Cross Talk
2040年の社会像を描く

2040年—みなさんが働き始めて約20年が経ち、責任あるポストについている頃かもしれません。
その時、日本社会は、一体どんなものになっているでしょう?そして、あなたはその社会でどう生きますか?
厚生労働省では、まさに今、2040年を見据えた社会保障・働き方改革を進めています。
ここでは、異なる視点から政策を進める3人に、現在の取組や今後の展望について語り合ってもらいました。

  • 政策統括官付社会保障担当参事官室
    室長補佐(以下、Aさん)

    (2019年執筆当時)

    平成14年厚生労働省入省。食品安全部(現医薬・生活衛生局)、職業安定局、保険局、米国コロンビア大学留学、年金局、在フランスOECD日本政府代表部などを経て、現職。

  • 労働基準局
    医療労働企画官(以下、Bさん)

    (2019年執筆当時)

    平成12年旧厚生省入省。児童家庭局、大臣官房総務課、健康局、人事院短期在外派遣(英国保健省)、労働基準局、年金局、医薬・生活衛生局、多摩市健幸まちづくり政策監などを経て、現職。

  • 社会・援護局福祉基盤課
    福祉人材確保対策室長(以下、Cさん)

    (2019年執筆当時)

    平成11年旧労働省入省。社会保障担当参事官室、雇用均等・児童家庭局、保険局、国際課、在中国日本国大使館一等書記官、岡山市保健福祉局副局長などを経て、現職。

未来をデザインする~2040年を展望して~

Aさん

団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年は、高齢化の進展という課題もありますが、それ以上に深刻なのは「支え手」が減っていくということです。私は今、2040年を展望した課題にチャレンジするためのビジョンづくりを担当しています。2040年というとまだまだ先と思われるかもしれませんが、高齢化や人口減少といった大きな動きに対して直前にあたふたしても仕方がありません。厚生労働行政では、常に「未来」を見据えて政策を考えることが求められます。まさに未来のグラウンドデザインを描く仕事に、今取り組んでいます。

Cさん

介護人材の関係でも、その「支え手」が減っていく2040年に向けてどういう施策を打っていくのか、これを考えるのが今の私の仕事です。多様な人材の確保の観点からは、担い手の裾野を広げることや、介護そのものの「ブランディング化」を行うことがポイントの1つです。
例えば、中高年齢者、子育てを終えた女性や男性等を想定し短時間の入門的研修を今年度から創設、介護分野への参入のきっかけづくりをしています。また、若年層も意識し介護の社会的評価を高めるべく、人材育成に積極的な介護事業所を見える化し、人材育成や働きやすさ等の認証制度を全国に広げていくなど、介護の「ブランディング化」を進めていきたいと考えています。さらに、今年度は、介護の魅力を発信していくための介護分野以外の人も含めた多様な参加者に介護事業所でインターンシップをしてもらい、理想と現実のギャップから、未来の介護を描いてもらうという事業を実施しています。その中で、例えば、介護サービスの利用者から特技をヒアリングして作成する「生涯現役名刺」や、スタッフと外部の人が連携して、1日だけの施設長となって運営する「1日施設長」、「注文をまちがえる料理店」を厚労省で開催するなど、いろんなアイデアが生まれながら介護のイメージ向上を進めています。
…他にも、ロボットやICTを活用した生産性向上、外国人材の受入れ環境整備など、話し始めたら止まらないほど、やるべきことはたくさんあります(笑)。

Bさん

なるほど、いいですね介護!(笑)。私は、医療従事者の勤務環境改善に取り組んでいます。今の最大のトピックは「医師の働き方改革」です。2019年4月からいよいよ時間外労働、すなわち残業の上限規制がスタートします(中小企業は2020年4月から)。医師については適用が5年間猶予され、また、上限時間数は2019年3月を目途に定めることとなっており、今まさに議論の真っ最中です。非常に長時間働かれている医師もいる中で、すぐにとはいきませんが、医師も一般の労働者と同水準の働き方を目指そうという方向性が確認されています。2040年に向けて若い世代が減少していく中でも必要な医療サービスが提供されるためには、チーム医療を推進し、医療従事者間のタスクシフティング、タスクシェア、つまり協働ですね、これを進め、医師に過度な負担をかけることのない医療提供体制を構築していく必要があります。
そのためには、地域の医療機関間の協働の視点も必要です。地域の医療提供体制そのものの見直しにも取り組む必要があります。医師の働き方と地域の医療提供体制は大きく関連しているのです。

人が主役の地域づくり~多様な主体と~

Cさん

厚労省が所管している事業や施設があるところは地域づくりと密接に関連していますよね。実際、地域づくりの担い手として期待をしている社会福祉士・介護福祉士の養成カリキュラム改正の検討でも、このような観点を盛り込んでいます。

Bさん

私もCさんも、地方出向の経験があり、どこまでいっても地域づくりが大事という考えがありますよね。

Aさん

共通するのは地域づくりの視点ですね。また、福祉、医療といった分野でも、働き方改革のような労働分野への広がりもあり、分野横断的な視点を持って考えるのが2040年を展望した取組のポイントだと思います。CさんやBさんが紹介された取組の他にも、健康寿命延伸に向けた横断的な検討や、高齢者雇用や地域の支え合いをはじめとする多様な就労・社会参加に向けた横断的な検討も行っています。

Cさん

自治体に出向して実感しましたが、「ゆりかご」から「墓場」まで、「社会保障」から「産業・雇用政策」までといった政策・制度を所管しているのは厚労省の強みですね。こういった制度を持っているからこそ、地域住民にも直接アプローチできますし、様々な関係者とも連携しやすい。制度の狭間にどのように対応していくかという視点も生まれます。縦割りをどう乗り越えるか、この視点も大事にしています。

