2021年度調査では、宮城県・熊本県の両地域において、 調査結果を基に地域で目指す働き方の方向性を以下のように定めました。
<宮城>
①WLB実現及び自己研鑽に向けて、時間を有効に活用するために“残業ゼロ“を目指す働き方
②宮城県で働くことの価値を高める働き方をデザイン(宮城モデル)
<熊本>
①地域の受発注者双方が一体となった取引環境改善や働き方改革を推進する
②地域の魅力や優位性を発信し人材の首都圏企業への流出を防ぐ
2022年度調査では、2021年度調査の取組を踏まえ、目指す働き方の実現のため両地域で深刻な課題であるITエンジニアの人材不足に対し、人材の確保・育成・定着に向けた個人のワーク・エンゲージメントの向上を志向する働き方について、それぞれの地域で検討を行うことを目的に意識調査を行いました。
宮城県調査結果
回答者属性
従業員規模は「100人以上」の回答が8割以上、主な仕事場所は「自社オフィス・データセンタ」の回答が8割以上を占める。
現在の仕事内容は「設計・開発・テスト」「運用・保守」がそれぞれ3割以上を占める。
性別は「男性」が約8割、年齢は「50歳台」が約4割、職位は「非管理職」が7割強を占める。
就業管理・人事管理に関する制度の実施状況(従業員規模別)
就業管理・人事管理に関する
制度の実施状況(従業員規模別)
「長時間労働対策」「有給休暇取得促進」は約8~9割の会社で実施している。
「育児支援」「病気治療・介護支援」「メンタルヘルス対策」は約7~8割の会社で実施している。
「柔軟な就業形態」は従業員100人以上の会社で約9割実施しているが、従業員100人未満の会社では約5~6割の実施となる。
「希望や能力を踏まえた配属、配置転換」は約4~6割の会社で実施している。
評価・報酬、人材育成に関する制度の実施状況(従業員規模別)
評価・報酬、人材育成に関する
制度の実施状況(従業員規模別)
「社外教育支援」は約8割の会社で実施している。
「研修計画」「メンター制度」「キャリアパスの明確化」「経営戦略の明確化等」は従業員100人以上の会社で約8割実施しているが、従業員100人未満の実施は約3~6割の実施となる。
「能力・成果等に見合った昇進や報酬アップ」「待遇格差の解消」「人事評価に関する公正性・納得性の向上」は約4~6割の会社で実施している。
就業管理・人事管理、評価・報酬、人材育成に関する重要だと思う取り組み(20~30歳台)
就業管理・人事管理、評価・報酬、人材育成に関する重要だと思う取り組み
(20~30歳台)
「能力・成果等に見合った昇進や報酬アップ」は20歳台・30歳台
の7割以上が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「本人の希望や能力を踏まえた配属、配置転換」は20歳台・40歳台・50歳台
の約5~6割が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「柔軟な就業形態」は各年代
で約4~5割が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「社外教育支援」は各年代
で下位にあり、「メンター制度」は年代が上がるにつれて重要度が低くなっている。
「育児支援」が重要だと思う割合は30歳台
が最も高く、「病気治療・介護支援」を重要だと思う割合は50歳台
が最も高い。
就業管理・人事管理、評価・報酬、人材育成に関する重要だと思う取り組み(40~50歳台)
就業管理・人事管理、評価・報酬、人材育成に関する重要だと思う取り組み
(40~50歳台)
「能力・成果等に見合った昇進や報酬アップ」は20歳台・30歳台
の7割以上が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「本人の希望や能力を踏まえた配属、配置転換」は20歳台・40歳台・50歳台
の約5~6割が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「柔軟な就業形態」は各年代
で約4~5割が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「社外教育支援」は各年代
で下位にあり、「メンター制度」は年代が上がるにつれて重要度が低くなっている。
「育児支援」が重要だと思う割合は30歳台
が最も高く、「病気治療・介護支援」を重要だと思う割合は50歳台
が最も高い。
仕事にやりがいを感じるとき
仕事にやりがいを感じるとき
「お客様から感謝されたり、仕事内容が認められたとき」が約8割を占める。
「仕事に見合った昇給がなされたとき」が5割弱、「プロジェクトをやり遂げたとき」「興味ある仕事をしているとき」が約3割を占める。
ワーク・エンゲージメント・スコア(JILPT調査結果比較)
ワーク・エンゲージメント・スコア
(JILPT調査結果比較)
