クラス発表で、頭の中が真っ白に
KOHさん(16)の場合

うちは親が2人とも学校の先生で、小さい頃から厳しかったんです。ご飯を食べながらテーブルにひじをつこうものなら、父の鉄拳が飛んでくる感じで。いつもビクビクしながら食べていたので、すぐにおなかいっぱいになっちゃうんですけど、残そうものなら、また怒られる。だから、無理やり食べ物を口に突っ込んでいて、何を食べたかわかんないまま食事が終わる感じでした。

どうしたら親に気に入ってもらえるかって、そればかり考えていたので、勉強は頑張りましたよ。でも、テストでいい点を取っても、自分に自信がもてなくて……。

「明るいKOHちゃん」って感じのキャラだから友達はわりと多かったけど、いつも「こんなこと言ったら嫌われるんじゃないか」って思ってて、深い話なんか絶対できなかったな。

つらかったのは中3のとき。もともと発表とかは苦手だったんですけど、あるとき授業で前に出たとき、急に頭に血がのぼって冷や汗が出て、ひざがガクガクして、口ごもっちゃったんです。クラスがしーんと静まりかえって、もう最悪でした。

それ以来、人前に出るのが怖くなって、学校に行こうと思うとおなかが痛くなって下痢するようになったんです。親に近くの内科に連れて行かれたけど、「どこも悪くない」って言われて、「気持ちの問題なんだ……」って思ったら、余計に落ち込みました。

2～3週、学校を休んだんですけど、意外なことに、あの厳しい父も母も、何も言ってこなかったんです。いつも通り仕事に出かけてくれたのが、逆に楽でしたね。

うれしかったのは友達の一人が、うちに何度も来てくれたこと。何を話すってわけでもなくて、ただ一緒にCD聴いたり、雑誌を見たりしてただけなんですけど、その時間が心地よくて、だんだん不安が消えていった気がします。

高校に入ってからは毎日楽しいですよ。親が行かせたがっていた学校じゃないんですけど、「将来、デザイン関係の仕事をしたいから」って言って、自分で決めたんです。

今もたまに緊張して震えちゃうことはあるんですけど、周りの人は自分が思うほど気にしてないってことがわかったから、ホッとしてます。ま、そのうち治るよ、って（笑）。

中学の友達とは高校が別になったけど、いつもメールしてます。同じクラスの子には話せないことも話せるし、すごい楽です。こんな私でもつきあってくれる友達がいるってことが、うれしいです。

今では、何かあると一人で抱え込まないで、誰かに話すようになりました。そのほうが気持ち的に楽になるってことがだんだんわかってきたんです。

人間だから、誰でもつらいときとか、しんどいときってあるから、恥ずかしがらずに誰かに話したりするのって大事なんだなって思います。