新型コロナウイルス感染症
対策の最前線

2019年12月に中国・武漢で発生し、2020年1月半ば日本国内で
初めて感染者が確認された「新型コロナウイルス感染症」。
日に日にその勢いが増すなか、政府は同年4月に入り、まず7都府県に、
さらに全国に緊急事態宣言を出すなど、国を挙げたこの感染症との戦いが続いています。
この特集では、厚生労働省対策推進本部の取り組みについて取り上げます。

政府は2020年1月30日、新型コロナウイルス感染症対策を総合的かつ強力に推進するため、司令塔である「新型コロナウイルス感染症対策本部」(本部長:内閣総理大臣)の設置を閣議決定しました。

厚生労働省も、それに先立つ1月28日に「新型コロナウイルス感染症対策推進本部」(本部長:厚生労働大臣)を設置。加藤厚生労働大臣のリーダーシップの下、省全体が一丸となって、また関係省庁とも緊密に連携しながら感染症対策を進めています。

同対策推進本部には、技術総括班や医療体制班、サーベイランス班、PCR検査班、広報班、マスク等物資対策班、クラスター班、対策班など10以上の班があり、各班ではさまざまな対策に取り組んでいます。班は、必要に応じて新設しています。

任務に当たる職員は感染症対策を担当する部署以外からも応援に駆けつけ、感染拡大を防止し被害を最小限に食い止めるべく、昼夜を問わず各任務に励んでいます。3名の職員から、日々の本部での任務や、任務に当たる思いを語ってもらいました。
※この記事の情報は、2020年5月執筆当時のものです。

技術総括班

健康局結核感染症課
エイズ対策推進室長

(2020年執筆当時)

治療薬の開発など研究や技術分野をサポート

私の所属している結核感染症課は、中国で新型コロナウイルス感染症が発生した2019年12月の時点から情報を収集し対外的発信を行ってきました。日に日に感染者が増え、当課だけでは対応が難しくなり、ほかの部局から増員を得ながら活動し、1月末の「新型コロナウイルス感染症対策推進本部」設置に至ったという経緯があります。現在、当課は対策推進本部で技術総括班として動いています。班員は25人以上です。

当班では、国立感染症研究所と連携し、新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンの開発支援、検査実施の手順など技術分野の対応を行っています。また、今後さらに感染者が増えた場合、その数の把握が難しくなることを踏まえて、全体の流行の波をどのように捉えるかなども検討しています。

感染拡大を防ぐには、国民の皆さまに現在の危機的状況を自分のこととして認識してもらい、全員で感染を予防する努力が必要だと思っています。

マスク等物資対策班

社会・援護局福祉基盤課
福祉人材確保対策室長

(2020年執筆当時)

最前線で戦う医療従事者を守る

私の所属しているマスク等物資対策班は、厚労省はもとより、経済産業省や総務省など各省職員総勢100名以上が参集したチームです。通称「政府マスクチーム」と呼ばれ、命を守る最前線であり、最後の砦である医師をはじめとした医療従事者を守るために動いています。

未知のウイルスとの戦いのなかで、医療従事者が感染して医療を提供できなくなれば、医療が崩壊してしまいます。そこで戦うための個人防護具、たとえば医療用マスクやガウン、ゴーグル・フェイスシールドなどを確保することが政府マスクチームの任務です。

現在、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは世界中で生じており、こうした物資が世界中で不足しています。そのため、国内の生産力向上に向けて費用補助・増産要請をしたり、海外から直接調達したりして、医療の現場に送り届けています。医療従事者を守ることは、国民の皆さまを守ることだという思いで、日々業務に当たっています。

対策班

労働基準局労働条件政策課
医療労働企画官

(2020年執筆当時)

システムの構築で保健所を支援する

私の所属する対策班は班員が7名です。各班の業務からこぼれたものや、班をまたぐものを担当しています。

私は、保健所支援を担当しています。保健所は、新型コロナウイルス感染症対応の要となる機関です。感染が確認された場合の入院などの対応、感染者の健康観察、そのための関係機関との調整のほか、検査の実施や問い合わせ対応などもあり、所員は対応に追われています。感染拡大につれて保健所業務も増大するため、保健所支援は急務です。

現在は、保健所の業務負担軽減と適切・簡便なデータ収集に向けたシステムの構築に向けて取り組んでいます。ICTを活用して保健所業務の支援を行うとともに、国への報告関連業務の事務量の大幅削減や保健所間の情報共有の円滑化を狙っています。

大変な状況だからこそ、国民の皆さまには、日常の変わらない部分を大切にして過ごしてほしいと思っています。