(独)労働政策研究・研修機構「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」(2019年)の調査結果と比較。
ワーク・エンゲージメント・スコアは、「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」(活力)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(熱意)、「仕事をしていると、つい夢中になっている」(没頭)と質問した項目に対して、「いつも感じる(=6点)」「よく感じる(=4.5点)」「時々感じる(=3.0点)」「めったに感じない(=1.5点)」「全く感じない(=0点)」とした上で、「活力」「熱意」「没頭」の3項目の平均値として算出。
属性別ワーク・エンゲージメント・スコア 4.5以上(n=55)&2.5以下(n=59)
属性別ワーク・エンゲージメント・スコア
4.5以上(n=55)&2.5以下(n=59)
スコアが高い層の仕事場所は「自社オフィス・データセンター」の割合が高い。
スコアが高い層の年齢は「30歳台」「50歳台」の割合が高く、低い層の割合は「20歳台」の割合が高い。
スコアが高い層の職位は「管理職」の割合が高く、低い層の割合は「非管理職」の割合が高い。
従業員規模、仕事内容、性別に関しては、全体の傾向とワーク・エンゲージメントの高い層に大きな差は見られなかった。
重要だと思う取り組み(ワーク・エンゲージメント・スコア4.5以上)
重要だと思う取り組み
(ワーク・エンゲージメント・スコア4.5以上)
ワーク・エンゲージメントの高い層は、「経営戦略の明確化等」を重要だと思う割合が全体の傾向よりも高い。
ワーク・エンゲージメントの高い層は、「メンタルヘルス対策」「病気治療・介護支援」「育児支援」を重要だと思う割合が全体の傾向よりも低い。
重要だと思う取り組み(ワーク・エンゲージメント・スコア2.5以下)
重要だと思う取り組み
(ワーク・エンゲージメント・スコア2.5以下)
ワーク・エンゲージメントの低い層は、「能力・成果等に見合った昇進や報酬アップ」「人事評価に関する公正性・納得性の向上」「キャリアパスの明確化」を重要だと思う割合が全体の傾向よりも高い。
ワーク・エンゲージメントの低い層は、「長時間労働対策」「経営戦略の明確化等」を重要だと思う割合が全体の傾向よりも低い。
宮城におけるワーク・エンゲージメントの向上の検討
宮城におけるワーク・エンゲージメントの向上の検討
宮城ワーキンググループでは、県内のIT産業において人材不足が大きな課題であり、人材の流動性が非常に高まっているといった環境認識のもと、首都圏・大手企業とは処遇の異なる地域で働くことの魅力について検討した。
具体的には、従業員規模等の企業属性や個人属性ごとに、ワーク・エンゲージメントの向上のために何ができていて、今後何をするべきか、企業の実態についてアンケートを通じて把握し、ワーク・エンゲージメントの向上に向けた有効な施策の検討を行った。
上記をもとに、回答者の属性ごとに、価値観の評価分析や層別分析を行った。
分析結果を以下に示す。
各図の横軸1~15は、アンケートで調査した就業管理や評価・報酬、人材育成に関する(1)~(15)の取組が該当する。
- 労働時間の短縮やフレックスタイムなどの柔軟な就業形態
- 長時間労働に対する合意形成や対策
- 有給休暇の取得促進
- 仕事と育児に対する両立支援や復職支援
- 病気治療や介護に対する支援
- 仕事のストレスや人間関係に対するメンタルヘルス対策
- 本人の希望や能力を踏まえた配属、配置転換
- 能力・成果等に見合った昇進や報酬アップ
- 従業員間の不合理な待遇格差の解消(男女間、業務内容など)
- 人事評価に関する公正性・納得性の向上
- 能力開発や自己啓発の研修計画
- 社外教育に対する支援・配慮
- 指導役や教育係(メンター制度等)の支援
- 人材育成方針とキャリアパスの明確化
- 経営戦略・経営方針や部門目標の明確化と共有化
図/企業が実施している施策と従業員が重要と考える施策
上記"企業が実施している施策と従業員が重要と考える施策"図より、企業が実施している施策と従業員が重要と考える施策は必ずしも一致しないことが分かる。
就業管理や人事管理、人材育成等の施策は多くの企業で様々な施策が実施されているが、従業員は報酬や評価等の施策を重要と考える割合が高い。
これは、就業管理や人事管理、人材育成等の施策が既に多くの企業で実施されていることから、次のステップとして、報酬や評価等の施策を従業員は所属企業に求めている可能性がある。
また、属性別にみると、例えば従業員規模50名以上の会社では「本人の希望や能力を踏まえた配属、配置転換」等を重要と考える割合が高いが、従業員規模50名未満の会社では「柔軟な就業形態」等を重要と考える割合が高い。
