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第10回全般コード化情報の分析について
第10回全般コード化情報の分析について
1.全般コード化情報の収集状況
報告施設数 | :245施設(前回250施設) |
全般コード化情報事例数: | :13443件(前回14263件) |
報告対象期間 | :平成15年10月〜12月 |
2.分析方針
分析は以下の方針に基づき実施した。1) | 収集した事例について、頻度を単純集計した。 |
2) | 収集した事例について、項目間の相互関係を把握するため、それらのクロス集計を行った。 |
3) | 報告事例の多い「処方・与薬」「ドレーン・チューブ類の使用・管理」「療養上の世話、療養生活の場面」および影響度の大きい事例の割合が高い「医療機器の使用・管理」「輸血」については、該当するデータを抽出のうえ、単純集計および項目間のクロス集計を行った。 |
3.分析項目
以下の項目について、単純集計、クロス集計を行い、この結果を集計表とグラフに整理した。
<単純集計>
以下の項目について単純集計を行った。
・ | 発生月(A) |
・ | 発生曜日(B) |
・ | 発生時間帯(C) |
・ | 発生場所(D) |
・ | 患者の性別(E) |
・ | 患者の年齢(F) |
・ | 患者の心身状態(G;多重回答) |
・ | 発見者(H) |
・ | 当事者の職種(I;多重回答) |
・ | 当事者の職種経験年数(J) |
・ | 当事者の部署配属年数(K) |
・ | ヒヤリ・ハット事例が発生した場面(L) |
・ | ヒヤリ・ハット事例が発生した要因(N;多重回答) |
・ | 間違いの実施の有無および事例の影響度(O) |
<クロス集計>
以下の項目間のクロス集計をおこなった。

4.分析結果
1)全事例【13443事例】
○発生時間帯【図1−3】
これまでと同様、6〜7時台になると増加し、8〜11時台にほぼピークとなり、12〜19時まではやや減るもののほぼ一定頻度となり、20時以降減少するという日内変動を示している。
○患者の性別【図1−5】
これまでと同様、男性患者に発生したヒヤリハットの件数が女性患者よりも多く、約1.3倍となっている。患者調査によると、入院患者数、外来患者数ともに女性のほうが多いので、男性患者には何らかのリスク要因があることが示唆される。
○患者年齢【図1−6】
これまでと同様、71〜80歳、61〜70歳、51〜60歳の順に多く、この3区分で約半数を占めており、中高齢患者のリスク要因が高い可能性がある。また、0〜10歳も7%程度発生しており、小児も何らかのリスク要因を有する可能性がある。
○発見者【図1−8】
これまでと同様、当事者本人が発見する事例が最も多く(6273例、46%)、次いで同職種者(4398例、33%)、他職種者(1302例、10%)となっている。
○職種経験年数、部署配属年数【図1−10、1−11】
職種経験年数、部署配属年数ともに年数0年によるヒヤリハットが最も多く、年数がたつにつれて件数も減少している。新入職員および部署異動後の教育・指導体制の充実が求められる。
○発生場面【図1−12】
これまでと同様、高頻度群として処方・与薬(3518例、26%)、ドレーン・チューブ類の使用・管理(1838例、14%)、その他の療養生活の場面(1687例、13%)となっており、これらで全体の半数以上を占めている。
○発生要因【図1−13、表1−1】
これまでと同様、「確認」「観察」「心理的状況」「勤務状況」「判断」が発生要因として多く挙げられている。具体的には「確認が不十分であった」「観察が不十分であった」「判断に誤りがあった」「多忙であった」などが上位に挙げられている。
○影響度【図1−14】
間違いが実施された事例の割合が75%に達しており、従来よりも多くなっている。
2)処方・与薬
○発生時間帯【図2−3】
従来と同様二峰性で、8〜11時台および18時〜19時台に発生頻度がピークとなっている。
○患者の性別【図2−5】
男性1865例(53%)、女性1424例(40%)と、男性のほうが多い。
○発見者【図2−8】
従来同様、当事者本人による発見よりも同職種者が発見するケースの方が多い。全事例では当事者本人による発見が多いので、処方・与薬の発見者における特徴といえる。同職種者による発見が多いということは、クロスチェックなどの仕組みが機能している結果とも考えられる。
○影響度【図2−13】
間違いが実施された事例が2927例、83%となっており、未然に防止しにくい。
3)ドレーン・チューブ類の使用管理
○発生曜日【図3−2】
発生曜日による頻度の差は少なく、土曜・日曜なども平日と同様の発生状況となっている。
○発生時間帯【図3−3】
これまでは時間帯による発生頻度の差はあまり見られなかったが、今回の集計では、深夜帯(22〜23時台、0〜1時台)および8〜9時台にピークが見られた。
○患者の性別【図3−5】
これまでと同様、男性1042例、女性686例と、男性のほうが約1.5倍の発生頻度となっている。
○患者の心身状態【図3−7】
意識障害の患者で多く発生しており、自己抜去などの原因となっている可能性がある。
○発生要因【図3−12、表3−1】
