ホーム> 政策について> 分野別の政策一覧> 健康・医療> 食品> 食中毒> 自然毒のリスクプロファイル> 自然毒のリスクプロファイル:ドクササコ(Clitocybe acromelalga) キシメジ科カヤタケ属

自然毒のリスクプロファイル:ドクササコ(Clitocybe acromelalga) キシメジ科カヤタケ属

ドクササコ(Clitocybe acromelalga) キシメジ科カヤタケ属

特徴 傘の大きさ 5~10cmの中型 
形と色  傘 :中型で橙褐色から黄褐色で中央部がくぼんでいる。傘のふちが内側へ巻く初め中央のくぼんだまんじゅう形,後に開いてじょうご形となる。表面は平滑。

ひだ:傘よりうすい色で,密である。

柄 :繊維質で縦に裂けやすい。中実で一部中空のものもある。
発生時期   
発生場所  広葉樹林や竹やぶの地上に発生する。 
その他  地方名:ササコ(秋田),ヤケドタケ(秋田),ジゴクモタシ(秋田),ヤブシメジ,ヤケドキン 
間違いやすい食用キノコ 

ナラタケ ホテイシメジ ,アカハツ,チチタケ

注:カヤタケは食毒不明であったが、ムスカリンなどの有毒成分を

 含有することから、現在では毒きのこと考える  
症状  

末端紅痛症を起こす。早い場合は食後6時間程度,遅い場合は1週間程経過してから,手足の先端が赤く腫れ,激痛を伴いこの症状が1ヶ月以上続く。

(冷やすと症状は軽減する)

毒性成分   アクロメリン酸,クリチジン,スチゾロビン酸,スチゾロビニン酸,異常アミノ酸など 

 

 

 

 1

(1)毒性成分

アクロメリン酸類( acromelic acids,

強中枢神経毒、マウス致死性毒)


 

スチゾロビン酸( stizolobic acid, 中枢神経毒)

スチゾロビニン酸( stizolobinic acid, 中枢神経毒)



クリチジン(
clitidine, マウス致死性毒)


 

オピン類(opines)

他に,クリチオネイン,異常アミノ酸類

キノリン酸,アミノキノリン酸を含有する。

 

 

(2)食中毒の型 神経系 

(3) 中毒症状

食後はやい場合は 6 時間程、遅い場合は一週間ほどしてから手足の先端が赤く腫れ上がって痛みだし、この症状が一ヶ月以上も続く。

・個体差も考えられるが、毒成分の摂取量が一定量を越えると中毒を発症させる。

・毒成分は末梢血管系または末梢神経系に蓄積される可能性があるのではなかろうか。

・中毒発症は治癒しても、物理光学的な刺激により 1 年後でも発症する事例もあり、末梢神経の変性が考えられる。

・摂食の仕方(汁を飲まなかった場合)により発症しないか、発症しても軽症である。毒成分は加熱により水に溶けると考えられる。

・幼少児ほど末梢血管、末梢神経の障害が強く、痛みに対する自覚症状が強いけいこうが見られる。

・初期症状は異常感覚、異常知覚で始まるが、後に出現する諸症状に比べ、その発症は軽度である。

・四肢末端だけでなく、耳介、顔面中央部、外陰部、腹部にも灼熱感が見られる。

・疼痛の部位に一致して発赤、浮腫、腫脹を見る。

・他覚的に錯覚感、異常感覚、触覚、痛覚の鈍麻が見られ、深部反射が亢進する。

・日中に比べ夜間の激痛がより強いのは、身体の安静による末梢血液の変動によると考えられないだろうか。 

 

(4)発症時間 ・摂取量によって摂食から発症までの潜伏期間が異なる。  
(1)発症事例
 

(症例1)

平成 5 年( 1993 )、新潟県長岡市郊外の旧家で、広い裏庭の竹林 ( モウソウチク ) に発生していたきのこを採って、味噌汁に入れて 4 人が摂食。中毒を発症したのは大量に摂取した 1 人のみ。摂食 3 日後に涙、くしゃみが止まらず、顔の痛みと手足の指先が赤く腫れ、激痛が何日も続いた。人が近くを通って空気が動いても疼痛が走り、鎮痛剤の注射を何回も受けた。 17 日間の入院、治療により、ようやく回復退院した。

