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働き方改革に関する
セミナー情報
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令和3年度
セミナー開催レポート

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発注者・受注者で実現するIT業界の働き方改革推進セミナー
~地域IT企業や個人のこれからの働き方
- オンラインセミナー概要 -

開催日 2022年2月14日 (月) 14:00~16:40
主催 厚生労働省
会場 Zoomによるウェビナー形式 (ライブ配信)
参加者数 111名
講演者 【基調講演】
久米 功一氏(東洋大学経済学部 教授)
【事例紹介】
山下 剛志氏(東北インフォメーション・システムズ株式会社 経営管理部 人事労務課長)
田邊 主税氏(九州デジタルソリューションズ株式会社 取締役専務執行役員)
【パネルディスカッション】
山下 剛志氏(東北インフォメーション・システムズ株式会社 経営管理部 人事労務課長)
阿久津 克之氏(東北インフォメーション・システムズ株式会社 開発運用本部 業務管理室副室長)
田邊 主税氏(九州デジタルソリューションズ株式会社 取締役専務執行役員)
梶 功夫氏(宮城大学 名誉教授)
川副 智行氏(崇城大学 総合教育センター教授)
※講演者の所属、役職は2022年2月時点のものです。
2022年2月14日、厚生労働省委託事業「令和3年度IT業界の働き方改革サポート事業」の一環として、「発注者・受注者で実現するIT業界の働き方改革推進セミナー~地域IT企業や個人のこれからの働き方」と題したオンラインセミナーを開催しました。

セミナーでは、個人の多様な働き方が求められる中でモチベーションやエンゲージメントを高めるポイントを紹介したほか、地域企業における働き方改革への取組事例も紹介しました。
また、パネルディスカッションでは、地域における働き方と協働関係の展望などについて議論しました。

企業で働き方改革を実践する企業経営者・担当者の方々にご参加いただきました。

基調講演

個人の多様な働き方の実現に向けて

基調講演では、日本の労働市場変化やそれに伴う個人と組織の関係性の変化、またその変化を踏まえてどのようにワーク・エンゲイジメントを高めていくか、さらに自発的に組織のために動く組織市民行動について久米氏より説明がありました。
基調講演
新型コロナウイルス感染拡大への対応としてテレワークが急速に浸透した中で、能力開発やマネジメントの在り方が大きく変化しています。
テレワーク環境下では、若手社員が上司から対面で指導を受けるOJTの前提が変わってきており、若手社員ほど成長実感を抱きにくくなっています。
不確実性が高く、事業環境の変化の激しい現在、組織主体から個人主体の能力開発へと転換し、迅速にリスキリングする必要性が生じています。
また、従来日本企業では、職場で⾧時間一緒に働くことで意思疎通を図りながら仕事を進める「職場中心の業務遂行体制」が一般的でしたが、職場内の人材や働き方が多様化する中でそうしたマネジメントの前提も変化しています。
そのような中、従業員のポジティブな心理状態や自律的な行動の促進要因を考慮することは不可欠であり、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を示す「ワーク・エンゲイジメント」や自発的に組織のために動く「組織市民行動」に着目した対応策が求められます。
ワーク・エンゲイジメントを高めるには、より高いレベルのスキルを要する仕事、他社とのインタラクションのある仕事、自律的に働ける仕事、適正な人員の確保、適切な仕事のアサインとフィードバック、相談や助言の機会提供等が有効であると考えられます。
組織市民行動の研究は、組織と個人の相互応報的な関係を示唆しており、組織にもの言う人材の活用へ繋げるためには、中途人材の登用や短期的な人材投資、正当な評価、仕事に没頭し過ぎないこと等が有効であると考えられます。

