概要情報
事件名 |
オリエンタルモーター(賃金差別) |
事件番号 |
中労委平成 5年(不再)第17号
中労委平成 5年(不再)第18号
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再審査申立人 |
オリエンタルモーター株式会社 |
再審査被申立人 |
全日本金属情報機器労働組合東京地方本部オリエンタルモーター支部 |
再審査被申立人 |
X1外11名 |
命令年月日 |
平成10年 8月 5日 |
命令区分 |
一部変更(初審命令を一部取消し) |
重要度 |
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事件概要 |
会社が、組合員9名に対し、組合活動を理由として他の従業員と仕事上及び賃金上の差別取扱いをしたことが争われた事件で、千葉地労委は、(1)組合員9名の昭和56年度から平成2年度までの等級、昇給及び賞与について、等級にあっては非組合員の平均昇級年数により、昇給にあっては非組合員の平均点を基準として、賞与にあっては等級ごとに算出した非組合員の平均点を用いて、それぞれ是正すること、(2)組合員に対する賃金上、仕事上の差別取扱いをしないこと、(3)上記(1)及び(2)に関する文書手交及び文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。会社並びに組合及び組合員9名はこれを不服としてそれぞれ再審査を申し立てたが、中労委は初審命令を一部変更したほかは各再審査申立てを棄却した。 |
命令主文 |
Ⅰ 初審命令主文第1項を次のとおり変更する。 1 オリエンタルモーター株式会社は、全日本金属情報機器労働組合東京地方 本部オリエンタルモーター支部の組合員X1、同(亡)X2、同X3、同X4、同X5、同 X6、同X7、同X8及び同X9(以下「本件組合員」という。)の昭和61年度 から平成2年度までの各年度の等級、昇給及び賞与(X2にあっては昭和63年上 期までの等級、昇給及び賞与)について、以下のように取り扱わなければならな い。 (1)等級については、別紙8に基づき是正すること。 (2)昇給及び賞与については、上記(1)に基づき是正した本件組合員の等 級を前提に、本件組合員の各昇給評語及び各成績評語を「B」として計算しなお すこと。 (3)以上の是正に基づく賃金額と既に支払われた賃金額との差額(賞与を含 む。)に、年5分の利息を付して、本件組合員に支払うこと。ただし、組合員( 亡)X2については、上記差額(退職金を含む。)を、その承継人である相続人に 対し支払うこと。 Ⅱ 初審命令主文第3項記中「千葉県地方労働委員会」を「中央労働委員会」 に改める。 Ⅲ その余の救済申立て及び各再審査申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
1202 考課査定による差別
3010 労組法7条1号(不利益取扱い、黄犬契約)と競合
組合公然化以来会社と組合は紛争状態にあり、会社は一貫して組合及び本件組合員を敵視しており、しかも、本件組合員に対する人事考課は正当であるとの会社の主張はいずれも認められず、会社は本件組合員の組合活動を嫌悪し、本件組合員に対し業務格下げ等の仕事上の差別取扱いをした上で、年2回の賞与支給にあたって行われる成績評価を低く評価することによって、毎年の定期昇給及び賞与について賃金上の差別を行い、それらの結果等級格差を生じさせたものと解するのが相当であり、不当労働行為であるとした初審判断が維持された例。
4413 給与上の不利益の場合
等級についての是正方法は、X3を除く本件組合員と本件組合員以外の者との間で等級格差が明らかになった時点からその等級格差分を是正させるのが相当であり、昇給及び賞与についての是正方法は、本件組合員の昇給評語又は成績評語が「C」又は「D」とされた各昇給及び各賞与について、同人らの各評語を会社の他の社員の平均的な評語である「B」とすることにより、格差を是正させるのが相当であるとされた例。
5201 継続する行為
使用者の賃金の決定行為とこれに基づく賃金の支払いとは一体として一個の不当労働行為を構成するというべきであり、同決定行為とこれに基づく賃金が支払われている限り不当労働行為は継続することになるから、救済申立てが同決定行為に基づく賃金の最後の支払い時から1年以内にされたときは、当該救済申立ては、労働組合法第27条2項の定める期間内になされた適法なものと判断された例。
5000 具体的請求の欠除
会社は、初審命令は申立てがなされていないにもかかわらず仕事上の差別取扱いについて救済しており、労働委員会の裁量権の範囲を超えた違法なものであると主張するが、組合は、仕事上の差別取扱いについては、会社の支配介入行為のうちの一事実として主張し、その救済を求めているものとみるのが相当であり、初審命令は申立てのない事項について救済したものとはいえないとされた例。
5005 損害賠償の請求
組合らは、団結権侵害に対する損害賠償についての救済申立てを棄却した本件初審命令の判断は違法であると主張するが、このような請求は、不当労働行為制度の趣旨からみて認めることはできないとされた例。
4838 申立ての承継
5123 審査中の組合脱退・退職等の取扱い
5143 不出頭・所在不明・消滅・死亡・承継
会社は、X2の被救済利益は死亡により喪失し承継は認められないとして却下を主張するが、労働委員会規則第34条第1項第7号の規定からみて本件救済申立ての承継を拒否すべき理由はなく、X2の受けた賃金上の不利益処遇を可能な範囲において是正させることが、不当労働行為の趣旨に適合するものとして、相続人への承継を認めた初審命令は相当であるとされた例。
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業種・規模 |
電気機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集111集321頁 |
評釈等情報 |
中央労働時報 1999年1月 946号 22頁 
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