すべての人の健康を守る
医政局/保険局/健康・生活衛生局

キーワード
地域医療、国民皆保険、健康づくり、受動喫煙対策、感染症対策、がん

目次

「理想の医療」を目指して

自分や大切な人が病気になったとき、人はどんな思いを抱くのでしょう。悲しみや不安を感じながらも、病気を治し仕事を続けたい、最期まで家族と一緒にいたい、といった願いを、多くの人が持つのではないでしょうか。だからこそ、医療には大きな期待が寄せられています。医師・病院機能バランスの最適化、最新技術による効果的医療の実施、医薬品産業振興などあらゆる手段で、国民一人ひとりにとって理想の医療を実現します。

地域生活を支える

「病気になっても自分の住み慣れた地域で家族や友人と生活を続けたい」と多くの人が希望する一方で、困ったときに相談できる医療機関がない、自宅まで診療に来てくれる医師がない、といった課題により、その希望が叶わないこともあります。今後、高齢化が進み、こうした現実に直面するおそれのある方々が増加するからこそ、「一人ひとりの自分らしい生活を支える」ための医療の実現に取り組む必要があります。このため、急性期やリハビリといった様々な医療をどう整備していくか、在宅医療を行ってくれる診療所をどのように確保するか、特定地域への医師の偏りをどのように是正していくか、といったことに取り組んでいます。

医師の働き方改革

社会全体の働き方改革が進む中、長時間労働が常態化してしまっている医師の負担を軽減していくことが重要です。そのため、医師と、医療機関で働く他の専門人材との役割分担の見直し(タスク・シフト/タスク・シェア)や、病院のマネジメント改革に対する支援等による医師の労働時間削減と地域医療の確保の両立について検討しています。日本全国の医師の方々はもちろん、地域医療のあり方に大きなインパクトを与える改革であり、制度・財政の両面から中長期的対応を進めます。

医薬品・医療機器産業におけるイノベーション促進

ベンチャー企業と大手企業等とのマッチングイベント

日本は数少ない新薬創出国である上に、最先端のものづくり技術を有することも相まって、医薬品・医療機器産業は今後の経済成長を担うことを期待されています。近年は、高度な科学技術を革新的な医薬品等の創出につなげる中で重要な役割を果たすベンチャー企業を支援すべく、医療系ベンチャーが各開発段階で抱える課題に関する相談対応や事業戦略の策定等による支援等を行っています。

また、カルテデータなどのいわゆる「リアルワールドデータ」の安全な利活用を促し、革新的な製品の開発環境の整備に集中的に取り組むなど、医薬品・医療機器産業の発展に向けた挑戦を続けています。

日本の医療の国際展開

日本とロシアとの会合の様子

日本の医療を世界に発信し、海外諸国の医療水準の向上に貢献しています。25の国々と協力し、政策形成支援や人材育成を中心とした事業を実施しています。実際に各国を訪れる中で把握した課題やニーズに合わせて、日本の医療技術を活用したトレーニングの実施や日本の制度の紹介など、厚生労働省が医療・保健分野における日本と世界の「橋渡し」の役割も果たしています。これまでの取組の成果が、がん医療の技術の向上、健診の普及といった様々な形で現れはじめています。

災害医療提供体制

災害派遣医療チーム(DMAT)の被災地での活動

地震、台風などの自然災害の多い日本にとって、国民の命を守るためには、災害時でも十分に対応できる医療体制が不可欠です。そして、大きな災害に立て続けに見舞われた近年、その重要性は更に高まっています。このため、災害発生時に地域の中で中心的役割を担う「災害拠点病院」の整備や、災害派遣医療チーム(DMAT)の養成などに取り組むほか、災害発生時には関係団体・都道府県などと緊密に連携し、病院の安定的運営や医薬品の確保等を全力で支援します。

世界に冠たる医療保険制度を将来世代につなぐ

日本では、誰もが直面しうる医療リスクを国民全体で分かち合う国民皆保険が60年前に達成され、保険証1枚で、全ての人がいつでも、どこでも、必要な医療を受けることができます。今や国民にとって身近で当たり前の医療保険制度は、現在、人生100年時代を見据え、医療ニーズと費用負担のバランス等の諸課題に直面しています。この世界に冠たる国民皆保険を堅持し、将来にわたって持続可能なものにするために、あらゆる方策を絶えず考えていくことが私達の使命です。

