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第11回全般コード化情報の分析について



第11回全般コード化情報の分析について


1.全般コード化情報の収集状況
  登録施設数 :249施設(前回245施設)
  報告施設数 :84施設(前回80施設)
  全般コード化情報事例数: :13390件(前回13443件)
  報告対象期間 :平成16年1月〜3月

2.分析方針

 分析は以下の方針に基づき実施した。
1)収集した事例について、頻度を単純集計した。
2)収集した事例について、項目間の相互関係を把握するため、それらのクロス集計を行った。
3)報告事例の多い「処方・与薬」「ドレーン・チューブ類の使用・管理」「療養上の世話、療養生活の場面」および影響度の大きい事例の割合が高い「医療機器の使用・管理」「輸血」については、該当するデータを抽出のうえ、単純集計および項目間のクロス集計を行った。

3.分析項目
 以下の項目について、単純集計、クロス集計を行い、この結果を集計表とグラフに整理した。

<単純集計>
以下の項目について単純集計を行った。
発生月(A)
発生曜日(B)
発生時間帯(C)
発生場所(D)
患者の性別(E)
患者の年齢(F)
患者の心身状態(G;多重回答)
発見者(H)
当事者の職種(I;多重回答)
当事者の職種経験年数(J)
当事者の部署配属年数(K)
ヒヤリ・ハット事例が発生した場面(L)
ヒヤリ・ハット事例が発生した要因(N;多重回答)
間違いの実施の有無および事例の影響度(O)

<クロス集計>
 以下の項目間のクロス集計をおこなった。
<クロス集計>の表


4.分析結果

1)全事例【13390事例】

○発生時間帯【図1−3】
 これまでと同様、6〜7時台になると増加し、8〜11時台にほぼピークとなり、12〜19時まではやや減るもののほぼ一定頻度となり、20時以降減少するという日内変動を示している。

○患者の性別【図1−5】
 これまでと同様、男性患者に発生したヒヤリハットの件数が女性患者よりも多く、約1.3倍となっている。患者調査によると、入院患者数、外来患者数ともに女性のほうが多いので、男性患者には何らかのリスク要因があることが示唆される。

○患者年齢【図1−6】
 これまでと同様、71〜80歳、61〜70歳、51〜60歳の順に多く、この3区分で約半数を占めており、中高齢患者のリスク要因が高い可能性がある。また、0〜10歳も7%程度発生しており、小児も何らかのリスク要因を有する可能性がある。

○発見者【図1−8】
 これまでと同様、当事者本人が発見する事例が最も多く(6226例、46%)、次いで同職種者(4357例、33%)、他職種者(1274例、10%)となっている。

○職種経験年数、部署配属年数【図1−10、1−11】
 職種経験年数、部署配属年数ともに年数0年によるヒヤリハットが最も多く、年数がたつにつれて件数も減少している。新入職員および部署異動後の教育・指導体制の充実が求められる。

○発生場面【図1−12】
 これまでと同様、高頻度群として処方・与薬(3199例、24%)、ドレーン・チューブ類の使用・管理(2106例、16%)、その他の療養生活の場面(1774例、13%)となっており、これらで全体の半数以上を占めている。

○発生要因・詳細【図1−13、表1−1】
 これまでと同様、「確認」「観察」「心理的状況」「勤務状況」「判断」が発生要因として多く挙げられている。具体的には「確認が不十分であった」「観察が不十分であった」「判断に誤りがあった」「多忙であった」などが上位に挙げられている。

○影響度【図1−14】
 間違いが実施された事例の割合が77%に達しており、従来よりも多くなっている。


2)処方・与薬
○発生時間帯【図2−3】
 従来と同様二峰性で、8〜9時台および18時〜19時台に発生頻度がピークとなっている。

○患者の性別【図2−5】
 男性1753例(55%)、女性1298例(41%)と、男性のほうが多い。

○発見者【図2−8】
 従来同様、当事者本人による発見よりも同職種者が発見するケースの方が多い。全事例では当事者本人による発見が多いので、処方・与薬の発見者における特徴といえる。同職種者による発見が多いということは、クロスチェックなどの仕組みが機能している結果とも考えられる。

○影響度【図2−13】
 間違いが実施された事例が2738例、86%となっており、未然に防止しにくい。


3)ドレーン・チューブ類の使用管理
○発生曜日【図3−2】
 発生曜日は木曜日にピークがみられるが、その理由は不明。また土曜・日曜なども平日と同様の発生状況となっている。

