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働き方改革に関する
セミナー情報
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令和4年度
セミナー開催レポート

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ITエンジニアのワーク・エンゲージメント向上を志向する働き方改革推進セミナー
- オンラインセミナー概要 -

開催日 2023年3月7日(火) 15:00~16:30
主催 厚生労働省
会場 Zoomによるウェビナー形式 (ライブ配信)
参加者数 65名
講演者 【キーノート】
下田 健人氏(麗澤大学経済学部教授)
梶 功夫氏(宮城大学名誉教授)
川副 智行氏(崇城大学総合教育センター教授)
【パネルディスカッション】
今野 浩一郎氏(学習院大学名誉教授、学習院さくらアカデミー長)
伊藤 正則氏(株式会社エスクルー 代表取締役社長)
岡園 勇治氏(株式会社SYSKEN 執行役員経営企画部長)
山本 直毅氏(キリンビジネスシステム株式会社 経営管理部人事総務グループ)
※登壇者の所属、役職は2023年3月時点のものです。
2023年3月7日、厚生労働省委託事業「令和4年度IT業界の働き方改革サポート事業」(以下、本事業)の一環として、「ITエンジニアのワーク・エンゲージメント向上を志向する働き方改革推進セミナー」と題したオンラインセミナーを開催しました。
キーノートでは、IT業界におけるワーク・エンゲージメント(Work Engagement(以下、WE))の実態調査等からITエンジニアの働き方に関する問題提起やこれからの働き方を考察しました。
また、パネルディスカッションでは、企業における具体的な取組事例を交え、ITエンジニアのWEの向上について議論しました。
当日は企業で働き方改革を実践する企業経営者・担当者の方や、プロジェクトの管理者・責任者の方などを中心にご参加いただきました。

キーノート

IT業界におけるワーク・エンゲージメントの実態

本事業では、IT業界の働き方改革の推進のため、学識経験者、業界団体、労使団体からなる検討委員会を設置し、これからのIT業界全体の働き方モデルについて、検討を行いました。
また、地域の特性・実情を踏まえた働き方改革を推進するため、宮城県・熊本県で学識経験者、受発注者、業界団体等からなるワーキンググループを設置し、地域として目指す働き方の実現に向けて、活動しました。
最初に、検討委員会を代表し「IT企業における働き方改革-ワーク・エンゲージメントと創造的協働」として、検討委員会で実施したアンケート調査とインタビュー調査を基に、IT企業が競争力を高めるために働き方の観点からどのような取組が求められるのか、麗澤大学教授 下田氏から説明がありました。
キーノート検討委員会
本年度の検討委員会では、ITエンジニアのWEの実態を把握し、WEを高めるための働き方を検討するために、WEと、創造的協働(Creative Collaboration(以下、CC))に焦点を当てたアンケート調査とインタビュー調査を行った。
新型コロナウイルス感染症により、IT業界ではテレワークが急速に進んだ。
このような働き方の変化は不可逆的であり、新しい枠組みの中でWEをいかに高めるかは喫緊の課題である。
現状をアンケート調査でみると、他職種に比べ、ITエンジニアのWEスコアは、低い。
IT系職種の中でさらに職種別にみると、WE、CCともに、「コンサルタント」「ITアーキテクト」「プロジェクトマネジメント」のスコアは高く、「開発」「カスタマーサービス」「オペレーション・運用管理」のスコアは低い。WEは個人の意欲、CCは組織的な価値創出であり、これらは相互に影響するものであると考える。
WEとCCの双方を高めることがITエンジニアの今後の働き方のポイントであり、個人/会社の利益につながるものである。
これらを踏まえ、WE、CCの向上に効果的と思われる施策を明らかにするため、インタビュー調査を行ったところ、知見が得られたので、WECCを高める10の提言をしたい。
WEでは、
1.会社と社員の距離を縮めよう(社員が直接社長と話せる機会、タウンホール・ミーティング等)
2.生活スタイルの多様性を認めよう(働く時間・場所の自由化)
3.多様なキャリアを後押ししよう (ポスティング制度、副業・兼業等)
4.社員の声を活かそう(エンゲージメント・サーベイ、1on1ミーティング)
5.互いが認め合う組織風土を作ろう(サンクスカード、相互評価制度等)
CCでは、
6.共創を会社の方針に組み込もう(共創の必要性に関する経営者からの発信等)
7.多様性を活かす組織風土を作ろう(様々な専門性を持った社員同士のコラボレーションの促進・奨励)
8.コラボレーションを促す環境を整えよう(リモートワークツール導入、共創スペースの設置等)
9.協働によるチャレンジ機会を作ろう(ITエンジニアとしてのプライドを喚起する機会、ビジネスコンテスト等)
10.組織の壁を越えた交流を生み出そう(他部署のプロジェクト参画等)
であり、能動的に実践することが必要と考えている。
次に、宮城のワーキンググループを代表し、宮城におけるWEの実態について、宮城大学名誉教授 梶 功夫氏から説明がありました。
キーノート宮城ワーキンググループ
宮城では、ICT業界の採用力向上と人材確保・育成が課題となっており、今回は宮城県情報サービス産業協会の加盟企業を対象に、意識調査を行い、結果を徹底分析することにより、IT業界の働き方改革による人材確保に資することを目的とした。
結果としては、会社の実施する施策と社員が重要と考える施策は必ずしも一致しない、仕事の「やりがい」はお客様らの感謝・認められた時が断然TOP、「価値観」「やりがい」「活力・熱意・集中度」の相関はないに等しい、等が得られた。
分析結果を会員企業にフィードバックすることにより、自社の施策の点検、社員数、職種、男女比、年齢構成と照らし合わせて重点を置くべきWE施策の計画、人材の育成、流出防止の施策、人材募集時の自社PRなどに活用していただきたいと考えている。
最後に、熊本のワーキンググループを代表し「IT業界におけるワーク・エンゲージメントの実態~熊本WGの取り組み「脱コンサバ的な思考」」と題し、熊本におけるWEの実態について、崇城大学総合教育センター教授 川副 智行氏から説明がありました。
キーノート熊本ワーキンググループ
熊本では、20・30代(非管理職)においてWEが低いことが課題であり、「ここでいいや」「このままずっと」といった意識(コンサバ的な思考)を改善すべく、マインドセットの研修を行った。
その結果、コンサバ的な思考の改善が、WEを高める可能性が高いことが判明した。
改善策として、入社後の数年間においてWEを高めるようなワークスタイルを確立させるようなサポートや、コンサバ的な思考の人々が共感できるロールモデルが必要であると考える。
今後は、熊本県や熊本県情報サービス産業協会と連携しながら、有効な研修などを模索・実践していき、熊本県のIT企業のWEを高め、従業員のやりがい・働きがいの向上を目指していく。

