医師の働き方改革
~医師の自己犠牲の上に成り立つ医療提供体制からの転換~

医師の「働き方改革」について検討が進められています。
医師の労働時間は全ての職種の中でもダントツのトップであり、
労働時間の短縮が急務ですが、そのためには、地域医療提供体制と医師の健康確保を
両立させつつ、医師偏在対策等を含めた総合的な対策が必要です。
ここでは、その改革プロジェクトについて紹介します。

大臣官房審議官
(医政担当)
(2020年執筆当時)

働き方改革・地域医療構想・医師偏在対策など全体を統括しています。厳しい調整等もありますが、外科医だった現場経験を活かしながら取り組める、とてもやりがいのある仕事です。

医政局地域医療計画
課長補佐
(2020年執筆当時)

地域医療構想の担当です。2025年に向けた議論も大詰めです。誰もが住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、医療提供体制の確保を図ることが、医政局の大きな使命です。

政策統括官付
政策評価官室長補佐
(前医政局医療
経営支援課長補佐)
(2020年執筆当時)

昨年度、法令事務官として携わりました。異職種混成チームを引っ張った原動力は、本気で日本の医療を変えていこうとする医系技官の皆さんの強い思いと献身だったと思います。

医政局医事課長補佐
(2020年執筆当時)

医師偏在対策の担当です。医師が本当に足らないところで医師を確保できなければ、労働時間の削減にはつながりません。長期的な医療需要を見据えた施策の立案が必要です。

2019年度から、働き方改革関連法が順次施行され、医療機関で働くすべての人を対象に、複数月平均80時間(休日労働含む)等を限度とした時間外労働の上限規制が導入されました。

一方、診療に従事する医師については、その特殊性を踏まえ、2024年度から上限規制が適用されるものの、一般の上限である時間外労働月80時間(年960時間)超の医師が全体の40%程度、その約2倍の年1860時間超の医師が全体の10%程度であることなどを踏まえ、適用される上限時間等については、原則、年960時間の時間外労働を上限としつつ、医師の健康を確保しながら地域医療提供体制を確保する観点から、連続勤務時間制限や勤務間インターバル等の健康確保措置の実施など一定の条件を満たした医療機関では、暫定的に年1860時間の時間外労働を上限とし、2036年までに、段階的に暫定特例水準を解消するという目標で議論が進められています。

労働時間管理の徹底

労働時間短縮のためには、ICT等を用いた業務効率化や育児等をしながらでも働き続けられる環境整備、タスクシフト・シェア(他職種への業務の移管・業務の共同化)などの取組を進める必要がありますが、その前提として、客観的に労働時間を管理し、時間外労働に対する賃金支払いなど労働法制を遵守することが重要です。例えば、もし、医療機関内にいわゆる「無給医」や、時間外賃金が支払われない医師がいれば、経営的には、そうした医師に業務を集中させることで、トータルの人件費を抑制することができてしまいます。

従って、今後、労働時間管理を徹底することで、時間外賃金が支払われることになるのはもちろん、タスクシフト等により、医師でなければできない仕事に集中しつつ十分な休息の確保をする、というように勤務医の働き方を大きく変えていく必要があります。2024年に向け、医療機関においてこうした働き方を実現するための医師の健康確保措置や労働時間短縮のための計画の策定など詳細な検討が進められています。

想定される働き方の変化イメージ(勤務医からみて)

当直明けも夕方まで連続勤務
夜遅くなっても翌朝は早い

連続勤務時間制限28時間
インターバル9時間確保

医師でなくてもできる仕事も
しなければならない

タスクシフト・シェアにより、
医師でなければできない仕事に集中

労働時間管理がなされていない
勤務時間に見合った支払いがなされていない

労働時間管理がきちんと行われる
いわゆる「無給医」の解消
時間外割増賃金
がきちんと支払われる

医師偏在対策

労働時間削減のためには、医師の数を増やせば良いのではないか、と考えるかもしれませんが、その答えはYESでありNOです。例えば、医学部定員の増員等により、医師の数は毎年4000人ほどのペースで増え続けていますが、特に労働時間が長いとされる外科や産婦人科の医師数はこの20年間ほどでほぼ増えていません。国の検討会等における議論を踏まえて示した都道府県別診療科別必要医師数等に基づき、日本専門医機構による専門研修採用数の診療科別都道府県別のシーリングが開始されたところですが、医師の地域・診療科偏在対策を強力に推進していくことが、働き方改革のためには極めて重要です。

地域医療構想の推進

24時間365日主治医として常に対応を行うということは、医師として重要な精神である一方、医師も一人の人間であり、医師の健康確保なくては医療提供体制は成り立ちません。例えば、一人の医師が毎日のように当直するのではなく、チームでシフトを組んで救急対応等を行うことができるような持続可能な体制を整えることが必要です。そのためには、将来の医療需要を見据えて、医療機関間で適切な役割分担を行い、地域医療提供体制を整えることが重要になってきます。

2040年を展望した医療提供体制の改革について

2040年を展望した2025年までに
着手すべきこと
三位一体で推進 1.地域医療構想の実現等 2.医師・医療従事者の働き方改革の推進 3.実効性のある医師偏在、対策の着実な推進

医師の働き方改革の仕事について

2024年、2036年に向けた取組はまだ始まったばかりですが、この記事を読んで、これだと思った皆さん、一緒に働ける日を楽しみにしています!