持続可能な医療保険制度を構築する

日本では、国民皆保険を通じ、国民全員が、病気やけがの際、所得の多寡にかかわらず、必要な医療を平等に受けることができ、世界最高レベルの平均寿命と保健医療水準を実現してきました。

しかし、近年、高齢化の進展や医療の高度化等により、医療費の増大が進み、特に、その大半を占める75歳以上高齢者の医療費の約4割は現役世代の拠出金で賄われ、現役世代の負担が大きくなっています。

国民生活を保障する国民皆保険を将来にわたって堅持しつつ、全世代の納得感を得られる時代に合わせた見直しが必要です。

厚生労働省では、医療の重点化・効率化、世代間・世代内の負担の公平化、制度の安定化に向け、国民健康保険の財政基盤の強化や被用者保険相互の支え合いの強化のほか、国民の負担の公平化を進める取組、国民一人一人が自ら健康づくりを行うよう、個人や保険者の予防・健康づくりを促す仕組みづくりに向けた取組等の改革に取り組んでいます。

健康寿命の延伸に向けた予防・健康づくり

「人生100年時代」の到来を見据え、健康寿命を高めていくために、医療のあり方を「治療偏重型」から「予防重視型」にシフトさせていくことが保険局の「新時代ミッション」です。

医療保険と介護保険のレセプトデータ等を全国規模で収集・分析し、質の高い保健医療サービスの提供に繋げる「データヘルス改革」、地域で個人の医療・介護・健診データを一体的に分析し、個々の状態に応じた保健サービス(運動・口腔・栄養プログラム)を提供する「保健事業改革」などに取り組んでいます。

また、予防・健康づくりを日本全国で取り組む国民運動にするため、経済団体、医療団体、医療保険者などの民間組織や地方自治体、厚生労働省などが連携して取組を進める「日本健康会議」を発足し、保険者が行う、内臓脂肪の蓄積に着目した特定健診(メタボ健診)や人工透析の原疾患となる糖尿病性腎症の重症化予防等の創意工夫の取組の「見える化」や先進事例の「横展開」、保険者インセンティブの強化を進めています。

診療報酬改定

中央社会保険医療協議会から答申を受け取る小島厚生労働大臣政務官(2020年2月)

診療報酬は、医療機関や薬局が保健医療サービスの対価として受け取る報酬であり、1点10円として全国一律に適用されています。

診療報酬改定は基本的に2年に1度行われ、中央社会保険医療協議会での議論を踏まえ、厚生労働大臣が決定します。設定される報酬点数は、今求められている医療サービスの質や量の向上を後押しするもので、サービスごとの改定の議論は、まさに医療の方向性を決める議論となります。

令和2年度診療報酬改定では、人生100年時代に向けた「全世代型社会保障」を構築すべく、患者・国民にとって身近で、安全・安心で質の高い医療の実現、効率化・適正化を通じた制度の持続可能性に配慮した内容としています。さらに、医療従事者の負担軽減や医師等の働き方改革に関する内容も盛り込まれ、時間外労働の上限規制の適用が開始される2024年4月に向けて、医師等の働き方改革を進めていく観点からも、重要な改定となります。

医療保険制度改革

2025年には、団塊の世代が75歳以上の高齢者となる中で、世界に冠たる日本の医療保険制度を将来世代に着実に引き継いでいくためには、現役世代の負担上昇に歯止めをかけることは待ったなしの課題です。

このため、年齢ではなく、能力に応じた負担へと見直しを進め、現役世代の負担上昇を抑える観点から、2019年12月に取りまとめられた全世代型社会保障検討会議の中間報告の方向性に基づき、①75歳以上の高齢者であっても一定所得以上の方について、新たに窓口負担割合を2割とすることや、②かかりつけ医機能の強化等を図るため、大病院の受診に定額負担を求める仕組みの拡大について、具体的な検討を進め、2020年夏までに成案を取りまとめることとしています。

オンライン資格確認の導入

医療分野での情報化の推進による良質な医療の効率的な提供は社会的要請です。これに応えるため、医療機関の窓口で、マイナンバーカードのICチップ等により、オンラインで資格情報の確認ができるシステムを、2021年3月から順次稼働予定です。

