【特集】働きながら育児・介護を両立

働きながら育児・介護を両立

前編

“働き続けられる職場”を考える

特集
2026.09.10

共働き・共育てが当たり前になりつつある一方で、育児や介護を抱えながら働き続けることの難しさは、今も多くの人の前にあります。令和7年(2025年)に段階的に施行された改正育児・介護休業法では、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充や男性の育児休業取得促進、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等が盛り込まれました。特集の前編では、制度改正のねらいと、その先にある“働き続けられる職場”の考え方についてご案内します。

なぜ今、「育児・介護との両立」なのか

女性が第一子を出産した後も働き続けている割合は上昇傾向であり、いま約7割まで高まっています。男性の育児休業取得率も伸び、社会全体が「共働き・共育て」へと向かっています。

ただ、変化の途上であることも確かです。政府の調査では、妻が家事関連にあてる時間は、夫のおよそ3.4倍となっています。いま、焦点は育児に「夫が関わるかどうか」から、「夫婦ふたりでどのように関わるか」へと移り始めています。

仕事と育児、広がる両立のかたち 仕事と育児、広がる両立のかたち

介護の状況は、さらに切実です。高齢化が進み、生産年齢人口が減るなかで、働きながら介護に直面する人は増え続けています。介護を理由に離職した人は、直近の調査で10.6万人にのぼり、前回調査からやや増加しています。離職せずに家族を介護しながら働く人も、この10年で約70万人増え、約365万人にのぼります。誰もが仕事と介護の両立に直面しうる。そんな時代の入り口にいま立っているのです。

育児・介護休業法、改正の3つの柱

こうした変化を受けて、育児・介護休業法が改正されました。そのポイントは、大きく3つの柱に整理できます。

第一の柱は、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充です。病気やけがの子を看護するための休暇は、「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」へと名称が改められ、取得できる理由には感染症に伴う学級閉鎖や、入園(入学)式、卒園式などが加わり、対象となる子の範囲も、小学校就学前から小学校3年生修了までに広がりました。

あわせて、3歳から小学校就学前の子を育てる労働者に向けて、新たな仕組みが設けられています。事業主は、始業時刻等の変更やテレワーク、短時間勤務など、法律で定められた選択肢の中から2つ以上の制度を選択して措置する必要があります。対象となる労働者は、その中から希望する措置を1つ選んで利用できます。また、事業主には、対象となる労働者に制度を個別に周知し、利用の意向を確認することが義務づけられました。子どもの成長に応じて、短時間勤務だけでなく、フルタイム勤務を続けながら育児とキャリアを両立したいというニーズが高まっていることが背景にあります。

第二の柱は、男性の育児休業取得の促進です。男性の育児休業取得率を公表する義務の対象が、これまでの常時雇用する労働者が1,000人超の企業から、300人超の企業へと広げられました。男性の育児休業取得率は近年上昇していますが、引き続き、男性も含めて、本人の希望する期間、育児休業を取得できる職場づくりを後押ししていきます。

第三の柱は、介護離職を防ぐための仕事と介護の両立支援制度の強化です。介護休業や介護休暇などを利用しやすくするため、相談窓口の設置や研修の実施といった雇用環境の整備が事業主に義務づけられました。また、事業主は介護に直面した労働者に対して、両立支援制度等に関する事項を個別に周知し、制度利用の意向を確認することも求められています。これは、制度を必要に応じ確実に使っていただくための改正です。自身の介護を取り巻く状況については、当事者も周囲に言い出しづらく、企業における制度の取得状況も伸び悩んでいたため、企業側から労働者にアプローチをかけて欲しいといった狙いがあります。

令和6年改正 育児・介護休業法3つの柱 令和6年改正 育児・介護休業法3つの柱

“制度がある”だけでは、解決しない

もっとも、制度が整ったからといって利用率が向上するとは限りません。育児休業を取得しなかった理由を尋ねた調査では、とくに男性から「収入を減らしたくなかった」「職場の雰囲気が取得しづらかった」「職場の理解がなかった」という声が多く挙がりました。制度の枠組みだけでは越えられない壁が、なお残っています。