このように、属性ごとに重要と考える施策は異なるため、企業にとっては自社の社員数、職種、男女比、年齢構成と照らし合わせて重点を置くべき施策を検討することが重要である。
また、本調査結果を参考に、自社における取組の実施状況の点検等にも有効であると考える。
熊本県調査結果
回答者属性
従業員規模は「100人以上」の回答が7割強、主な仕事場所は「自社オフィス・データセンタ」の回答が6割強を占める。
現在の仕事内容は「設計・開発・テスト」が約4割、「運用・保守」が約3割を占める。
性別は「男性」が約8割、年齢は「30歳台」「40歳台」「50歳台」が約2~3割、職位は「非管理職」が7割強を占める。
就業管理・人事管理に関する制度の実施状況(従業員規模別)
就業管理・人事管理に関する
制度の実施状況(従業員規模別)
「長時間労働対策」「有給休暇取得促進」は約7~10割の会社で実施している。
「柔軟な就業形態」「病気治療・介護支援」「希望や能力を踏まえた配属、配置転換」は約4~7割の会社で実施している。
「育児支援」「メンタルヘルス対策」は従業員50人以上の会社では6割以上実施しているが、従業員50人未満の会社では約4~5割の実施となる。
評価・報酬、人材育成に関する制度の実施状況(従業員規模別)
評価・報酬、人材育成に関する
制度の実施状況(従業員規模別)
「経営戦略の明確化等」は約8割の会社で実施している。
「研修計画」「社外教育支援」は従業員100人以上の会社で約7割実施している。
「能力・成果等に見合った昇進や報酬アップ」「待遇格差の解消」「人事評価に関する公正性・納得性の向上」「メンター制度」「キャリアパスの明確化」は約2~6割の会社で実施している。
就業管理・人事管理、評価・報酬、人材育成に関する重要だと思う取り組み(20~30歳台)
就業管理・人事管理、評価・報酬、人材育成に関する重要だと思う取り組み
(20~30歳台)
「能力・成果等に見合った昇進や報酬アップ」は各年代
の6割以上が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「柔軟な就業形態」「本人の希望や能力を踏まえた配属、配置転換」は20歳台
の6割以上が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「育児支援」は20歳台・30歳台
の4割以上、「メンタルヘルス対策」は40歳台・50歳台
の4割以上が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「社外教育支援」は各年代
で下位にあり、「経営戦略の明確化等」は年代が上がるにつれて重要度が高くなっている。
就業管理・人事管理、評価・報酬、人材育成に関する重要だと思う取り組み(40~50歳台)
就業管理・人事管理、評価・報酬、人材育成に関する重要だと思う取り組み
(40~50歳台)
「能力・成果等に見合った昇進や報酬アップ」は各年代
の6割以上が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「柔軟な就業形態」「本人の希望や能力を踏まえた配属、配置転換」は20歳台
の6割以上が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「育児支援」は20歳台・30歳台
の4割以上、「メンタルヘルス対策」は40歳台・50歳台
の4割以上が重要だと思う取り組みとして挙げている。
「社外教育支援」は各年代
で下位にあり、「経営戦略の明確化等」は年代が上がるにつれて重要度が高くなっている。
仕事にやりがいを感じるとき
仕事にやりがいを感じるとき
「お客様から感謝されたり、仕事内容が認められたとき」が7割強を占める。
「プロジェクトをやり遂げたとき」が4割強、「仕事に見合った昇給がなされたとき」が約4割、「興味ある仕事をしているとき」が約3割強を占める。
ワーク・エンゲージメント・スコア(JILPT調査結果比較)
ワーク・エンゲージメント・スコア
(JILPT調査結果比較)
(独)労働政策研究・研修機構「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」(2019年)の調査結果と比較。
ワーク・エンゲージメント・スコアは、「仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる」(活力)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(熱意)、「仕事をしていると、つい夢中になっている」(没頭)と質問した項目に対して、「いつも感じる(=6点)」「よく感じる(=4.5点)」「時々感じる(=3.0点)」「めったに感じない(=1.5点)」「全く感じない(=0点)」とした上で、「活力」「熱意」「没頭」の3項目の平均値として算出。
