労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名 新国立劇場
事件番号 中労委平成17年(不再)第41・42号
再審査申立人 (41号)日本音楽家ユニオン・(42号)財団法人新国立劇場運営財団
再審査被申立人 (41号)財団法人新国立劇場運営財団・(42号)日本音楽家ユニオン
命令年月日 平成18年6月7日
命令区分 棄却
重要度  
事件概要 1  本件は、財団法人新国立劇場運営財団(「財団」)が、(1)平成15年2月20日付けで日本音楽家ユニオン(「ユニオン」)の会員Yに対し、新国立劇場合唱団員として不合格と通知したこと(「本件不合格措置」)、(2)ユニオンが同年3月4日付けで申し入れた「Yの次期シーズンの契約について」との事項を交渉事項とする団体交渉(「本件団交申入れ」)に、財団とYが雇用関係にないとの理由で応じなかったことが不当労働行為であるとして、同年5月6日、ユニオンが東京都労委に対して救済を申し立てた事件である。 
2  初審東京都労委は、本件不合格措置については不当労働行為には該当しないとして棄却したが、団体交渉拒否については不当労働行為に該当するとして、(1)本件団交申入れを財団とYが雇用関係にないとの理由で拒否してはならないと命じるとともに、(2)団体交渉拒否に関する文書交付及び(3)履行報告を命じた。
 これを不服として、ユニオンは、同年6月22日、初審命令の棄却部分の取消し、本件不合格措置の撤回及びYの合唱団員としての就労を求めて、財団は、初審命令の救済部分の取消し及び救済申立ての棄却を求めて、それぞれ当委員会に再審査を申し立てた。 
命令主文 本件各再審査申立てを棄却する。
判断の要旨 (1)  契約メンバーの労働者性について 
ア  本件が労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するかを判断する前提として、まずYが労組法上の労働者に当たるかについて検討すると、Yは財団の合唱団員であった当時、公演及び稽古等において歌唱技能を提供し、財団の決定及び計算による報酬を受けていた者と認められるから、自己の計算において事業を営んでいたとは言えず、労組法上の労働者に当たることは明らかである。 
イ  次に、Yが財団との関係でも労働者と言えるか、すなわちYと財団との間に労組法上の労使関係があり、財団がここにいう使用者に当たるかについて検討すると、財団の合唱団員は、財団による公演出演の発注に対して諾否の自由が制約されており、特段の事情のない限り当然に応諾するものとみなされて、財団が興行として実施する個別公演に不可欠の人員とされ、財団が一方的に指定した契約内容に基づいて、年間を通じて、財団の指揮監督の下、演目、公演や稽古の日時、場所等についての財団の指示に従って歌唱技能を提供し、これを役務とした対価としての報酬を受けているものと認められるから、Yと財団との間には労組法上の労使関係があり、Yは財団との関係でも労働者であるとともに、財団は団体交渉応諾義務を負うべき使用者たる地位を有するものと解するのが相当である。 


 
(2)  団体交渉拒否ついて
ア  本件団交申入れにおける交渉事項が義務的団体交渉事項に当たるかについて検討すると、本件不合格措置によりYとの次期契約を締結しないことが確定しており、かつ後述のとおり本件不合格措置が不利益取扱いに該当しない本件においては、既に確定したYの次期契約締結自体については財団に団体交渉応諾義務があるものと解することはできないが、労働者の労働条件ないし処遇に関わる事項は広く義務的団体交渉事項に該当し、契約締結の条件、手続のほか、将来の契約に関わる事項など、多岐にわたる事項が含まれうるものと解釈すべきであるから、「Yの次期シーズンの契約について」という交渉事項も義務的団体交渉事項に当たると解するべきである。 
イ  上記交渉事項は、一見すると不分明ないし抽象的であると言えなくはないが、団体交渉の席上において、財団は交渉事項の具体的内容について求釈明するなどの対応が可能であったのだから、交渉事項が表記上不分明であることを理由に、団体交渉自体を拒否することはできない。 
ウ  試聴会の審査方法や審査結果は、合唱団員の次期契約に関わる重要な手続事項として義務的団体交渉事項に属し、これらを含む試聴会全般のあり方に関しては、従前の協議において議論が尽くされているとは言えない。 
エ  したがって、本件団交申入れに財団が応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するとした初審判断は相当である。 
(3)  本件不合格措置について
ア  財団と合唱団員の契約関係は、試聴会の審査結果により、財団が再契約の締結を行うか否かを判断して締結されるもので、原則として契約更新を予定していたものではなく、また試聴会の審査方法や審査結果が財団の裁量を逸脱する不当なものとは認められないから、本件不合格措置には合理性がないとまでは言えない。 
イ  本件不合格措置が、Yがユニオン会員であることないし同人のユニオン会員としての活動を嫌悪して行われたという事情も認められない。 
ウ  したがって、本件不合格措置が、労組法第7条第1号の不当労働行為には該当しないとした初審判断は相当である。 
掲載文献 不当労働行為事件命令集135集《18年5月~8月》783頁

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成15年(不)第56号 一部救済  平成17年 5月10日 
東京地裁平成18年(行ウ)第459号(第1事件)・第499号(第2事件) 一部取消・棄却  平成20年 7月31日 
東京高裁平成20年(行コ)第303号 棄却  平成21年 3月25日 
最高裁平成21年(行ツ)第191号・第192号 上告棄却 平成23年1月25日
最高裁平成21年(行ヒ)第226号・第227号 上告受理 平成23年1月25日
最高裁平成21年(行ヒ)第226号・第227号 破棄差戻し 平成23年4月12日
東京高裁平成23年(行コ)第138号 一部取消・棄却 平成24年6月28日
 
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