インタビュー特集・
仕事への想い

厚生労働省の中堅~幹部の職員たち5名に、
仕事の理念や信条について一問一答で語ってもらいました。
厚生労働省で働くとはどういうことなのか?
今まさに活躍中の職員たちの言葉から感じ取ってみてください。

  • 年金局事業企画課
    課長補佐

    平成22年厚生労働省入省。障害保健福祉部精神・障害保健課、雇用均等・児童家庭局総務課少子化対策企画室、内閣官房副長官補付(厚生労働担当)への出向、職業安定局総務課などを経て、現職。

  • OECD雇用労働社会問題局
    雇用分析・政策課
    労働市場エコノミスト

    平成19年厚生労働省入省。職業安定局、政策統括官付社会保障担当参事官室、健康局、外務省出向、米国留学、労働基準局などを経て、現職。

  • 内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)
    企画官(出向中)

    平成11年厚生省入省。老人保健福祉局、法務省入国管理局、雇用均等・児童家庭局、東京海上日動火災保険、医政局、社会・援護局(援護)、大臣官房総務課、独立行政法人国立病院機構への出向などを経て、現職。

  • 社会・援護局 総務課のメンバーと

    内閣府 子ども・子育て本部
    審議官(出向中)
    藤原 朋子

    平成元年厚生省入省。平成10年宮城県健康対策課長。その後、老健局企画官、内閣府参事官(子ども・子育て支援担当)、国立社会保障・人口問題研究所企画部長、保険局高齢者医療課長、社会・援護局総務課長、子ども家庭局審議官などを経て、現職。

  • 事務次官
    鈴木 俊彦

    昭和58年厚生省入省。保険局、大臣官房、年金局、京都府高齢化対策課長、保険局老人医療企画室長、内閣総理大臣官邸、大臣官房参事官、健康局総務課長、大臣官房会計課長、大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭、少子化対策担当)、社会・援護局長、年金局長などを経て、平成30年7月から現職。

  • 所属・役職は2020年7月時点

Q1これまでのキャリアで一番印象に残っている仕事は何ですか。

「官僚の仕事=政策立案」ですが、政策の達成手段の代表格は法律の制定、改正です。

私も係長時代に新法の施行チームの一員として政令の新規制定を担当しました。政令は、原案作成後、内閣法制局に通い何度も審査を受けながら、修正を重ね、審査を通れば、「閣議決定」を経て、晴れて「公布」となります。厳正な審査を経ているとはいえ、間違ったら自分の責任、とはいえ自分ごときではとりきれない大きな責任を感じながらやり遂げるというのは、身を持って経験しなければ決して分かりません。

華々しいイメージの「政策立案」ですが、それには地道・緻密な法令作業が必ず伴うものです。

世界金融危機が起こり、厳しい雇用失業情勢となったことを受けて、雇用保険制度を改正する業務に携わったことです。非正規労働者に対するセーフティネット強化等のため、チーム一丸となって法律改正に取り組みました。入省して間もない時期の仕事だったということもあり、強く印象に残っています。それ以外にも、省外のキャリアでは、米国留学も印象に残っています。

ご遺骨の収集や戦没者の慰霊等の重要な役割を担っている援護行政は、厚生労働省の所掌分野の中であまり注目されることはないですが、戦没者のご遺族が高齢化している中で、これまで以上に取組を加速していかなければならない分野です。よく「ゆりかごから墓場まで」と言われる厚生労働分野ですが、援護行政は「墓場から始まる分野」とも言えます。戦後70年の節目の年にこの分野に携わることができたことは印象深かったです。

以前内閣府に出向した際、子ども・子育て支援新法の創設に携わりました。高齢者中心の社会保障制度を見直し、子育て世代への支援も拡充できるよう、文部科学省の幼稚園や厚生労働省の保育所の垣根を超えて新たな財政給付の仕組みを導入するものでした。素晴らしい仲間に恵まれ、内閣府・厚生労働省・文部科学省の3府省の担当がチーム一丸となり、新法創設に向けて審議会での検討、財政当局や地方団体との調整に明け暮れました。政治的にも紆余曲折を経て、2年後に法案が成立した日の達成感と安堵感が今も忘れられません。

行政官の世界に身を置いて30年が過ぎました。いつの時代も国民が厚生労働省に対応を求める課題は多いです。その要請に応えるべく懸命に走ってきました。改めて振り返ってみると、印象に残る仕事は多々ありますが、あえて一つを挙げよと言われれば、平成14年から17年まで3年間、小泉政権の総理官邸で内閣総務官室の内閣参事官を務めたことでしょうか。内閣全体を視野に置き、また行政・立法・司法の接点として、様々なことを経験できました。課長職として初任のポストで、大きな責任を感じると同時に、自らの視野と仕事の幅が広がり、また各界の多くの方々と御縁ができた点でも得るところが大きかったです。

Q2仕事に取り組む上で大切にしていること・信条はありますか。

「今だ!」を捉えることです。日常の仕事の中で突如として出くわす使い勝手の悪い制度を、手直しできるタイミングを捉え、変え遂げることが大切です。

一つ目に、担当する分野について可能な限り専門性を高めること。過去の経緯を学び、関連する文献・学説を読み、現場に学ぶことが大切だと考えています。二つ目に、仕事は人が作っていくものなので、関係者の意見をよく聞き、言葉だけでは表れない想いも含めて汲み取ることができるよう努めること。三つ目に、体を壊しては元も子もないので、無理をし過ぎないことですね。