事例紹介

事例紹介

円滑なプロジェクト運営と働き方改革の実現に向けて

事例紹介では、東北インフォメーション・システムズ株式会社の山下氏、九州デジタルソリューションズ株式会社の田邊氏より自社における取組事例の説明がありました。
事例紹介
山下氏:
少⼦⾼齢化社会や⾸都圏への⼈⼝流動の現状から、⼈材の確保、仕事と⽣活との調和を意識した制度改⾰、さらに柔軟な働き方等によるモチベーションの向上や若手社員の活躍促進に取り組む必要がありました。
このような背景から、当社では「ワークライフバランス検討ワーキング」を発足し、制度改⾰等の推進を図りました。
検討テーマは、①社員(育児・介護)の柔軟な働き方、②若手の活躍、③女性の活躍の3点です。ワーキングは若手を中心としたメンバー構成としました。
そして、ワーキングからの提言を受けて、会社として様々な制度改正や施策・作業に取り組みました。
休暇・育児・介護に関しては法を上回る制度設計とし、制度の充実化に加えて制度利用の後押しも行っています。
プロジェクト運営(開発業務)においては、工程毎の多段階契約によるリスクヘッジやプロジェクトマネジメントの標準化等、パートナー会社様と共に働き方改革(時間外労働の削減等)に取り組んでいます。
社員やパートナー会社様が働きがいを感じる会社を今後も目指していきたいと思います。
事例紹介
田邊氏:
当社では「お客さまに安定したシステム・クオリティの高いソリューションをご提供すること」を目的に、働き方改革に取り組んでいます。
従来の業務を簡素化し、開発担当者は本来の開発業務に投下できる時間を増加させることでクオリティを向上させ、顧客満足度の向上にも繋げていくといったサイクルを回していきたいと考えています。
そのための施策として、Web会議システムの導入によるコミュニケーション・会議の効率化、お客さまお問合わせ窓口設置により受電集中を回避することによる開発効率の向上、申込書受付のWeb化による業務効率化等に取り組みました。
また、今後の働き方改革への展望として、IT企業の社会的役割を「テクノロジーを活用してより良い業務遂行環境を提供する」ことだと仮定するのであれば、お客さまニーズに合った機能を常に安心して利用できるシステムとしてご提供する必要があります。
そのために、システム構築に向けてお客さまとゴールを共有することにも取り組んでいきたいと考えています。