これにより、マイナンバーカードの健康保険証利用や、保険診療の受診可能患者かどうかの即時確認が可能となり、レセプトの返戻や窓口の入力の手間が減ります。

また、このシステムを活用し、マイナポータルで自分の薬剤情報や特定健診情報をいつでも確認できるようにすることで、自らの健康管理や予防に役立てていただくことが可能になります。

すべての人の健康を守り、支える

人生100年時代を見据え、健康寿命の延伸を図ることで、国民誰もがより長く元気に活躍できるようにするとともに、少子高齢化の進行の中で、社会保障の担い手を確保するため、健康・予防づくり、がん対策、難病対策などに取り組んでいます。また、国内外の感染症への対応や国際保健への貢献にも取り組んでいます。

予防・健康づくり

第8回健康寿命をのばそう!アワードの様子(スマート・ライフ・プロジェクト2019公式キャラクター 野村萬斎さん)

健康寿命を延ばし、誰もがより長く元気に活躍できる社会を目指して、生活習慣病予防等を推進しています。企業や地域を巻き込み、健康な食事や運動ができる環境整備など、予防・健康づくりの取組を支援しています。

望まない受動喫煙のない社会へ

受動喫煙対策啓発ポスター

他人の喫煙によりたばこから発生した煙にさらされることを「受動喫煙」といいます。受動喫煙をうけると肺がんなどのリスクが上昇します。

東京2020オリンピック・パラリンピックも契機として、望まない受動喫煙を防止するため、改正健康増進法が令和2年4月に全面的に施行されました。国民の皆さんの健康増進につながるよう、対策を進めています。

がんを知り、がんの克服を目指す

がんは、昭和56年以降、我が国における死因の第1位であり、生涯のうち2人に1人ががんになるとされています。がんは依然として国民の生命と健康にとって重大な課題です。

このため、がん対策の基本となるがん対策推進基本計画に基づき、がん検診の受診勧奨、がんゲノム医療の推進、がんの治療と仕事の両立支援など様々な対策を進めています。

がんの克服を目指し、今後もがん対策に全力で取り組んでいきます。

感染症の発生・蔓延を予防し、国民の安心・安全を支える

風しん対策啓発ポスター

鳥インフルエンザやエボラ出血熱など、人・モノの国際的な移動の活発化に伴い、感染症の危機は国境を越えて迫っています。これまでも検疫所の機能強化による流入防止、国内発生時の行政や医療機関の対応力強化に取り組んできましたが、さらに、東京2020オリンピック・パラリンピックに向け取組を強化しています。

国民の皆さんに対しては、平時から感染症に対する正しい知識の普及と予防接種等の予防策を推進することで、安心・安全の確保に努めています。

特に、平成30年7月頃から風しんの患者数が増加したため、これまで予防接種法による定期接種を受ける機会がなかった男性に対して抗体検査と予防接種を組み合わせて実施する新たな対策を取りまとめ、推進しています。

さらに、近年世界的な問題となっている抗生物質の効かない薬剤耐性菌については、令和元年に日本で開催されたG20保健大臣会合でも議題として取り上げ、議長国として対策をまとめるなど、各国を主導して薬剤耐性(AMR)対策を行っています。

ハンセン病の偏見差別解消

ハンセン病「グローバル・アピール2020」に参加する安倍総理と加藤厚生労働大臣

ハンセン病は、感染力が弱く、治療法も確立され、適切な治療により後遺症なく治る病気です。しかし、過去の国の不適切な施設入所施策により、患者・元患者やご家族の方々は、長年にわたり、差別や偏見などにより苦痛や苦難を強いられてきました。当事者の方々との協議等を通じ、政府をあげて依然として残る差別や偏見の根絶などに全力で取り組んでいます。

栄養サミット

我が国では、食事・人材・エビデンスを組み合わせた栄養政策を通じて、戦後の食料難による低栄養、経済成長に伴う過栄養のほか、近年では、低栄養と過栄養が同じ国で重複して発生する「栄養不良の二重負荷」への取組を進めてきました。

今後日本で開催予定の東京栄養サミットでは、国際的な栄養改善の推進・持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できるよう、準備を進めています。