業の75.0%であるが,これらについて賃金の改定の決定時期を月別にみると,4月が37.7%と最も高く,次いで,3月の24.7%,5月の18.2%の順となっている。
 企業規模別にみると,1,000人以上では3月の割合が最も高く,1,000人未満では4月が最も高くなっている(第9表)。

 ベアの実施状況
 1人当たり平均賃金を引き上げた企業について,ベアの実施状況をみると,「ベアと定昇を区別した」企業割合が44.6%,このうち「ベアを行った」企業割合は18.1%,「ベアを行わなかった」企業割合は26.5%となっており,「ベアと定昇を区別しなかった」企業割合は55.4%となっている。
 企業規模別にみると,規模が小さいほど「ベアと定昇を区別しなかった」企業割合が高くなっている。
前年と比べると,「ベアと定昇を区別しなかった」企業割合が上昇し,「ベアと定昇を区別した」企業割合が低下している(第10表)。

 賃金の改定額と賞与の支給額との決定状況
 賃金の改定と賞与との決定状況をみると,「賃金の改定額と賞与支給額を同時期に決めた」企業割合は35.0%となり,このうち「夏の賞与支給額のみを決めた」企業割合は11.0%,「夏と冬の両方の賞与支給額を決めた」企業割合は24.0%となっている。賃金の改定額と賞与支給額の重点の置き方をみると,いずれも「どちらともいえない」とする企業割合が高くなっている。
 企業規模別にみると,規模の大きいほど「賃金の改定額と賞与支給額を同時期に決めた」企業割合が高くなっている(第11表)。

 賃金の改定事情
(1) 賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素をみると,「企業業績」をあげた企業が72.6%(前年70.6%)と最も高く,次いで,「世間相場」の17.2%(同19.0%),「その他」の4.0%(同4.5%),「労働力の確保・定着」の3.8%(同3.2%)の順となっている。
 企業規模別にみると,すべての規模で「企業業績」をあげた企業が最も高くなっている(第12表第13表第3図)。

(2) 「世間相場」をあげたすべての企業(最も重視したものを1つ,そのほかに重視したものを2つまでの最大3つまでの複数回答による。)を対象として,賃金の改定の決定に当たり世間相場として最も参考にした企業の種類をみると,「同一産業同格企業」が39.7%(前年41.2%)と最も高く,次いで,「系列企業」の19.3%(同20.0%),「同一産業上位企業」の15.2%(同14.0%)の順となっている(第14表)。
 また,「他産業」をあげたすべての企業は19.5%であるが,賃金の改定の決定に当たりこれらの企業がどの産業を最も参考にしたかをみると,「鉄鋼」が32.6%と(前年23.5%)と最も高く,以下,「電機」の19.9%(同18.9%),「サービス」の19.6%(同14.5%)の順となっている(第15表)。

 人件費比率の増加対策
 人件費比率の増加に対し,企業が当面どのような対策に力を入れるかをみると,最も力を入れる対策として「売上高の増加,新製品の開発」をあげた企業が38.0%(前年36.8%)と最も高く,次いで「人員削減,欠員不補充」,「諸経費等コストの削減」の13.4%(同8.8%,14.7%),「パートタイム労働者への切替え,下請け,派遣労働者等の活用」の11.1%(同11.7%),「職能給,職務給,能率給の採用・拡大など賃金制度の改正」の10.6%(同12.3%)の順となっている。
 前年と比べると,「人員削減,欠員不補充」が4.6ポイント上昇したほか,「売上高の増加,新製品の開発」の割合が上昇している。一方,「人員配置,作業方法の改善」,「職能給,職務給,能率給の採用・拡大など賃金制度の改正」,「諸経費等コストの削減」などの割合が低下している(第16表)。

 労働条件の改善に関する話合いの状況
 平成13年9月までの1年間に,労働時間対策,高齢者雇用対策等の労働条件の改善に関して労働組合又は労働者との話合いを行った企業の割合は60.8%(前年63.7%)と前年を下回ったが,「うち賃金の改定時に話し合いあり」は13.7%(同12.8%)となり,前年を上回った。
 話合いの内訳をみると,「賃金制度」が26.4%(同26.1%)と最も高く,次いで,「高齢者雇用対策」の23.8%(同20.9%),「所定外労働時間の抑制」の20.0%(同23.4%)の順となっている。
 話合いを行った企業のうち,話合いの結果,合意(一部変更して合意したものを含む。)に達した企業の割合が高いのは「育児休業制度」(90.1%),「介護休業制度」(82.9%),「変形労働時間制の導入・改定」(79.9%)などとなっている(第17表)。



付表

第1表 賃金の改定の実施状況別企業割合の推移
第2表 1人当たり平均賃金の改定率の階級別労働者分布
第3表 1人当たり平均賃金の減額措置を実施した企業の実施状況別企業割合
第4表 企業規模別1人当たり平均定昇率
第5表 賃金の改定の決定時期別企業割合
第6表 複数年協定の実施状況別企業割合
第7表 賃金の改定額と賞与支給額との決定状況別企業割合
第8表 1人当たり平均賃金の減額措置を実施した企業の対象者別企業割合
第9表 人件費比率の増加対策として最も力を入れる対策別企業割合の推移

別紙1 サービス業の新旧対象産業表
別紙2 賃金の改定


トップへ
戻る