こだわりを持たないこと。常に自分の視野が狭くなっていないかどうか、自己チェックを怠らないようにしています。

追い詰められたときこそ「原点」に立ち戻ること。合意形成が難航する時こそ、誰のために、何のために見直そうとしているのか、小手先の利害の調整ではない判断が必要です。もう一点は、理想像を描いた上で柔軟に前進すること。理想的な最終目標にはたどり着けなかったとしても、投げ出してしまうのではなく、まずは一歩でも改革を前進させること。ささやかに見える一歩が将来の大きな改革の第一弾となることもあるからです。

資本主義・民主主義が危機に直面し、世界の其処彼処で社会の分断への懸念が叫ばれているこの時代。我が国はどのような道を歩んで行くべきでしょうか。行政に携わる者として、常にこうした問題意識の下に、アンテナを高く張って社会経済の変化を捉え、先見性をもって課題に対処するように心がけています。目先にとらわれず、真に国民にとって良いことは何かをひたすら考え、答を出し、実行する、この繰返しです。

Q3入省時の想いは、現在どのように変わりましたか。

入省時の使命感や熱い想いは変わらないですし、仕事は好きですが、その問題意識が時代錯誤にならないためにも、自分自身の日常や人生を疎かにしないことが必要だと感じるようになりました。

入省時、人が感じる将来への不安を和らげることができるような仕事をしたいとの想いがありました。入省後、様々な業務を経験する中で、一定の制約に直面することはありますが、現在でもその想いは変わっていません。

「想い」を持つことは大切ですが、自分の「想い」にこだわりすぎてしまうことによって見えなくなってしまうものもあることがやっと分かってきました。

当時厚生省を選択したのは、何らかの障害や困難を抱えている人々をサポートする立場で働きたい、自分が恵まれた環境で生きてこられたことの恩返しをしたいという想いからでした。その時の気持ちは30年後の今も変わっていません。

「国家・国民のために身を捧げたい、どのような仕事に携わろうとも行政官として悔いのないように身を処したい」と、青臭い決意を胸に職業人生をスタートしてから、今日まで、この想いはいささかも変わっていません。

Q4あなたの考える「目指すべき厚生労働省職員像」は何ですか。

時代に求められる制度を提案し、実現できる人。

心優しく、志高く、先を見据えて問題解決につなげることができる人。

様々な局面で、厳しい判断をできる職員。

「政策立案」は、机上の空論では済まされないし、福祉・医療の現場で起きていることを真摯に傾聴して課題を発見する、施策化に向けて関係者の合意形成を図る、地道な作業の連続です。目指すべき職員像とは、こうした努力を惜しみなく重ねたうえで、仲間を信頼してチームとして総合力を高めていける人、でしょうか。自分も未だに模索中ですが・・・・。

日々の仕事の中、例えば、多様で複雑な利害の調整の渦中で、「何が大事なことか」を見失いそうになることだってあります。そんな時にも、国民の味方として、「生活者」としての国民一人ひとりを支えることが厚生労働省の使命です。この信念と誇りを胸に新しい社会づくりに挑む、これが目指すべき我が省の職員像だと思っています。

Q5あなたにとっての厚生労働省とは一言で何ですか。

傍観者でなく、当事者として、社会の違和感に同志とともに立ち向かうことを仕事にできる場所です。

価値観の相克に向き合うことを常に求められる、インパクトの大きな省庁です。

動物園。色々な動物がいる動物園のように、厚生労働省には色々な価値観・視点をもった職員がいます。

良いときも悪いときも、「人生とともに在るもの」。正直、子育てに十分な時間がとれずに自分を責めた時期もありました。それでも厚生労働省という職場だったから、娘たちに「今こんなお仕事を頑張っているよ」と胸を張って笑顔で伝えることができたのです。

真に国民の味方となることができる省です。

Q6どういう人に厚生労働省の門をたたいてほしいと思いますか。

仕事を通じて自分以外の人の幸せの実現を想像できる人に是非来て欲しいです。

どのような人でも、業務内容に興味があれば厚生労働省の門をたたいてほしいと思いますが、強いて言えば、人の暮らしや幸福に関心があり、現存する問題を解決することに対する貪欲さがある人ですね。

公務員、民間企業問わずどんな業界にいても、理想と現実のギャップはありますが、厚生労働分野は特にそれが大きいかもしれません。そんな中で仕事を進めていく上では、自分を大切にできることも重要です。辛いときにこそ、セルフコントロールができる人に門をたたいて欲しいです。

これを読んでいる皆さんは、どのような問題意識を持っているのでしょう。ゼミで社会保障に興味を持った、日本経済と社会保障の関係で持論がある、障害のある大切な家族を支えたい。きっと一人ひとりの物語があるはず。あなただけの問題意識と熱意をもって是非厚生労働省の門をたたいてください。

時代が大きく変化を始めている今日、国民の負託にしっかり応えられるフレッシュな頭脳とタフな魂を持った諸君と一緒に、新たな課題に挑戦することを心から楽しみにしています。