Bさん

生活に密着しているからこそ、ワクワクしながら仕事ができますよね。私は、前職の多摩市で「健幸まちづくり」を推進していました。地域で活躍する場があるといいよねとか、色んな方同士が関係しあう場をつくることができて、参加者の笑顔が見られたのは、とても良かったです。

Cさん

地域づくりの主体は人だということですね。高齢者や子ども政策など生活に密着した切り口から地域に入っていけるので、今後の地域をどう創っていきたいのか主体的に考えて参加する気持ちが生まれやすく、それが支え合いの地域づくりや共生社会にもつながります。

世界の中の日本~2040年とその先と~

Aさん

外務省に出向してOECD日本政府代表部に勤務していたことがあります。加盟国大臣が並ぶ会合では、「JOB」という言葉—日本では「雇用」や「仕事」の意味でとらえます—が、「経済」や「景気」というより広い意味も込めて使われており、雇用政策と経済政策は表裏一体なのだと感じました。また、社会保障は、医療・介護サービスを提供する社会政策というだけでなく、国の財政の根幹です。少し離れた立場で見てみると、我々の仕事は経済財政政策と大きくリンクしていることがよく分かりました。各国を見ても、リーマンショックの雇用への影響への対応や、移民・外国人の受入れへの対応は等しく悩んでいる課題ですし、厚生労働分野は経済財政等の大きな分野に関係しつつ、その国の生活に密着している面もあり、改めてやりがいを感じました。

Bさん

そうですね、世界全体を見ることができる職場でもありますね。

Cさん

2040年というと、東アジア・ASEAN諸国の高齢化が急速に進んでいる状況です。中国の大使館に出向していた時、日本の急速な人口構造の変化の中での社会保障制度の動向は、世界から想像以上に注目されていることを実感しました。2040年に向けた日本の取組は各国のモデルにもなるという思いで取り組んでいます。

これまでの20年間を振り返って

Bさん

社会保障の効率的な在り方を考えたいと厚労省に入省しました。思い描いた方向で仕事ができていると感じています。管理職という解決すべき課題を能動的に提案する立場となり、少し緊張しています。面白そう、情熱をかけられそうと入省し目の前のことに取り組むうちに20年でした。健康と幸せを保ちつつ、目の前に立ちはだかる課題解決に取り組むーこのバランスをとっていきたいですね。今は、3人の子どもの子育て中です。チームワークでサポートし合い、色んな働き方ができる職場にする、それが大切だと思っています。

Cさん

そうですね、私の部署にも短時間勤務で働いている方がいますが、人の倍くらい働いてくれていますよ。

Bさん

子育て中でも、何かしらの貢献はできますし、そうした貢献を活かす組織であることが大切です。時間の制限があっても、人の役に立ち、かつ、楽しく働く道がある。是非知ってもらいたいですし、示していきたいです。

Cさん

私は、人が生きていく上でいざというときになくてはならないものを作っているのが厚労省だと思い、この仕事を選びました。その時の直感は間違っていなかったと思います。そして、これまでの仕事の中で、そうした「なくてはならないもの」は、つながっているなとも感じました。パート労働者への年金や健康保険の適用拡大の制度改正を担当したことがありますが、これは、非正規雇用労働者対策でもありました。年金・医療だけでなく労働もつながっているのですね。少子化対策も一緒で、単に子育てだけでなく、働き方の問題とも密接にリンクしています。また、私生活の話になりますが、6年ほど前に子どもが生まれました。親になると社会に対する感じ方が変わりましたが、自分の人生の変化が仕事への向き合い方の変化につながることを今まさに実感しています。

Bさん

私は、学生の頃、障害者の方をキャンプに連れて行くというボランティアをしていて、ひとつでも多くの笑顔を生み出したいという想いでこの職場を選びました。入ってみて、若いうちから仕事を任される職場だったなと思います。これまでの仕事を通じて、当事者の気持ちにたって考えることが大事だと、改めて実感するとともに、様々な立場・世代の人が生きやすい社会にするために、自分の入省当時の想いを政策に込められる職場だと感じています。

学生へのメッセージ

Bさん

今この記事を読んでいる学生のみなさん。私も学生の頃、皆さんと同じように採用パンフレットを読み、官庁訪問をする中で、どんな部署に行っても飽きることがなさそうだなと思い、厚労省に入省しました。厚労省のやっていることに興味があると思ったら、是非私たちの仲間になっていただきたいです。仕事がハードだとか、そういう不安がある方もいらっしゃるかもしれません。そういった働き方の問題は、随分変わってきたと思っています。またこれからも変えていきたいと強く思います。この職場に何か取り組みたいものがあれば是非来ていただきたい、そう思います。

Cさん

国民生活への影響が大きいということが厚労省の特徴です。生活に密着している分、責任もやりがいも大きいです。地方自治体や海外で活躍する機会もあり、Bさんもおっしゃったとおり、飽きることがない職場です。成し遂げたい夢、実現したい社会は何かを考え、自分の世代、親世代、将来・子ども世代の全世代のための社会を創ることができるという意味で、一生を賭ける価値ある仕事だと思います。

Aさん

厚労省は、普段感じていることや思っていることを仕事に活かせる数少ない職場です。自分自身が社会に対して思っていることをそのまま仕事に対するモチベーションに変えることができる、その分使命感も一番大きい、そんな仕事だと思います。社会を変えるために何ができるか、と思っている人にはぜひ厚労省の門を叩いて欲しいです。また、社会は様々な人によって成り立ち、支えられているように、色々な考え方を尊重出来る人、様々な人の立場で考えることが出来る人に来てほしいと思っています。その上で、一番大事なことは気持ちだと思います。