自分らしく生きるための「人生会議」

映画『お終活3 幸春! 人生メモリーズ』主演の俳優、高畑淳子さん

自分らしく生きるための「人生会議」

前編

始めてみませんか? 人生会議

特集
2026.06.01

「人生会議」という言葉を知っていますか。聞き慣れない方も多いかもしれませんが、人生はいつ、何が起こるかわかりません。いざというときに自分が望む医療・ケアや生活の選択ができるよう、大切な人と前もって話し合っておく取り組みです。人生会議の方法や話し合う内容に正解はなく、繰り返し話し合うプロセスが重要となります。前編では、その基本的な考え方と始め方を紹介。映画『お終活3 幸春! 人生メモリーズ』(全国公開中)主演の俳優、高畑淳子さんのご自身の実践とあわせてお届けします。

人生会議とは?

人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)とは、自分が大切にしていることや望む生き方、そして「もしものとき」にどのような医療やケアを受けたいかについて、前もって考え、話し合っておく取り組みです。

よく混同されるのが「終活」との違いです。終活とは、遺言の作成や財産整理など、人生の締めくくりに向けた準備を指します。手続き的な側面が中心となる終活に対し、人生会議はあくまでも「話し合いのプロセス」です。人生の最終段階の者だけを対象にしたものではなく、事故や急病など、誰にでも、いつでも起こりうる「もしものとき」全般を見据えています。

話し合う相手は、必ずしも家族である必要はありません。親族や血縁に限らず、信頼できる友人など自分にとって大切な人すべてが含まれます。また、受ける医療やケアに関して十分な情報と説明を得るために、医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームとの話し合いも重要になります。厚生労働省ではこうした人たちを「家族等」と呼び、本人の価値観や希望をともに共有する存在として位置づけています。人生会議の基本的な考え方や進め方は、厚生労働省のサイトでも確認できます。

自分らしく生きるための「人生会議」ポータルサイト 自分らしく生きるための「人生会議」ポータルサイト

厚生労働省:自分らしく生きるための「人生会議」ポータルサイト

人生会議は、一度話し合えば完了するものではありません。年齢や経験、心身の状態の変化に応じて、大切にしたいことや望む生き方は変わっていくものです。だからこそ、状況に応じて繰り返し対話を重ねていくプロセスそのものが、人生会議の本質といえます。

「一度決めたら、それが絶対になってしまうのでは」「決めきれない」「迷っている」——そんな心配から話し合いに踏み出せない方もいるかもしれません。しかし、そのような気持ちも立派な意思の表れです。意思は揺れてよく、変わってよい。そのような前提に立つことで、人生会議はぐっと身近なものになります。

今日からできる4つのステップ

厚生労働省が推進する人生会議には、始め方の目安となる4つのステップがあります。

人生会議とは? 人生会議とは

01 あなたが大切にしていることは何ですか

まず自分自身の価値観を見つめることから始めます。「最期は自宅で過ごしたい」「食べることが好きだから、口から食べることだけは最後まで続けたい」。医療やケアに限らず、日常の中で大切にしていることが、よい手がかりになります。正解はありません。思いつくことを、自分の言葉で考えてみることが第一歩です。

02 あなたが信頼できる人は誰ですか

自分の思いを共有したい相手を思い浮かべます。家族や友人、長年通っているかかりつけ医など、誰でも構いません。「この人になら話せる」と感じる存在が、人生会議の対話の相手になります。

03 信頼できる人や医療・ケアチームと話してみましょう

改まった「会議」を開く必要はありません。テレビに長い白浜のビーチが映ったとき、「こんな海の近くで最期を迎えるのもいいな」とつぶやく——そんな何気ない一言も、人生会議の始まりになり得ます。毎年の健康診断の結果を手に取ったとき、病気や入院をきっかけになど、そうした節目に医療・介護従事者を交えてより具体的に話し合うこともできます。

04 話し合った内容を伝えましょう

話し合った内容を書き留めておくことで、本人の意思が確認できなくなったときにも、家族や医療・ケアチーム等が「その人らしい選択」を支える拠り所になります。「あのとき言っていたな」という記憶だけでなく、書き残しておくことで本人の意思として確かに機能します。公式な書式は不要で、ノートへのメモやスマートフォンへの入力でも構いません。