パネルディスカッション

地域における働き方と協働関係の展望

パネルディスカッションでは、崇城大学の川副氏をモデレーターに招き、パネリストには東北インフォメーション・システムズ株式会社の山下氏・阿久津氏、九州デジタルソリューションズ株式会社の田邊氏、宮城大学の梶氏を迎えディスカッションが行われました。
パネルディスカッション
川副氏:
本日は、個人の働き方にまずは焦点を当て、その上で、受発注の協働関係や地域におけるこれからの働き方についてディスカッションしていきたいと思います。
初めに、企業として従業員のワーク・エンゲイジメントの向上や自律的なキャリア形成に向けて、取り組んでいること、もしくはこれから取り組もうとしていることがあれば、具体的なお話しをお伺いできますか。
山下氏:
キャリア形成に向けて、まずは会社が社員へキャリアゴールを示すこと、そしてその中で社員が自身の立ち位置を知ることが大切だと考えています。
当社としては、キャリアローテーション制度(自分の適性を見極めるために開発・運用業務を一定期間でローテーションする仕組み)、スキル認定制度(プロジェクトマネージャー等の9つの人材モデルとシステム開発の33の専門分野をもとに年に一度診断・認定を行う仕組み)、管理系職種の複線化(技術系の管理職のキャリアを加え、スキル認定制度と連動した仕組み)を整備しています。
さらに、今後自身のキャリアを考える場としてセミナー等の開催も検討していく予定です。
田邊氏:
従業員のワーク・エンゲイジメント向上等の前提として、まずは会社がやろうとしていることを示し、それに対する社員の考えと擦り合わせを行うことが重要だと思います。
当社で来年度から予定している代表的な施策の一つに、目標管理シートの導入があります。
「業務貢献」「自己啓発」「システム安定化」等のカテゴリ毎にそれぞれ半期・年度でどのような取組を行っていくか目標を設定し、その達成状況を確認します。
確認に関しては、経営職階によるレビューも行います。社員のプロセスを評価しながら社員の承認欲求を上げるために経営層・社員の双方で目標を把握し、目標達成に向けたサポートを社内で取り組んでいきます。
透明性のある人事評価へ繋げる狙いもあります。
川副氏:
ITの世界では技術の進展が早く、技術のキャッチアップも大変かと思いますが、先端技術のキャッチアップにはどういった取組が企業や個人に求められるでしょうか。
梶氏:
技術を学ぶことに対して個人のモチベーションが高いことがまず重要です。色々なツール・サービスを使えば新しい技術を学べる場はたくさんあります。
しかし、技術は学ぶだけでなく実践することが大切です。
そうした実践の場を企業として提供することが重要だと思います。
企業として現在の仕事を請け負うことは勿論重要ですが、先端技術を使った新しいビジネスをお客様に提案することも重要ではないでしょうか。
また、企業だけでなく行政としても、新しい技術を活用したプロジェクトを立ち上げることで優秀なエンジニアを集め、地域発の技術発信を行っていくことも期待されるところだと思います。
川副氏:
従業員のワーク・エンゲイジメント向上や自律的なキャリア形成への取組の前提として、円滑なプロジェクト運営や発注者・受注者の良好な関係も大切になると思います。
先ほどの事例紹介ではプロジェクト運営で取引先と工夫している取組も伺いましたが、そうした取組をお客様と上手く連携して進めるポイントや、逆に苦労している点があればお聞かせいただけますか。
田邊氏:
お客様とシステム構築のゴールを共有するといった取組の中で課題は大きく2つあります。
1つ目は、ステークホルダが多岐にわたることからお客様の社内での意思統一がなかなか出来ないということです。
2つ目は、同じゴール目標を共有しPoC等でイメージアップしたとしても、開発を進めるにつれてお客様の中でイメージが変わってくることです。
後者に関してはある程度仕方ないところもありますので、お客様と密にコミュニケーションを取りながら、出来るだけ早いタイミングで我々が察知する必要があります。
お客様への丁寧な説明を行い、お客様のご要望をきちんと受け止めていくことが、最終的には一番の近道かもしれません。
阿久津氏:
当社ではプロジェクトマネジメントの標準化に取り組み、プロジェクトメンバー全員に展開し共有を図っています。
標準化の対象はマネジメントだけでなく、内部設計やコーディングも含みます。
これにより、パートナー会社様は当社の仕様書に基づく工数見積がしやすくなる、見積の精度が高まる効果があると考えています。
当社では全てのプロジェクトが開発のやり方を統一しているため、規模の大小に関わらず計画的なマンパワーコントロールが可能になります。
さらに、標準化によって品質が安定するため、例えテスト工程でプログラムの修正が発生しても、それが大きな負荷とはならず計画通りに完遂出来ていると思います。
川副氏:
本事業を通じて、熊本県のWGでは、契約書や覚書に発注者・受注者の双方の働き方に配慮する旨を記載する仕組みを作り、発注者・受注者が一体となって働き方改革を推進していく意識付けの第一歩にしてはどうかと議論を重ねている最中です。
宮城県では働き方に関する地域特有の課題や発注者・受注者での取組の方向性として議論していることはありますでしょうか。
梶氏:
宮城県特有の課題ではないかもしれませんが、県内の大学を卒業した学生の中には首都圏の企業へ就職する学生が多くいます。
若い人が地元に残る仕組みとして、行政等が地域の魅力をPRすることも重要ですし、企業は面白い仕事・先端的な仕事を用意することも重要だと思います。
ある企業では、数名の有能なスタッフを既存業務とは切り離し最先端の技術動向の調査やスキル習得にあてることで、自社の新規ビジネスの見極めを行っていると聞きます。
川副氏:
IT業界においては、先端技術でDXを推進する人材から、社会基盤である既存システムを改善・運営する人材まで、質と量の両面での人材不足が深刻な問題になっています。
テレワークの進展により時間・場所にとらわれない柔軟な働き方が可能になる一方で、首都圏大手企業はフルリモートを前提に地域エンジニアの獲得に乗り出す動きもあり、地域企業における人材の獲得競争が一層激化する可能性もあります。
本日最後の論点になりますが、人材の獲得や定着に向けて、多様な働き方やダイバーシティなどを企業や地域としてどのように捉え、今後どのような働き方を目指していくべきとお考えでしょうか。
阿久津氏:
Z世代と呼ばれるような若い世代の仕事の価値観に関する調査結果では、「ワークライフバランスの充実」「企業の安定性」「楽しく働きたい」等のキーワードが上位に位置付けられていました。
しかし、これらの価値観・視点は10年前も20年前も変わらないものだったのではないでしょうか。
現在はSNSの発展により、企業情報へのアクセス・入手が容易になっていますので、情報をオープンにして入社前に認識のギャップを無くすことが人材の離職防止に繋がると思います。
また、働き方が多様化する中で労務管理に関する管理職の負担は大きくなっていると思いますが、ギグワーカー等今後働き方の多様化はますます加速することと思いますので、そのような中できちんと多様な働き方を受け入れられる企業でありたいと思っています。
田邊氏:
企業が働き方を強要することにより、個々人のパフォーマンスや社会貢献欲が低下することはあってはならないと思っています。
社員には与えられた働き方に従うのではなく、色々な働き方改革の施策がある中で、自分にとって最適な働き方はどういうものか模索するような行動様式を身に付け、自律した働き方を実現してほしいと考えています。
川副氏:
昨今の新型コロナウイルスの感染拡大が、これからの働き方を考える契機になりました。
企業は制度・ルールを整備して社員の柔軟な働き方をサポートし、個人は自身のキャリアをしっかり考えてキャリアアップしながら企業・社会に貢献していくといった、それぞれのベクトルが上手く噛み合うと企業にも個人にもハッピーな状態が生まれると思います。
働き方改革に関する議論に特効薬は無く、ケースバイケースで議論の積み重ねが必要です。
誰かがやってくれる・与えてくれるという観点では問題は解決せず、一人一人が行動を起こし、企業全体としてのムーブメントに繋がっていくことが重要だと思います。

