プロジェクト・ストーリー
厚生労働省ならではの
「まちづくり」

皆さんは「まちづくり」という言葉に対して、どんなイメージをもっていますか?
「まちづくりとは建物や道路をつくることだから、厚生労働省ではまちづくりはできない」なんて思っていませんか?
実は、現代のまちづくりにおいては厚生労働省の視点がとても重要になってきているのです。
ここでは、4人の職員のまちづくり経験談を紹介します。

STORY 01

まちづくりで国を突き上げる

まちづくりと言うと、道路を引いたり、建物を建てたりのイメージがあるでしょう。しかし、もはやそんなことより、この成熟しきった人口が減る日本のまちづくりは、人々の暮らしをどうより良くするかを追求することにあります。

最近のまちづくりは、在宅医療を受けやすくする長寿社会のまちづくり、健康になるまちづくり、がトレンドです。

私は7年前に柏市に出向しました。そこで、住み慣れた家で暮らし続けることができるシステムの構築を団地の再開発事業の中で実現させました。これが最近各地で展開されている長寿社会のまちづくりの走りです。この柏市の取組みをきっかけとして、厚労省は、在宅医療を地域で進める具体策の検討や生きがいを持って働き続けられる仕組み作りを進めました。

今の出向先である岡山の駅に降り立った日、新幹線も停まるこの街で、新たな箱もの建設の必要性は全く感じませんでした。それよりも、若年性認知症患者・家族の「認知症の患者も働きたい、でも働く場所がない」という声、また、「市民がこの通りをトレッキングウォークして健康になっていくのが夢だ」という社長の言葉、そこにまちづくりの種が眠っています。そして、その種を発芽させることができるのは、厚労行政を専門分野にしている私と新しい「まち」を作ろうという気概を持った企業や市民です。

様々な人の声から、市民がこのまちで暮らして良かったと思える「まち」をつくる、これは、厚労省を選んだ時から強く持ち続けた思いです。それを実現し、全国に展開していくという仕事を、ここ岡山で満喫しています。

(筆者右の男性)

岡山市 保健福祉局 統括審議監
(平成15年入省)
(2018年執筆当時)

STORY 02

厚生労働省の制度を活用した
愛媛経済発展への貢献

愛媛と言えばみかんが有名ですが、今治地域における造船業やタオル業をはじめとした「ものづくり県」でもあります。現在、本県では経済が回復していく一方で、有効求人倍率の高止まりとともに、若者の流出等による働き手不足に悩んでいます。このため、本省での経験や地元関係者等との意見交換も踏まえて、どうしたら働き手が増えるのか、どうしたら若者は地元に回帰してくれるのか、という問いに対する解決策を考え、実施しています。

一例では、地域の基幹産業で必要とされる人材を育成するため、IT技術も活用した地場産業密着型の職業訓練を実施し、その学んだ技術・技能を国家検定である「技能検定」や業界別の「職業能力評価基準」という「ものさし」で評価した上で、高い能力を持った人材を地元へ輩出するという取組をしています。これらはいずれも厚労省が創設した制度ですが、こうしたツールを現場の実態に沿った形で運用し、人材育成を通して愛媛経済の発展に貢献できているという点で日々非常にやりがいを感じています。

2019年9月、G20労働雇用大臣会合が愛媛・松山で開催!

愛媛県庁経済労働部産業雇用局
労政雇用課長
(平成20年入省)
(2019年執筆当時)

STORY 03

「医療」から「まちづくり」を考える

「まちづくり」を考えるとき、地域の「ニーズ」と「リソース」を見極めることが重要です。530万人が住む北海道。人口減少と高齢化が進んでいます。

人口減少は、「患者数の減少」と「担い手の減少」を意味します。キャリア形成(症例経験)が重要な医師は、患者数の少ない病院での勤務は難しく、また、看護師等の確保もより困難になるため、病院の統合・再編など効率的な体制づくりを進める必要があります。これは、医師が健康に働き続けられる環境整備の観点からも重要です。同時に、ICTを活用して遠隔地でも専門医に相談できる取組を進めるなど、患者の利便性確保にも取り組まなければなりません。さらなる高齢化を見据え、高齢者に多い疾病への対応、病院ではなく住まいや介護施設での療養生活を可能とする体制づくりなども急務です。

問題を先送りするのではなく、厳しい現実を直視しつつ、医療の在り方をアップデートしていく。決して簡単ではありませんが、一歩でも半歩でも前に進むため、頭を悩ませながら走り回る毎日です。

北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)の前で

北海道保健福祉部
地域医療推進局地域医療課長
(平成17年入省)
(2019年執筆当時)

STORY 04

「健幸」なまちづくりから「みらい」を創る

私が出向する草津市では、誰もが健やかで幸せに暮らし続けられる「健幸都市」を目指し、健康・福祉に限らずあらゆる政策分野に「健幸」という切り口でアプローチする新たな都市モデルに挑戦しています。歩いて暮らせる健康的な公共交通ネットワークの構築、市特産物を活かした健康食の推進等、厚生労働行政の知見が必要不可欠なプロジェクトです。

草津市は、今なお人口増加を続ける街ですが、駅周辺と郊外部とでは人口構造や資源、生活機能等が全く異なるという特徴があります。

そのため、このプロジェクトの実現にあたっては、各地区に住む人の暮らしを把握し、市民、地域組織、企業、大学等の様々な主体と密に連携する必要があり、実際に現場に足を運び、関係者と直接対話をすることが欠かせません。

試行錯誤する中で、「現場目線」の姿勢が行政官の原点だと痛感するとともに、厚生労働省の基本理念である「ひと」と「くらし」を軸としたまちづくりがこれからの日本を創っていくはずだと確信しています。

草津市役所庁舎の前で

草津市役所健康福祉部 理事
(平成24年入省)
(2020年執筆当時)