概要情報
事件名 |
新国立劇場 |
事件番号 |
東京都労委平成15年(不)第56号
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申立人 |
日本音楽家ユニオン |
被申立人 |
財団法人新国立劇場運営財団 |
命令年月日 |
平成17年 5月10日 |
命令区分 |
一部救済(命令書主文に救済部分と棄却又は却下部分を含む) |
重要度 |
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事件概要 |
(1)財団が平成15年2月20日に組合員X1に対し、契約メンバーとして不合格と通知したこと、(2)組合が同年3月4日付けで申し入れたX1の次期シーズンの契約を議題とする団体交渉を、財団がX1と雇用関係にないことを理由に拒否したことが不当労働行為であるとして、争われた事件で、財団に、(1)平成15年3月4日付けで申し入れた団体交渉を、X1と財団が雇用関係にないとの理由で拒否することの禁止、(2)文書交付を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人財団法人新国立劇場運営財団は、申立人日本音楽家ユニオンが平成15年3月4 日付けで申し入れた団体交渉を同ユニオン会員X1と被申立人財団が雇用関係にないとの理 由で拒否してはならない。
2 被申立人財団は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人ユニオン に交付しなければならない。
記
年 月 日
日本音楽家ユニオン
代表運営委員 X1 殿
財団法人新国立劇場運営財団
理事長 Y1
当財団が、平成15年3月4日付けで貴ユニオンの申し入れた団体交渉を拒否したことは、不当労働行為であると東京都労働委員会で認定されました。 今後、このような行為を繰り返さないよう留意いたします。 (注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人財団は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。 |
判定の要旨 |
2130 雇用主でないことを理由
4901 出演契約
財団の設置するオペラ合唱団の契約メンバーは、財団と年間シーズンの出演公演、公演時期、公演回数及び当該メンバーの出演の有無等を記載した出演公演一覧の添付された出演基本契約を締結し、年間10演目程度の公演に出演し、本番及び稽古等で約230日出勤し、年収は300万円程度であるが、(1)原則として出演公演一覧に示された公演に出演すべき義務があるが、やむを得ない事情により個別出演契約をしなくてもそれだけでは契約違反としない取扱いがなされていたに過ぎず、出演依頼に対する諾否の自由が事実上制限されていたこと、(2)基本的には指揮者や財団の指揮監督下に置かれ、ソリストに比べて時間的・場所的制約を受ける度合いが格段に高いこと、(3)財団の公演、稽古及び練習に参加することが基本的条件とされ、専属性の度合いが決して低いものではないこと、(4)出演報酬に歌唱という労務の提供それ自体の対価という面があることは否定できないこと等から、団体交渉の保護を及ぼす必要性と適切性が認められる労働組合法上の労働者であると認められた例。
2130 雇用主でないことを理由
2301 人事事項
財団の設置するオペラ合唱団の契約メンバーは、財団との関係において労働組合法上の労働者に当たることから、契約メンバーである組合員X1と財団の関係が雇用関係でないという理由は団体交渉を拒否する正当な理由とはならず、また、財団がX1に次期シーズンの契約メンバーとして不合格とする旨の通知をしたことに対し、組合が不合格処分の撤回等を要求して団体交渉を申し入れているのであるから、その時点で財団が要求を根拠のない全く不当なものと考えていたとしても、少なくとも団体交渉の席についた上で、試聴会における審査方法及び審査結果が公正で妥当であったこと等を説明すべき立場にあったといえるから、財団が団体交渉に応じなかったことは正当な理由のない団交拒否に当たるとされた例。
1106 契約更新拒否
財団が組合員X1をオペラ合唱団の契約メンバーとして不合格としたことは、(1)財団が契約メンバーの契約に当たり試聴会システムを重視していたこと、(2)契約更新を前提としない現行の試聴会システムも格別非難されるものではないこと、(3)試聴会の審査手続も公正さを欠いていたとはいえず、審査内容も全体的に恣意的な結果とはいえないこと、(4)契約メンバーとして不合格になった組合員は11名中2名であり、組合員であることが試聴会の合否の結果を左右しているとの徴表は認められないこと、(5)財団がX1の組合活動に注目し、嫌悪していたとの具体的疎明もないこと等からすると、X1が組合の組合員であることないし組合活動をしたことを理由とした不利益取扱いに当たらないとされた例。
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業種・規模 |
政治・経済・文化団体 |
掲載文献 |
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評釈等情報 |
 
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