概要情報
事件名 |
オリエンタルモーター(賃金差別) |
事件番号 |
千葉地労委昭和63年(不)第4号
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申立人 |
全日本金属情報機器労働組合東京地方本部オリエンタルモーター支部 組合員9名 |
命令年月日 |
平成 5年 3月15日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
本件は、会社が、組合員9名に対し、他の従業員と仕事上及び等級、昇給、賞与について賃金上の差別取扱いをしたことが不当労働行為であるとして争われた事件である。 千葉地労委は、組合員8名に対する新賃金制度に沿った賃金の見直し及びそれに伴う差額賃金(年5分加算)の支払い、死亡した組合員X1の承継人たる相続人に対するX1の死亡退職時までの差額賃金の支払い、組合員に対する仕事上及び賃金上の差別取扱いによる支配介入の禁止を命じ、併せて文書手交並びに文書掲示を命じた。なお、支配介入行為による団結権の侵害に対して請求されていた損害賠償については棄却した。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人X2、同X1、同X3、同X4、同X5、同X6、同X7、同X8及び同X9の昭和56年度乃至平成2年度の各年の等級、昇給及び賞与について、以下のようにしなければならない。 (1) 等級については、新しい賃金制度における等級構造の資格要件に沿って、非組合員の平均昇級年数により、見直しを行うこと。 (2) 昇給については、(1) の見直しを踏まえ、等級ごとに算出した非組合員の「賞与の成績評価の基となる素点」の平均点を基準にして、これまでの評価を下回らないよう、「評語の標準分布」に従って、その査定の見直しを行うこと。 (3) 賞与については、これらの見直しを踏まえ、等級ごとに算出した非組合員の「等級別成績評語別配分点数」の平均点を用いて、計算すること。 以上の結果、本来ならば受けるはずであった賃金額と既に支払われた賃金額との差額(夏・冬期賞与を含む。)を、年5分の利息を付して、各申立人組合員に支払わなければならない。 ただし、申立人X1については、死亡退職時までの期間で算定した額(退職金を含む。)を、その承継人たる相続人に対し支払うものとする。 2 被申立人は、申立人組合の組合員に対し、他の従業員と仕事上及び賃金上の差別取扱いをして、今後とも申立人組合の運営に支配介入してはならない。 3 被申立人は、本命令受領後1週間以内に、下記文言を記載した文書を申立人組合の代表者に手交するとともに、同文言を縦1メートル、横 1.5メートルの白紙の全面に楷書で鮮明に墨書し、被申立人の本社及び申立人組合所属申立人らが勤務する事業所の各入口の見やすい場所に毀損することなく、10日間掲示しなけれればならない。 記 当社は、貴組合の組合員であるX2、X1、X3、X4、X5、X6、X7、X8及びX9の各位に対し、賃金等について差別取扱いをしてきましたが、今般、千葉県地方労働委員会において、このことが労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認定されました。 よって、当社は、再びこのような行為を繰り返さないようにいたします。 平成 年 月 日 オリエンタルモーター株式会社 代表取締役 Y1 全日本金属情報機器労働組合東京地方本部 オリエンタルモーター支部 執行委員長 X2様 (注:年月日は、手交文書にあっては手交の日を、掲示文書にあっては掲示の日をそれぞれ記入すること。) 4 その余の申立ては棄却する。 |
判定の要旨 |
1202 考課査定による差別
2901 組合無視
組合員9名の昭和56年度ないし平成2年度の昇格、昇給、賞与についての査定に各人とも合理的理由がなく、申立組合員である故の不利益取扱いであり、支配介入であるとされた例。
4415 賃金是正を命じた例
昇給差別の是正方法については、等級ごとに算出した非組合員の「賞与の成績評価の基となる素点」の平均点を基準にして、これまでの評価を下回らないよう、「評語の標準分布」に従って、その査定の見直しを行うことを命じ、賞与については、これらの見直しを踏まえ、等級ごとに算出した非組合員の「等級別成績評語別配分点数」の平均点を用いて、計算することを命じた例。
4415 賃金是正を命じた例
等級差別の是正方法として、非組合員の平均昇級年数による見直しが相当とされた例。
4406 バックペイに利子・付加金を付したもの
等級、昇給、賞与差別の是正方法として、既に支払われた賃金額と本来受けるはずであった賃金額との差額に年5分の「利息」を付して支払うことが相当とされた例。
4811 労組法7条3号(個人申立)の場合
死亡した申立人X1の昇格等の申立てにつき、同人は死亡時までの賃金請求権を有し、相続人がこれを承継したものとされた例。
5005 損害賠償の請求
昇格昇給等差別の賠償請求が認められなかった例。
5201 継続する行為
昇格、昇給、賞与差別が繰り返しされ、不当労働行為意思が一貫して継続しているから、昭和56年度から平成2年度までの間の差別は全体として「継続する行為」であるとされた例。
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業種・規模 |
精密機械器具製造業 |
掲載文献 |
不当労働行為事件命令集96集339頁 |
評釈等情報 |
 
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