厚生労働省で働いてみて

総合職(数理系)

政策統括官付 参事官(企画調整担当)付 雇用賃金福祉統計室
室長補佐

平成22年入省

はじめに

平成22年4月より厚生労働省で働き始めました。私が厚生労働省を選んだ理由は、多くの業務や多様な人に接することができることに魅力を感じたからです。入省以来どのような業務をしてどのような人と接してきたか、その時に何を感じ、何を学んだかを振り返ってみたいと思います。そして、厚生労働省を就職先の選択肢に選んでもらえれば幸いです。

年金局で数理的考え方を磨く

最初に配属されたのは年金局数理課で、ここは年金財政の将来見通しを作成しており、数理職員の割合が非常に多い課です。そのため、数字に対して非常に鋭い感性がある方ばかりで、そのような人たちと一緒に仕事をすることで、数値に対してきちんと分析をしなければいけないというのを強く感じました。十分に考えていないと数値の動きについて説明を試みても、矛盾点を指摘されたり、納得させられないことがありました。一方、分析方法などについて相談をするとすぐに回答が返ってきて、頼りになる上司とともに仕事ができて、数理的考え方を磨くことができたと感じています。

年金制度は複雑なところも多くあり、制度を調べるために法律の条文を読んでもよくわからないところや、どの条文に記載されているかわからないこともありました。その時に、年金法を所管している課に尋ねると、質問に対して即時に回答が返ってきて、法律のプロであることに感心するとともに、自分も数字のプロになれるよう研鑽をつまなければいけないと身の引き締まる思いがしました。

統計をいかに分かりやすく説明するか

次に、大臣官房統計情報部(現在の「政策統括官(統計・情報政策担当)」)で、ここはいくつかの統計調査を所管しているのですが、その調査の標本設計、公表支援などを行いました。数理職員以外の人に標本設計の仕組みや調査結果の動きを説明することが多くあり、いかに分かりやすく説明するかということに苦心しました。内容について深く理解していないと分かりやすい言葉に置き換えて説明できないこと、相手に応じて説明方法を変えること、経済や社会を踏まえた説明をする必要があることなどを経験から学びました。同時に、経験豊富な人の説明を横で聞いて勉強したり、日ごろからアンテナを高くして経済の動きなどの情報を集めたりする必要性も感じました。

また、ここにいる間に、3か月間の労働局研修に出ることもでき、労働基準監督署やハローワークなどで仕事をして、厚生労働省の政策が現場でどのように行われているか、現場の職員がどのような意識で働いているか、また、国民はどのような思いを持っているのかなどをつぶさに感じることができました。自分たちの業務はすべて国民につながっており、彼らにとって意味があるか、利便性があるかを常に意識して、より良くなるように業務を進めていく必要があることを強く感じました。

業務の中で強く感じること

仕事をするようになって強く感じることは、常に人と関わりながら仕事をしているということです。思い通りに仕事を進められることは稀ですが、人から指摘を受けることで、これまでの自分になかった考え方や価値観を知ることができ、働くことで人として成長することができたと思います。

全国健康保険協会での数理職員の役割

最後に、全国健康保険協会での業務について触れて終わりたいと思います。

全国健康保険協会は、主に中小企業で働くサラリーマンとその家族など、約4000万人の加入者、約200万事業所からなる日本最大の医療保険者です。「団塊の世代」が皆75歳以上となる2025年には、国民の3人に1人が65歳以上となり、社会保障制度の持続可能性をどのように確保していくかが喫緊の課題となっています。そのような中、協会には、従来から行われている給付の審査・支払、保険料率の設定などの受け身の業務に加え、加入者の健康増進を図る、良質かつ効率的な医療が享受できるようにするなどの能動的な業務が強く求められています。

協会は全加入者の詳細な診療の記録などをデータベースとして保持しており、それらの調査・分析を行い、個人・事業所単位での健康・医療データの提供や、データ分析に基づいた様々な計画の作成を行うことができますが、今後は上記にある能動的な業務の重要性が増してきており、分析などを行っている数理職員の役割にも期待が高まっています。