「観察が不十分であった」がもっとも多く報告されており、リスクのアセスメントと患者観察の充実など、なんらかの対応が求められる。
○影響度【図3−13】
「間違いが実施」が1649例、81%を占める。実施前に発見したが実施されていれば患者への影響は大きい(生命に影響)と思われる事例が28例(1.4%)あった。
4)医療機器の使用・管理
○発生曜日【図4−2】
今回の集計では、月曜日の発生頻度が他の平日(火〜金曜日)に比べ少ないが、理由は不明である。
○発生時間帯【図4−3】
これまでと同様、日勤帯(8時〜17時台)における発生頻度が多いが、今回の集計では10〜11時台にピークがある。また0〜1時台に夜間のピークがある。
○患者の性別【図4−5】
男性221例(49%)、女性183例(41%)と、男性の発生がやや多い。
○発見者【図4−8】
第8回集計以降、同職種者による発見が当事者本人よりも多くなっている。
○職種経験年数【図4−10】
0年、1年の発生が多い。2年目以降は発生頻度は少ないものの、年数による減少傾向は見られず、経験蓄積によるヒヤリハット予防効果があまり見られない。
○影響度【図4−13】
実施されていれば患者への影響は大きい(生命に影響)と思われる事例が11件(2.5%)発生している。
5)輸血
○発生曜日【図5−2】
今回の集計では月曜日および木曜日の発生が少なく、火・水曜、金曜に多く発生している。該当する頻度が少ないところから、報告元施設の運営手順等の状況が反映している可能性がある。
○発生時間帯【図5−3】
日勤帯に多く発生しているが、その中でも午後の発生件数のほうがやや多い。
○患者の性別【図5−5】
男性55件(53%)、女性37件(36%)と、男性のほうが多く発生している。
○患者の年齢【図5−6】
今回の集計では、51歳〜60歳にピークが見られた。
○職種経験年数【図5−10】
今回の集計では、職種経験3年の発生頻度が多い。該当する件数そのものが少ないことから、たんなる変動の可能性もあるが、理由は不明である。
○発生要因【図5−12、表5−1】
今回の集計では、発生要因として「知識」挙げる事例が23例あった。教育的対応の必要性がある。
○影響度【図5−13】
「間違いが実施」が60件(58%)となっており、実施前に発見したが実施されていれば患者への影響は大きい(生命に影響)と思われた事例が4件(4%)あった。
6)療養上の世話等
○発生曜日、発生時間帯【図6−2、図6−3】
曜日、時間帯による発生頻度の差が小さく、週末や夜間でも発生のリスクはあまり変わらない。
○患者の性別【図6−5】
男性1428件(52%)、女性1155件(42%)となっており、男性のほうがやや多く発生している。
○患者の心身状態【図6−7】
「歩行障害」「下肢障害」を有する患者による発生が多く、転倒・転落のアセスメントなど十分な対策が求められる。
○発見者【図6−8】
1507件(55%)は「当事者本人」が発見している。また、「患者本人」、「家族・付き添い」、「他患者」が発見するケースは合計516件(19%)発生している。
○発生要因【図6−12、表6−1】
発生要因として「患者・家族への説明」を報告する事例が728例あり、十分な説明と患者の理解促進が期待される。
○影響度【図6−13】
間違いが実施されたケースが2177例(79%)あり、未然の防止がなされにくい。
第10回全般コード化情報集計結果
図表目次
2)処方・与薬
3)ドレーン・チューブ類の使用・管理
4)医療機器の使用・管理
5)輸血
6)療養上の世話等
全般コード化情報集計結果
(第10回報告事例 13443件)
金井 昌子 | 国立病院機構長野病院 地域医療連携室 主任 |
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戸塚 智子 | (財)国際医学情報センター 研究員 |
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橋本 廸生 | 横浜市立大学医学部医療安全管理学講座 教授 |
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長谷川 友紀 | 東邦大学医学部公衆衛生学講座 助教授 |
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◎ | 武藤 正樹 | 国立病院機構長野病院 副院長 |
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山内 豊明 | 名古屋大学医学部基礎看護学講座 教授 |
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山本 実佳 | 東海大学医学部付属病院 診療情報管理課 副主事 |
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(敬称略・五十音順) | |||
◎は班長 |
全般コード化情報集計結果
(第10回報告事例 13443件)
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