自然毒のリスクプロファイル:カキシメジ(Tricholoma ustale) キシメジ科キシメジ属

カキシメジ(Tricholoma ustale ) キシメジ科キシメジ属

特徴:
地方名
かきしみず(秋田、新潟県)、かきもだし(岩手県)、にせあぶらしめじ(山形県)、まつしめじ(長野県)、おちばしめじ(青森県)、つちもぐり、すなしめじ(秋田県)、つちしめじ(青森、岩手、福島県)、ちゃしめじ(青森、秋田県)
傘の大きさ 3~8cm程度で比較的中型
形と色 傘 :赤褐色~くり褐色またはうすい黄褐色。湿っているとき粘性があり、葉や木くずが張り付いている。
ひだ:柄に対してくっついており(湾生)、密である。白く、古くなると赤褐色のシミができる。
柄 :上部が白く、下部はうすいまだらな赤褐色を帯びている。根もとがやや膨んでいる。
発生時期
発生場所 ブナ、コナラ、クヌギなどの雑木林の地上に群生して発生する。
その他 地方名:オショウモタシ(東北)、カキモタセ(新潟)、コノハシメジ(青森、秋田)、マツシメジと呼ばれることもある。
間違いやすい
食用キノコ
ニセアブラシメジ(クリフウセンタケ)、チャナメツムタケ、 シイタケ
症状 食後30分~3時間後にあらわれ、頭痛を伴い、嘔吐、下痢、腹痛などの症状を起こす。
毒性成分

ウスタリン酸: 水溶性であるため、何本食べたかより、毒成分が溶出した汁をどのくらい摂取したかによって潜伏時間や症状の現れ方に差がみられる。

 
カキシメジの写真
チャナメツムタケの写真

よく似ている食用きのこ、チャナメツムタケ(左) は傘が4-10 cmで、傘周辺部や柄にささくれのような突起物 (赤矢印) が見られる。成熟するとなくなる。ひだは白から黄土色になる。ブナなど広葉樹のほか、マツなど針葉樹の雑木林に生える。
1-1 毒性成分 ウスタリン酸が、 Na+-K+-ATPase 阻害すると報告されている。

化学式


青酸生産能あり。

1-2 食中毒の型 胃腸系
1-3 中毒症状

頭痛を伴った、嘔吐、下痢、腹痛などを起こす。青酸を生産する能力があるが、人に害を及ぼすほどの量ではない。

1-4 発症時間 摂食後 30 分~ 2 時間 (7 時間 )
2-1 発症事例

(症例1)
昭和 60 年( 1985 )、朝食前に採ってきたきのこをクリタケとカキシメジに分けてバケツに入れ置いた。本人は、カキシメジは塩漬けにすれば毒が抜け、肉厚で舌触りの良い優秀な食用きのこになると知っており持ち帰ったが、母親がこれを知らず 2 本のきのこをうどんに入れて摂食。母親はきのこのまろやかな味と香りが相俟って美味しいので、汁を 3 杯飲んだ。父親は不安もあり、汁だけしか摂食しなかった。本人は食べているうちに口の中がなんとなく灰汁っぽかったので、よく見ると汁の中にカキシメジがあるのに気が付いたが、そのまま摂食。摂食 30 分後、激しい吐き気と嘔吐があり全て吐き出した。その後 15 分間隔で母と本人は激しく嘔吐した。嘔吐と嘔吐の間は無症状で全く健康状態に戻ったが、母親は次第に顔色も悪くなり、全身に力が入らなくなったため病院へ受診した。母親はその日入院、新聞に載るのが嫌で翌日自己(専門用語では事故)退院した。本人も生理食塩水を飲んでは嘔吐を繰り返した、摂食 2 日間ほどで全く回復した。
( 症例 2)
平成 10 年( 1998 ) 11 月 9 日、滋賀県大津市内の山中で草津市の男性 65 歳と女性 72 歳が山中でカキシメジを採り、すき焼きにして摂食。その料理を譲り受けた近くの男性 45 歳が、食後まもなく嘔吐や下痢などの中毒症状を起こした。
(その他)
平成 16 年 10 月 24 日に福島県で採取したキノコをナスと炒めて食べた男性( 61 才)と女性( 84 才)が、摂取後約 1 時間後に嘔吐、下痢等の食中毒症状を示して病院に入院。調査の結果、カキシメジとハナホウキタケが確認された。 平成 16 年 11 月 2 日に、筑波山で採取したキノコを知人からもらい、夕食にキノコ汁にして家族 4 名で摂取した。摂取後約 1 時間して全員が嘔吐、下痢、腹痛の食中毒症状を示し病院に入院した。

2-2 患者数
※厚生労働省発表

 

カキシメジ

/年度

発生件数

摂食者総数

患者数

死者数

2015

1

6

5

0

2014

0

0

0

0

2013

0

0

0

0

2012

0

0

0

0

2011

1

4

4

0

2010

1

1

1

0

2009

1

2

2

0

2008

1

4

3

0

2007

0

0

0

0

2006

1

5

5

0

2005

2

8

7

0

2004

3

8

8

0

2003

1

7

4

0

2002

3

16

16

0

2001

2

6

6

0

2000

1

10

8

0

2-3 中毒対策 医療機関での催吐と点滴療法など適切な処置により 1~3 日で回復する。
3 毒性成分の
分析法
 
4 諸外国での
状況
 
5 その他の参考
になる情報
 
6 間違いやすい
キノコ
一般名 学名 区別できる特徴
チャナメツムタケ
(モエギタケ科スギタケ属)
Pholiota lubrica (Pers.:Fr.)Sing チャナメツムタケ ( 可食 ) と間違いやすい。
チャナメツムタケのつもりでカキシメジを食べた場合、
吐いたものを顕微鏡で観察すると胞子の大きさや形、
色の違いで区別することもできる。
しかし、胞子の観察だけでキノコの種類を決めることは困難である。
(カキシメジの胞子は、無色で内部に 1 個の油球がある。
チャナメツムタケの胞子は、褐色でタマゴ形)
マツタケ Tricholoma matsutake ( S.lto et lmai)Sing.
( 異名: Armillaria matsutake S.Ito et Imai)
傘は褐色、繊維質の鱗片に覆われる。
ヒダは白色。古くなると褐色のシミがでる。
香りが強い。肉質しまり重量感がある。
ホンシメジ
(キシメジ科 シメジ属)
Lyophyllum shimeji 傘は淡灰褐色~暗灰褐色 ヒダは白色。
柄は白色で、平滑。
引用・
参考文献
1)
長沢栄史「フィールドベスト図鑑  14  日本の毒きのこ」  ( 株 ) 学習研究社
 
2)Sano
Y, Inakuma T, Kobayashi K, Koshino H, Kawagishi H.
Ustalic acid as a toxin and related compounds from the mushroom Tricholoma ustale.
Chem Commun . 2002 1384-5 (2002).

Sawayama Y, Tsujimoto T, Sugino K, Nishikawa T, Isobe M, Kawagishi H.
Syntheses of naturally occurring terphenyls and related compounds.
Biosci Biotechnol Biochem . 70,2998-3003 (2006).

Hayakawa I, Watanabe H, Kigoshi H
Synthesis of ustalic acid, an inhibitor of Na,K-ATPase
Tetrahedron 64, 5873-5877 (2008).

3)
編著者・奥沢康正、久世幸吾、奥沢淳治 「毒きのこ今昔-中毒症例を中心にして-」(株)思文閣出版

4)その他の参考資料
山形県衛生研究所発行 「毒に注意 山菜とキノコ」(写真:郡山女子大学 広井 勝)