 

(症例2)

平成 11 年( 1999 10 29 日、富山県氷見市の竹林で取れたきのこをもらって、家族 3 人(男性 1 人、女性 2 人、 53~79 歳)が同日夜と翌朝に味噌汁などに入れて摂食。 3 日後家族全員両手足が痺れた。 79 歳の女性は手足先端部の疼痛、灼熱感、腫脹、運動障害などの症状が顕著であった。きのこをあげた人は家族とも(子供を含む)に食べたが発症していない。保健所の調べでドクササコ中毒と判明した。 
(2)患者数
※厚生労働省発表
 

ドクササコ

/ 年度

発生件数

摂食者総数

患者数

死者数

2015

1

2

1

0

2014

0

0

0

0

2013

0

0

0

0

2012

1

2

2

0

2011

1

1

1

0

2010

2

3

2

0

2009

0

0

0

0

2008

3

12

4

0

2007

1

2

1

0

2006

1

4

3

0

2005

2

5

3

0

2004

3

9

7

0

2003

4

17

7

0

2002

4

8

6

0

2001

0

0

0

0

2000

1

2

1

0

(3)中毒対策  
(1)毒性成分の分析法 SAX カラム前処理して, LCMS による acromelic acid 分析例がある。 
(1)諸外国での状況   

(1)その他の参考になる情報

 
間違いやすいキノコ  ドクササコに顕著な特徴が無いため、似ているきのこが多種あり、食菌との誤食も多い。 ナラタケ類(発生状況がやや似ている)
一般名  アカハツ 
学名  Lactarius akahatsu  
区別できる特徴  傷をつけると橙色の乳液を分泌し、やがて青緑色になる 
引用・参考文献 1)

長沢栄史「フィールドベスト図鑑  14  日本の毒きのこ」   ( ) 学習研究社 

 

2)

編著者・奥沢康正、久世幸吾、奥沢淳治 「毒きのこ今昔-中毒症例を中心にして-」(株)思文閣出版

 

3)毒性物質について

Shinozaki H, Ishida M, Okamoto T

Acromelic acid, a novel excitatory amino acid from a poisonous mushroom: effectson the crayfish neuromuscular junction.

Brain Res ., 399 (2), 395-398 (1986).

 

Fishiya S, Sato S, Nozoe, S.

Stizolobic acid and Image -stizolobinic acid from Clitocybe acromelalga, precursors of acromelic acids

Phytochemistry 31, 2337-2339 (1992).

 

Yamano K, Shirahama H.

New amino acids from the poisonous mushroom clitocybe acromelalga.

Tetrahedron , 48, 1457-1464 (1992).

 

Fishiya S, Matsuda M, Yamada S, Nozoe, S.

New opine type amino acids from a poisonous mushroom, Clitocybe acromelalga

Tetrahedron , 52, 877-886 (1996).

 

Fukuwatari T, Sugimoto E, Yokoyama K, Shibata K.

Establishment of animal model for elucidating the mechanism of intoxication by the poisonous mushroom Clitocybe acromelalga.

食品衛生学雑誌 42 (3), 185-189 (2001).

 

Minami T, Matsumura S, Nishizawa M, Sasaguri Y, Hamanaka N, Ito S.

Acute and late effects on induction of allodynia by acromelic acid, a mushroom poison related structurally to kainic acid.

Br J Pharmacol. , 142 (4), 679-88688 (2004)

 

4)分析について

Bessard J, Saviuc P, Chane-Yene Y, Monnet S, Bessard G

Mass spectrometric determination of acromelic acid A from a new poisonous mushroom: Clitocybe amoenolens.

J Chromatogr A. , 1055, 99-107 (2004).

ホーム> 政策について> 分野別の政策一覧> 健康・医療> 食品> 食中毒> 自然毒のリスクプロファイル> 自然毒のリスクプロファイル:ドクササコ(Clitocybe acromelalga) キシメジ科カヤタケ属

ページの先頭へ戻る