そして、このサイクルを繰り返します。「何度でも繰り返し考え、話し合いましょう」。それが人生会議の本質です。

「話しにくさ」をほどく――高畑淳子さんが実践する人生会議

「縁起でもない」「どう切り出せばいいかわからない」。人生会議には、こうした心理的なハードルがあります。しかし近年、自分の最期や人生の最終段階について考えることへの意識は、少しずつ変わってきています。

最近、健康や高齢化といった社会課題をテーマにした映画やドラマも増え、そうした作品を家族と一緒に観て「もし自分だったら」と語り合うことも、人生会議への自然な入口になります。そうした対話は自分のためだけでなく、大切な家族や周囲の人たちのためにもなるものです。

全国公開中の映画『お終活3 幸春!人生メモリーズ』は、笑って、泣けて、役に立つ『お終活』シリーズ第3弾です。本シリーズの中心となる大原家では、真一(橋爪功)、千賀子(高畑淳子)夫妻の長女・亜矢(剛力彩芽)の結婚を控えるなか、認知症の母・豊子(三田佳子)を抱える加藤博(小日向文世)との交流を通じて、老いと向き合いながら家族の絆を問い直す物語です。笑いと涙で「人生をどう生きるか」を問いかけます。主人公・大原千賀子を演じる高畑淳子さんに、ご自身の「人生会議」にまつわる体験をお聞きしました。

(C)2026「お終活 3」製作委員会

高畑さんは30代の頃から、残された家族が困らないよう、必要な情報を整理してノートに記してきたといいます。「悲しいけれど、いつかは必ず、その日が来ます。後に残る人たちが困らないよう、整理するようになりました」と話します。保険や預貯金の情報をまとめ、専門家にも相談して手続きを整えた今、「やることをやっていないときよりも、気持ちがずいぶん違います」と振り返ります。

家族との対話のきっかけになったのは、お母様の施設入所に関する経験でした。「健康オタクな母はどこで過ごしたいのか」あらかじめ話し合いをしておくことの重要性を認識し、自身も普段から家族と話し合いをするようになりました。

オープンに話せるタイミングでの対話の大切さを語る高畑さん オープンに話せるタイミングでの対話の大切さを語る高畑さん

穏やかに、オープンに話せるタイミングでの対話の大切さを語る高畑さん。スタイリング:森美幸(監物事務所)/ヘアメイク:松田美穂(Allure)

映画を観た後、家族と感想を語り合う中で、自然と「もし自分だったら」という会話が生まれることもあります。「『お母さんと一緒に観たから話せた』……ということになれば嬉しいですね。いざとなるとなかなか切り出せないものですから」と高畑さんは語ります。

最後に、ご自身がこれまで大切にしてきた価値観を「気負わず、心を開いていくこと。閉じないということが、今も私の大きなテーマです」と打ち明けてくださいました。自分の心を開いて、大切な人と分かち合う。その姿勢は、人生会議が大切にする対話のあり方とも重なります。

小さな対話から、始めてみる

「家族にふとした瞬間に聞いてみる」「自分の気持ちをメモする」。人生会議を始めるのに、特別な準備は必要ありません。

自分がどんなことを大切にしているか。どんな生き方をしたいか。誰に思いを伝えたいか。そうした問いに向き合うことは、遠い未来への備えであると同時に、「今を安心して生きるための対話」でもあります。

厚生労働省の人生会議ポータルサイトでは、進め方の参考情報や各地域の取り組みを紹介しています。まずは、身近な人とのちょっとした会話から。「自分らしく生きる」への第一歩は、そこから始まります。




『お終活3 幸春! 人生メモリーズ』
新宿ピカデリー、イオンシネマ他にて全国公開中


配給:イオンエンターテイメント
企画・製作プロダクション:フレッシュハーツ
©2026『お終活3』製作委員会
出演︓⾼畑淳⼦・剛⼒彩芽 松下由樹 ⽔野勝・⻄村まさ彦
藤吉久美⼦ LiLiCo / 三⽥佳⼦ / 勝俣州和 彦摩呂 袴⽥吉彦
藤原紀⾹・⽯橋蓮司 ⼩⽇向⽂世・橋⽖功
作・監督:⾹⽉秀之 主題歌:さだまさし「神さまの⾔うとおり」(ビクターエンタテインメント)