○発生時間帯【図3−3】
 前回同様、深夜帯(22〜23時台、0〜1時台)および8〜9時台にピークが見られた。

○患者の性別【図3−5】
 これまでと同様、男性1270例、女性767例と、男性のほうが約1.7倍の発生頻度となっている。

○患者の心身状態【図3−7】
 床上安静、意識障害の患者で多く発生しており、自己抜去などの原因となっている可能性がある。

○発生要因・詳細【図3−12、表3−1】
 「観察が不十分であった」がもっとも多く報告されており、リスクのアセスメントと患者観察の充実など、なんらかの対応が求められる。

○影響度【図3−13】
 「間違いが実施」が1805例、85%を占める。実施前に発見したが実施されていれば患者への影響は大きい(生命に影響)と思われる事例が16例(0.8%)あった。


4)医療機器の使用・管理
○発生曜日【図4−2】
 今回の集計では、火曜日と金曜日の発生頻度が多いが、理由は不明である。

○発生時間帯【図4−3】
 これまでと同様、日勤帯(8時〜11時台)における発生頻度が多いが、今回の集計では16-17時台にピークがある。また0〜1時台に夜間の小さなピークがある。

○患者の性別【図4−5】
 男性231例(54%)、女性148例(35%)と、男性の発生が多い。

○発見者【図4−8】
 第8回集計以降、同職種者による発見が当事者本人よりも多くなっている。

○職種経験年数【図4−10】
 0年、1年の発生が多い。2年目以降は発生頻度は少ないものの、年数による減少傾向は見られず、経験蓄積によるヒヤリハット予防効果があまり見られない。

○影響度【図4−13】
 実施されていれば患者への影響は大きい(生命に影響)と思われる事例が13件(3.1%)発生している。


5)輸血
○発生曜日【図5−2】
 週日中の曜日による発生頻度の差はあまりみられない。

○発生時間帯【図5−3】
 日勤帯に多く発生しているが、その中でも10-11時台と16〜17時台にピークがある。

○患者の性別【図5−5】
 男性50件、女性48件と、男女差は今回はみられなかった。

○患者の年齢【図5−6】
 今回の集計では、51歳〜80歳と0〜10歳にピークが見られた。

○職種経験年数【図5−10】
 今回の集計では、職種経験3年の発生頻度が少ない。該当する件数そのものが少ないことから、たんなる変動の可能性もある。

○発生要因・詳細【図5−12、表5−1】
 発生要因として確認、心理的条件、勤務条件をあげるものが相変わらず多かった。

○影響度【図5−13】
 「間違いが実施」が61件(58%)となっており、実施前に発見したが実施されていれば患者への影響は大きい(生命に影響)と思われた事例が14件(13%)もあった。


6)療養上の世話等
○発生曜日、発生時間帯【図6−2、図6−3】
 曜日、時間帯による発生頻度の差が小さく、週末や夜間でも発生のリスクはあまり変わらない。

○患者の性別【図6−5】
 男性1543件(54%)、女性1176件(42%)となっており、男性のほうがやや多く発生している。

○患者の年齢【図6−6】
 前回と同様、71-80歳代にピークがあった。

○患者の心身状態【図6−7】
 「歩行障害」「下肢障害」を有する患者による発生が多く、転倒・転落のアセスメントなど十分な対策が求められる。

○発見者【図6−8】
 1520件(54%)は「当事者本人」が発見している。また、「患者本人」、「家族・付き添い」、「他患者」が発見するケースは合計513件(18%)発生している。

○発生要因・詳細【図6−12、表6−1】
 発生要因として「患者・家族への説明」を報告する事例が799例あり、十分な説明と患者の理解促進が期待される。

○影響度【図6−13】
 間違いが実施されたケースが2306例(82%)あり、未然の防止がなされにくい。

以上



第11回全般コード化情報集計結果
図表目次

1)全事例(PDF:121KB)
  図1−1.発生月(全事例)
図1−2.発生曜日(全事例)
図1−3.発生時間帯(全事例)
図1−4.発生場所(全事例)
図1−5.患者の性別(全事例)
図1−6.患者の年齢(全事例)
図1−7.患者の心身状態(全事例)
図1−8.発見者(全事例)
図1−9.当事者の職種(全事例)
図1−10.職種経験年数(全事例)
図1−11.部署配属年数(全事例)
図1−12.発生場面(全事例)
図1−13.発生要因(全事例)
表1−1.発生要因・詳細(全事例)
図1−14.影響度(全事例)
表1−2.当事者の職種×発見者(全事例)
表1−3.当事者の職種×発生場面(全事例)
表1−4.当事者の職種×発生場面(全事例)(続き)
表1−5.当事者の職種×発生要因(全事例)
表1−6.当事者の職種×発生要因(全事例)(続き)
表1−7.発生場面×発生要因(全事例)
表1−8.発生場面×影響度(全事例)