パネルディスカッション

ITエンジニアのワーク・エンゲージメント向上を志向する

「ITエンジニアのワーク・エンゲージメント向上を志向する」をテーマに学習院大学名誉教授今野浩一郎氏をファシリテータとして、パネリストには株式会社エスクルーの伊藤正則氏、株式会社SYSKENの岡園勇治氏、キリンビジネスシステム株式会社の山本直毅氏を迎えディスカッションが行われました。
パネルディスカッション
今野氏:
創造的協働という考え方について、どのように考えているか。
伊藤氏:
必要なベクトルと思うが、どうやってそれを実現するかを考えなくてはならない。
岡園氏:
弊社では、みんなで参加、みんなで創造、みんなで成果という3S活動が根付いていて組織横断的にやっていくことが大事。
山本氏:
非常に大切な考え方だと思っている。
ここ2,3年でもっと良い提案がないか、DXというところでITが起爆剤となって新しい価値を作っていくことを求められ、難しさを感じている。
今野氏:
現状をどう考えるか。検討委員会の調査では、ITエンジニアのWEは低いという結果がでたが、実感としてはどうか。
岡園氏:
客先や出先で働く場合が多く、絆が持ちにくい、孤立しがちかなと感じている。
山本氏:
プロジェクトが走る状況の中で、多忙を極め、超勤が続いている状況やワーク・ライフ・バランスがとりにくい状況が他業種と比べてある。
伊藤氏:
宮城県のIT事業者は、圧倒的に中小企業が多く、WEを上げることにチャレンジする余裕がないこともある。
エンゲージメントは決して低くなく、全業種に関わるため、達成感が得られる職種とそうでない職種(Web系エンターメント系)がある。
今野氏:
WEやCCを高めるためにどういう方向でやったらよいか。
山本氏:
30・40代が、WEが低い傾向にあるので、キャリア研修を行って、今の仕事を続けることによる10年後20年後の姿を示している。
伊藤氏:
仕事に対するWE、会社に対する忠誠心の2つの側面がある。
会社に対するエンゲージメントを高めながらその延長線で仕事に対するWEを高めるのがよい。
個別のコミュニケーションを深め疑心暗鬼にならないよう、社長の給与を含め情報公開をして、一つの方向に進んで機運を高めていくのがよい。
年に3回、飲み会をしながら全員に発表をさせて担当の仕事や、社としての目標を共有している。
岡園氏:
IT業界は会社に対する忠誠心が低い感じはするし、若い人ほど離職=マイナスのイメージを持っていない。
入社5年から10年までに、人材ポートフォリオといういい方をしているが、個々人のCDP(キャリア・ディベロップメント・プログラム)を策定して半期ごとに面談して不安を払拭しているが、お互いを認め合う組織風土を作って一体感を醸成していくのが大事ではないか。
伊藤氏:
弊社では客先常駐をやめて引き上げた。
IT業界は社員がいないと無理なので、社員がやりたい仕事を会社が率先して新規に開拓、創造していかないと、会社として5年後10年後のキャリアが真っ黒になると思っている。
今野氏:
社員がこういう仕事をやりたいと自ら考えるというのは創造的協働に近いと思う。
伊藤氏:
採用にも関わってくると思っていて、もし人が採れない会社があるのであれば、そういうことを考えていかないと立ちいかなくなるのではないか。

参加者アンケート(一部抜粋)

当日のセミナー参加者に対してアンケートを行ったところ、キーノートは9割、パネルディスカッションも約9割の方が参考になった(「大変参考になった」「参考になった」の合算)と回答され、総じて参加者の満足度が高い内容となりました。
キーノートは参考になりましたか
 注:四捨五入の関係で合計が100にならない。
パネルディスカッションは参考になりましたか
また、ワーク・エンゲージメントの向上に取り組んでいる方に内容を聞いたところ、以下の回答がありました。
  • 飲み会・ランチミーティング・日々の声がけ。
  • 福利厚生制度の充実、健康経営の推進、人事賃金制度の見直し等。
  • スキルアップを定期的に行えるよう研修に参加させている。
  • 一般社員のエンゲージメントスコアを出して、人事制度にフィードバックする試みを始めたところ。
  • 社内イベントを通して、技術や会社からのメッセージを発信する場をつくること。
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