大勢の人の前で話すときや大事な試験のとき、緊張して汗をかいたり、心臓がドキドキしたりするのは当たり前の反応です。でも心配や不安が過度になりすぎて、日常生活に影響が出ていたら、それは不安障害かもしれません。不安障害は、精神的な不安から、こころと体に様々な不快な変化が起きるものです。ひとくちに不安障害といっても様々な病気があるので、代表的なものをご紹介します。
突然理由もなく激しい不安に襲われて、心臓がドキドキする、めまいがしてふらふらする、呼吸が苦しくなるといった状態となり、場合によっては死んでしまうのではないかという恐怖を覚えることもあります。このような発作的な不安や体の異常な反応は「パニック発作」と呼ばれており、パニック発作がくりかえされる病気をパニック障害と呼んでいます。
パニック発作では、次のような症状が突然表れて、10分以内にピークに達します。
パニック障害では、パニック発作になったときの苦しさや怖さから、「また発作が起きたらどうしよう」と心配になることが多く、これを「予期不安」といいます。予期不安を感じて、電車や人混みを避ける、頼れる人がいない状況や一人で出かけることを避ける、あるいはエレベーターなど逃げられない場所を避けるようになることがあります。
人に注目されることや人前で恥ずかしい思いをすることが怖くなって、人と話すことだけでなく、人が多くいる場所(電車やバス、繁華街など)に、強い苦痛を感じる病気です。怖さのあまりパニック発作を起こすこともあります。失敗や恥ずかしい思いがきっかけになることも多いのですが、思春期の頃は、自分で自分の価値を認められなかったり自分に自信がもてなかったりすることから起きてくる場合も多くあります。
社会不安障害では、自分でも、そんなふうに恐怖を感じるのは変だなとわかってはいるけれど、その気持ちを抑えることが難しくなります。徐々に、恐怖を我慢しながら生活したり、外出や人と会うこと(怖いと感じること)を避けるようになったりします。
つまらないことだとわかっていてもある行為をやめられず、くりかえし同じことをしていないと不安でたまらなくなります。
たとえば「くりかえし手を洗い続ける」「火の元や戸締りを何度も確認する」「階段や電信柱など気になった数や、頭に浮かんだ数字を数え続ける」といったものがあります。
自分でも不合理だとわかっていても、しないではいられない「強迫行為」をくりかえすことに時間がかかってしまって、学校や日常での生活に影響が出てくることがあります。
学校のことや家族・友達のこと、生活上のいろいろなことが気になり、極度に不安や心配になる状態が半年以上続きます。
不安だけでなく、落ち着きがない、疲れやすい、集中できない、イライラする、筋肉が緊張している、眠れないといった症状もみられます。
不安障害の治療は、薬物療法とカウンセリングが中心になります。薬は、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などが使われます。また認知行動療法といわれるカウンセリングでは、こころと体をリラックスさせる、苦手なモノや場所に少しずつ慣れさせていく、極端な考え方のクセを見直すといったことをやっていきます。こうした治療を通じてストレスを軽くし、不安や恐怖に対処できるようなサポートを受けながら、苦手なことに段階的にチャレンジして、自信を取り戻すことが回復につながっていきます。