2)処方・与薬(PDF:84KB)
  図2−1.発生月(処方・与薬)
図2−2.発生曜日(処方・与薬)
図2−3.発生時間帯(処方・与薬)
図2−4.発生場所(処方・与薬)
図2−5.患者の性別(処方・与薬)
図2−6.患者の年齢(処方・与薬)
図2−7.患者の心身状態(処方・与薬)
図2−8.発見者(処方・与薬)
図2−9.当事者の職種(処方・与薬)
図2−10.職種経験年数(処方・与薬)
図2−11.部署配属年数(処方・与薬)
図2−12.発生要因(処方・与薬)
表2−1.発生要因・詳細(処方・与薬)
図2−13.影響度(処方・与薬)
表2−2.当事者職種×発生要因(処方・与薬)
表2−3.発生場面×発生内容(処方・与薬)

3)ドレーン・チューブ類の使用・管理(PDF:86KB)
  図3−1.発生月(ドレーン・チューブ)
図3−2.発生曜日(ドレーン・チューブ)
図3−3.発生時間帯(ドレーン・チューブ)
図3−4.発生場所(ドレーン・チューブ)
図3−5.患者の性別(ドレーン・チューブ)
図3−6.患者の年齢(ドレーン・チューブ)
図3−7.患者の心身状態(ドレーン・チューブ)
図3−8.発見者(ドレーン・チューブ)
図3−9.当事者の職種(ドレーン・チューブ)
図3−10.職種経験年数(ドレーン・チューブ)
図3−11.部署配属年数(ドレーン・チューブ)
図3−12.発生要因(ドレーン・チューブ)
表3−1.発生要因・詳細(ドレーン・チューブ)
図3−13.影響度(ドレーン・チューブ)
表3−2.当事者職種×発生要因(ドレーン・チューブ)
表3−3.発生場面×発生内容(ドレーン・チューブ)

4)医療機器の使用・管理(PDF:85KB)
  図4−1.発生月(医療機器)
図4−2.発生曜日(医療機器)
図4−3.発生時間帯(医療機器)
図4−4.発生場所(医療機器)
図4−5.患者の性別(医療機器)
図4−6.患者の年齢(医療機器)
図4−7.患者の心身状態(医療機器)
図4−8.発見者(医療機器)
図4−9.当事者の職種(医療機器)
図4−10.職種経験年数(医療機器)
図4−11.部署配属年数(医療機器)
図4−12.発生要因(医療機器)
表4−1.発生要因・詳細(医療機器)
図4−13.影響度(医療機器)
表4−2.当事者職種×発生要因(医療機器)
表4−3.発生場面×発生内容(医療機器)

5)輸血(PDF:78KB)
  図5−1.発生月(輸血)
図5−2.発生曜日(輸血)
図5−3.発生時間帯(輸血)
図5−4.発生場所(輸血)
図5−5.患者の性別(輸血)
図5−6.患者の年齢(輸血)
図5−7.患者の心身状態(輸血)
図5−8.発見者(輸血)
図5−9.当事者の職種(輸血)
図5−10.職種経験年数(輸血)
図5−11.部署配属年数(輸血)
図5−12.発生要因(輸血)
表5−1.発生要因・詳細(輸血)
図5−13.影響度(輸血)
表5−2.当事者職種×発生要因(輸血)
表5−3.発生場面×発生内容(輸血)

6)療養上の世話等(PDF:87KB)
  図6−1.発生月(療養上の世話等)
図6−2.発生曜日(療養上の世話等)
図6−3.発生時間帯(療養上の世話等)
図6−4.発生場所(療養上の世話等)
図6−5.患者の性別(療養上の世話等)
図6−6.患者の年齢(療養上の世話等)
図6−7.患者の心身状態(療養上の世話等)
図6−8.発見者(療養上の世話等)
図6−9.当事者の職種(療養上の世話等)
図6−10.職種経験年数(療養上の世話等)
図6−11.部署配属年数(療養上の世話等)
図6−12.発生要因(療養上の世話等)
表6−1.発生要因・詳細(療養上の世話等)
図6−13.影響度(療養上の世話等)
表6−2.当事者職種×発生要因(療養上の世話等)
表6−3.発生場面×発生内容(療養上の世話等)



全般コード化情報検討班・名簿


金井 昌子  国立病院機構長野病院 地域医療連携室 主任

戸塚 智子  (財)国際医学情報センター 研究員

橋本 廸生  横浜市立大学医学部医療安全管理学講座 教授

長谷川 友紀  東邦大学医学部公衆衛生学講座 助教授

武藤 正樹  国立病院機構長野病院 副院長

山内 豊明  名古屋大学医学部基礎看護学講座 教授

山本 実佳  東海大学医学部付属病院 診療情報管理課 副主事


(敬称略・五十音順)
 ◎は班長



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