そこで動き出したのが、金銭面の後押しです。令和7年(2025年)4月からは、原則として、子の出生直後の一定期間に夫婦がともに14日以上の育児休業を取得した場合、最大28日間、既存の育児休業給付に給付金が上乗せされる「出生後休業支援給付」が始まりました。通常の育児休業給付の給付率は、休業開始前賃金の67%です。育児休業中は社会保険料が免除され、給付金が非課税であることから、手取りでは休業前の約8割に相当します。出生後休業支援給付が上乗せされる期間は、給付率が合計80%となり、手取りでは休業前の10割相当になります。

また、問題の根っこには、育児休業を取得した人の仕事を誰かが担い、周囲の労働者の負担が増えるという問題もあります。こうした職場の負担を軽減し、育児休業を取得しやすい環境を整えるための支援策の一つが、両立支援等助成金です。令和6年(2024年)1月に新設された「育休中等業務代替支援コース」では、育児休業取得者等の業務を代替する周囲の労働者に手当を支給したり、代替要員を新たに雇用したりした場合に、一定額を助成しています。

両立支援は、特別な人のためだけではない

育児や介護は、人生のどこかで誰もが当事者になりうるテーマです。そして当事者だけでなく、その周囲で働く人たちにも影響は及びます。とりわけ介護との両立は、これからさらに身近になっていくでしょう。

だからこそ、意識の連鎖が鍵を握ります。身近な誰かが育児休業や介護休業を取れば、自分も将来、同じようなシュチュエーションとなる時がくるのではないか、という気づきが周囲に広がる。そうした認識の広がりが、育児や介護に限らず、誰もが仕事と生活を両立できる職場風土を育てていく。そんな循環が生まれることが望まれています。

仕事と育児の両立に関する意識そのものを推進する試みも始まっています。育児休業の取得促進を後押しする様々な政策や企業による積極的な取組の推進、若い世代の方々の意識の変化などもあり、男性の育児休業取得率はこの数年で大きく向上しました。ただ、育児休業を取るだけでは、復帰後の家事や育児の分担、働き方までは変わらないという課題も見えてきました。

そこから一歩進めるために始まったのが、令和7年(2025年)7月にリニューアルした「共育(トモイク)プロジェクト」です。「共に育てる」を掲げ、男性の育児参画にとどまらず、家事・育児の分担や育児休業からの復帰後の働き方まで、社会全体で考えていく取組です。夫婦やパートナーどうしで話し合いながら家事・育児の役割を整理できる「トモイクシート」や、従業員が安心して仕事と育児を両立できる環境づくりのために、従業員やそのパートナーなどを対象に企業が主体となって実施する学びの場である「企業版両親学級」の教材や動画、その他研修資料などが用意されています。子育てとの両立を夫婦だけの問題とせず、企業を含む社会全体で支えていこうという考え方が、その根底にあります。

“働き続けられる社会”に向けて

両立の難しさは、さまざまな社会状況から生まれるものです。個人だけで解決できる問題ではないため「自分の頑張りが足りない」と抱え込まず、職場や地域など周囲に相談したり、頼ったりしてもいいのです。

私たちが目指すのは、仕事と子育て・介護の「どちらかを我慢する」のではなく、その時々の状況や家庭に合った形を選んでいける社会です。家庭の状況に応じて働き方を選べることが当たり前になるように、これからも取組を続けていきます。まずは相談できる職場をつくること。その一歩が、仕事と育児・介護を両立しやすい職場づくりにつながります。

まとめ

育児も介護も、いつか自分の、あるいは隣で働く誰かの現実になります。制度は整いつつありますが、それを生かすのは、休みを支え合える職場の空気です。頑張りを一人で抱え込まない。頼ることをためらわない。後編では、その考え方を実際の職場で形にしている企業の現場を訪ねます。

◾️もっと知りたい方へ

- 育児・介護休業法について:育児・介護休業法について|厚生労働省

- トモイクプロジェクトについて:共育(トモイク)プロジェクトのご案内|厚生労働省