揺れるこころに寄りそい、意志を尊重して
家族がこころの専門家のメンテを受けさせたいと思っても、子ども本人がそれを拒否することは少なくありません。だからといって、厳しく言い含めるとか、力ずくで連れて行くといった強引な手段はもう通用しない年齢です。
こんなときはまず、拒む理由を考えてみましょう。こころに問題を抱えながらも、専門家によるこころのメンテを受けようとしない子どもたちを対象に、国内外で行われたアンケート調査では次のような理由が挙げられています。このような思い込みを抱えていたら、事実は違うということを教えてあげてください。
思い込み1. 「こころの病気はカラダの病気とは違う」をたたむ
思い込み1. 「こころの病気はカラダの病気とは違う」
- こころの病気は性格や気の持ちようだから、医療は必要ない
- カラダと違って、こころはメンテできない
- こころの病気は「弱い人」がかかる
- まわりの人に変なやつ、暗いやつと思われたくない
こころの病気は、だれもがかかる可能性がある、ごく一般的なものです。こころの病気にかかると、感情や気分に影響を与えるセロトニンやノルアドレナリンといったホルモンの働きが変化します。これを調整してくれるのが抗うつ薬や抗不安薬といった、いわゆる「こころの薬」です。頭痛がひどいとき、鎮痛薬で痛みを引き起こす物質を抑えたり、骨折したときに整形外科で添え木やギプスを当ててもらうように、こころが折れたときも精神科の医師にメンテを手伝ってもらえば、早く元どおりの自分に戻れるのです。
こころの病気は「気の持ちよう」でどうにかなるものでは決してありません。うつ病になった人が「今日から元気にやろう」と決意しても、カラダが言うことをきかないのです。悩みの原因がはっきりしている場合は、それが解決することによって気分が晴れやかになることは確かにあります。しかし、こころの病気は多くの場合、複数の要因が重なりあって引き起こされます。我慢や気合いで治せるものではないということをぜひ覚えておいてください。
思い込み2. 「自分1人で解決する問題だ」をたたむ
思い込み2. 「自分1人で解決する問題だ」
- 自分の問題だから、1人でなんとかしなくちゃいけない
- 自分のこころの問題を他人が理解してくれるはずはないし、だれかに話したって解決しない
- 自分を助けられる人なんていない
- 助けて欲しくない
このように思い込む理由としては、自立心が高まる年齢だからというよりはむしろ、次のような「こころのバリア」を感じている可能性が考えられます。
- 問題を抱えた自分を恥じている
- 打ち明けても理解してもらえないのではないかという恐怖から自分を守ろうしている
- 困難を抱えているせいで視野が狭くなって、自分を大切に思ってくれる人などいないという悲観的な考えに圧倒されている
- 重大なことではないはずだと思いたい など
このような背景には、前述した「こころの病気はカラダの病気とは違う」という思い込みも影響しているかもしれません。人に助けてもらうのは恥ずかしいことではなく、むしろ幸せなことだという感覚を持つことができれば、このような「やせ我慢」的な態度は比較的容易に変わっていきます。
【参照:カラダのつらさに共感して、受診を促す】