属性別ワーク・エンゲージメント・スコア 4.5以上(n=28)&2.5以下(n=48)
属性別ワーク・エンゲージメント・スコア
4.5以上(n=55)&2.5以下(n=59)
スコアが高い層の仕事場所は「自社オフィス・データセンター」の割合が高い。
スコアが高い層の仕事内容は「コンサルティング」「要件定義」の割合が高い。
スコアが高い層の年齢は「40歳台」の割合が高く、低い層の割合は「30歳台」の割合が高い。
スコアが高い層の職位は「管理職」の割合が高く、低い層の割合は「非管理職」の割合が高い。
重要だと思う取り組み(ワーク・エンゲージメント・スコア4.5以上)
重要だと思う取り組み
(ワーク・エンゲージメント・スコア4.5以上)
ワーク・エンゲージメントの高い層は、「能力・成果等に見合った昇進や報酬アップ」「人事評価に関する公正性・納得性の向上」「経営戦略の明確化等」「メンター制度」「研修計画」を重要だと思う割合が全体の傾向よりも高い。
ワーク・エンゲージメントの高い層は、「柔軟な就業形態」「本人の希望や能力を踏まえた配属、配置転換」「有給休暇取得促進」「育児支援」「長時間労働対策」を重要だと思う割合が全体の傾向よりも低い。
重要だと思う取り組み(ワーク・エンゲージメント・スコア2.5以下)
重要だと思う取り組み
(ワーク・エンゲージメント・スコア2.5以下)
ワーク・エンゲージメントの低い層は、「柔軟な就業形態」「育児支援」「長時間労働対策」を重要だと思う割合が全体の傾向よりも高い。
ワーク・エンゲージメントの低い層は、「能力・成果等に⾒合った昇進や報酬アップ」「メンタルヘルス対策」「キャリアパスの明確化」「メンター制度」を重要だと思う割合が全体の傾向よりも低い。
熊本におけるワーク・エンゲージメントの向上の検討
熊本におけるワーク・エンゲージメントの向上の検討
熊本ワーキンググループでは、熊本の住みやすく働きやすい環境で居心地がよいことが、仕事や生活における安定志向に繋がりやすいと考え(熊本ワーキンググループではこの意識を「コンサバ的な思考」と呼ぶ)、コンサバ的な思考の従業員のワーク・エンゲージメントを向上するための方策を検討した。
具体的には、脱コンサバでワーク・エンゲージメントを向上するために、下図のモデルを考案し、従業員のモチベーションアップ研修やミドルマネジメント層のグループマネジメント力アップ研修を通じて、マインドセット研修の有用性を検証した。
図/ワーク・エンゲージメントを向上するためのモデル案
上記で示したアンケート調査結果から、熊本では特に20・30歳台の非管理職において、ワーク・エンゲージメントを改善する必要があることが分かる。
下図には、ワーク・エンゲージメントが高い層や年代別の仕事に対する考え方を示す。
ワーク・エンゲージメントが高い層では安定志向よりも変化志向が高いのに対し、20歳台では変化志向より安定志向の方が高くなるといった特徴を窺える。
図/仕事に対する考え方

与えられた仕事に対しては責任をもって取り組むが、自らの成長を促すようなチャレンジや自己啓発には積極的でないことが多いコンサバ的な思考の従業員は、OJTによってスキルアップは出来ているものの、自分のワークスタイルを成長させていくようなマインドセットの機会は少ないと思われる。
また、コンサバ的な思考を打破してワーク・エンゲージメントを向上させ、従業員の働きがいの向上、業務生産性の向上、人材の維持・確保等を実現するためには、ミドルマネジメント層のマインドセットを合わせて実施する必要がある。
このような課題意識のもと、「従業員のモチベーションアップ研修」「グループマネジメント力アップ研修」を実施した。
実施概要を以下に示す。
研修の実施概要
|
従業員のモチベーションアップ研修
| グループマネジメント力アップ研修
|
実施日時 |
2023年2月20日(月)15:00~16:20 |
2023年2月24日(金)15:00~16:20 |
実施方法 |
ハイブリッド開催 |
ハイブリッド開催 |
対象者 |
従業員(非管理職) |
グループマネジメント実施者 |
参加人数 |
49名 |
21名 |
研修内容 |
参加者のモチベーション維持の工夫 |
参加者のマネジメントでの工夫 |
研修後に実施した参加者アンケートの結果を下図に示す。
研修内容に関して、参加者の満足度や理解度は総じて高く、また有用性も高いことから、熊本ワーキンググループの仮説であったコンサバ的な思考の改善が、ワーク・エンゲージメントを高める可能性が高いことが示唆された。
しかし、このような研修の効果が一過性のものとならないように、入社後の数年間において、ワーク・エンゲージメントを高めるようなワークスタイルを確立するためのサポートや共感できるロールモデルが必要となる。
熊本県として、継続してワーク・エンゲージメントの向上に有効な研修を模索・実践していきながら、従業員のやりがい・働きがいの向上を目指していく。
図/研修参加者アンケート結果