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アフターサービス推進室活動報告書(Vol.15:2014年3月〜6月)平成26年6月30日

I 調査結果報告

1 調査結果報告

 厚生労働省の制度・事業において、アフターサービス推進室として改善が可能と思われるものについて、「国民の皆様の声」、現場視察及び当該制度・事業に関する情報収集をもとに調査・分析しましたので、以下のとおり報告します。

番号 案件名 概要
訪問看護ステーションの事業運営に関する調査 訪問看護ステーションの事業運営上の問題点について事業運営者および関係自治体等からのヒアリングを通じて調査・分析する。

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2 訪問看護ステーションの事業運営に関する調査

(1)調査目的

 内閣府「平成25年版高齢社会白書」によると、わが国の高齢化率(65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合)は、2012年の24.1%から2035年には33.4%に上昇すると推計されている。
 こうした中、医療技術の進歩や平均在院日数の短縮化により、高齢者層を中心に医療ケアを必要とする在宅療養者の数は、今後、大幅な増加が見込まれる。また、国民の7割が「自宅で介護を受けたい」と希望しており(平成22年:「介護保険制度に関する国民の皆さまからのご意見募集」厚生労働省老健局調査)、訪問看護ステーション(注1)の果たすべき役割は、ますます増大するものと思われる。
 本調査は、訪問看護ステーションが「日常的な在宅医療ケア」を安定的かつ持続的に提供し得るため、訪問看護ステーションにおける現状を事業運営という観点からヒアリングを通じて調査し、今後の施策に資することをその目的としている。

  1. 注1:訪問看護とは、居宅要介護者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る。)について、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助をいう(介護保険法第8条第4項)。

(2)調査の概要

1)調査の視点

 国民に「日常的な在宅医療ケア」を安定的かつ持続的に提供するためには、訪問看護ステーション自体の運営が健全でなければならない。訪問看護は、個別訪問しつつきめ細かな対応をする必要があることから、事業としての効率性を追求し難いサービスと言えるが、各訪問看護ステーションでは、人的な体制(看護師等の人数、特に24時間対応体制など)と看護サービスの質(習熟度や対応可能な疾患の種類など)の両面での充実に取り組んでいる。本調査では、今後の制度改善に資するため、事業関係者の皆様から日々の事業運営上の問題点や気付き事項等についてヒアリング調査を行った。

2)考察対象とした訪問看護ステーション

 「医療法人」「営利法人(会社)」「社団・財団法人」など、開設主体によって訪問看護ステーションの経営上の特性が異なっていることから、各々にヒアリングを行い、考察の対象とした。また、近年、一部の訪問看護ステーションで「理学療法士(PT)」「作業療法士(OT)」「言語聴覚士(ST)」といった人材を活用し、リハビリテーション(注2)を積極的に展開しているが、本調査では、規模の小さな訪問看護ステーションが比較的多いことに鑑み、「訪問看護重視型」に焦点を当てている。

  1. 注2:介護保険法にもとづく訪問リハビリテーション事業所の指定を受けられるのは、病院、診療所、介護老人保健施設に限られている。訪問看護ステーションからは訪問看護の一環として、理学療法士等による訪問が可能である。介護報酬上いずれのサービスにおいても、リハビリテーションは1日2回(20分×2回=40分)まで、1週間に6回(120分)までが算定可能である。

(3)訪問した訪問看護ステーション及び関連団体

 本ヒアリング調査にご協力いただいた訪問看護ステーション等は、地域及び規模のバランスを勘案して選択し、ヒアリングに同意した計55団体である。なお、これらの団体は全国の訪問看護ステーション及び関連団体を代表するものではない。

(4)現状を踏まえたアフターサービス推進室の意見等

 訪問看護ステーション、看護協会、関係する地方自治体からのヒアリングを通じて得られた現状を整理すると下表左欄のとおりであり、これに対するアフターサービス推進室の意見等を同表右欄に掲載した。

番号 現状(背景・経緯) アフターサービス推進室の意見等
1 多くの小規模な訪問看護ステーションは資金調達力が弱く、事業の健全な経営の阻害要因の一つとなっている。 資金調達先としては、「日本政策金融公庫」や「独立行政法人福祉医療機構」といった公的な融資制度が利用可能であるものの、必ずしも管理者や開設者に認知されていないことから、今後は、資金調達先の一つとして、これらを検討することが考えられる。
2 訪問看護の業務にスケール・メリットは期待できないことから、訪問看護ステーションの規模が大きくなると、管理業務が増える。管理業務に対する報酬は無いので、管理者も自ら訪問看護を続けざるを得ず、業務量が過剰になるケースがある。 規模の拡大にともない、ITシステム(モバイル端末等)の活用により、訪問先での記録入力や管理者の即時閲覧等を可能にし、利用者管理や看護職員のスケジュール管理等の業務の効率化を図ることが、管理者の確保・定着化策として考えられる。
3 経営コンサルタント、税理士等、専門のアドバイザーを常時活用している訪問看護ステーションは殆ど無いが、小規模な訪問看護ステーションが単独でアドバイザーを雇うのは難しい。 訪問看護ステーション連絡協議会等で良い人材を選定のうえ登録し、情報共有してはどうか。
4 都道府県における訪問看護事業所数には、地域間格差がみられるが、利用者ニーズの多寡や分布、交通インフラの整備状況など様々な要因を勘案のうえ、一歩一歩、地域に合った改善策を粘り強く積み上げて行く必要がある。 立地による移動時間の不便さを補償する報酬、利用者密度の低さを補償する報酬などを更に強化し、訪問看護ステーションの供給バランスの見直しを促してはどうか。また、小規模あるいは過疎地の訪問看護ステーションの移動手段(使用車両)確保に関して、必要に応じ国や都道府県が経済的に支援してはどうか。
5 多様な利用者ニーズに自事業所内で的確に対応しようとすると、事業規模の拡大や多角化を図る必要性が強まってくる。多角的に事業を展開させるためには、相応の経営ノウハウが不可欠であり、専門的な見地からのサポートが必要と思われる。 従来から実施していた訪問看護ステーション内の管理業務を中心とした研修に加え、事業規模の拡大や多角化等に成功している訪問看護ステーションから管理者(OBを含む)をアドバイザーとして選任するなどして、事業の多角化等の具体的な経営方策について、実践的な助言や研修会等を行うことが有効と考えられる。

3 まとめ

 訪問看護サービスは、今後、利用者数の大幅な増加が見込まれているにもかかわらず、利用者が地域に限定されるうえ人手を要し効率が悪いなど、事業展開に当たっての制約要因を指摘できる。
 しかしながら、今回のヒアリング調査を通じ、それらの制約要因を打ち破って「地域の拠り所」としての役割を発展的に果たしている訪問看護ステーションが、多くみられた。今後とも、各地域における在宅医療の核としての活躍が期待されるところである。
 今回の調査にご協力いただいた訪問看護ステーションの事業関係者の皆様に改めて感謝申し上げる。本格的な高齢化社会が到来する中、より良い訪問看護ステーションの事業運営が行われるよう、厚生労働省としても引き続き努力するとともに、関係者の皆様に、本報告書が参考となれば幸いである。
 なお、「各項目(テーマ毎)の調査詳細」については本文別添1( PDF:658KB)に、また、今回のヒアリング調査で収集した「関係者からの主なご意見等一覧表」を本文別添2( PDF:360KB)に付した。

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II 過去の活動報告

 アフターサービス推進活動にかかるこれまでの報告書のリンク先は以下のとおりです。

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