参加者アンケート(一部抜粋)

セミナーのプログラム毎の参考度合として、参考になったとの回答の割合(「大変参考になった」「参考になった」の合算)は、基調講演や事例紹介では9割以上、パネルディスカッションでは8割強であり、総じて参加者の期待に応えることができたセミナーとなりました。
基調講演は
参考になりましたか
基調講演は参考になりましたか
事例紹介は
参考になりましたか
事例紹介は参考になりましたか
パネルディスカッションは
参考になりましたか
パネルディスカッションは参考になりましたか
また、アンケート回答者のうち、働き方改革に関する取組を「行っている」が約8割、「検討中」が1割であることから、働き方改革への取組の浸透が伺えます。
一方で、働き方改革に取り組む上での発注者・受注者間の良好な関係の構築状況としては、良好な関係を「築けている」が約4割、「どちらともいえない」が約4割となっています。
貴社は働き方改革に関する取組を行っていますか?
貴社は働き方改革に関する取組を行っていますか?

働き方改革に関する
具体的な取組内容や検討中の内容(一部抜粋)

  • テレワーク導入及び推進、ハイブリッドワークの推進
  • ペーパーレス/社内業務のIT化、VR雑談室等デジタルコミュニケーション促進
  • 時間単位休暇制度、時差出勤、フレックス制度、社員の働き方の多様性
  • キャリアパスの複線化
  • 残業時間抑制、休日取得の推進、日次の労働時間把握とアラート発信
  • 従業員意識調査を踏まえた教育メニューや社内ルール、福利厚生制度の見直し
  • 業務の平準化・効率化とモチベーション向上、仕事標準化による残業時間平準化
  • 日常業務のムリ・ムラ・ムダの発掘と改善
  • 上司が若手を育成する上で学ぶべきことについての社員向けセミナー
働き改革に取り組む上で、発注者・受注者が良好な関係を築けていますか?
働き改革に取り組む上で、発注者・受注者が良好な関係を築けていますか?
発注者・受注者が良好な関係を築く上での
効果的な取組や課題(一部抜粋)
発注者・受注者が良好な関係を築く上での効果的な取組や課題(一部抜粋)
  • 双方の円滑なコミュニケーション、信頼感の醸成
  • 現場任せにせず、双方の経営者層がこまめに情報共有することが大切
  • 契約書の内容
  • 共通諸元等の標準化
  • ペーパーレス化による押印の廃止
  • 発注側の働き方改革に対する認識が低い、自治体自体が働き方改革に関心が無い
  • 納期ありきで過酷な労働を強いられる場合がある
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