労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  南労会(賃金・一時金等) 
事件番号  中労委平成12年(不再)第3号 
中労委平成12年(不再)第4号 
再審査申立人  全国金属機械労働組合港合同南労会支部 
再審査申立人  全国金属機械労働組合港合同 
再審査申立人  医療法人南労会 
再審査被申立人  全国金属機械労働組合港合同 
再審査被申立人  医療法人南労会 
再審査被申立人  全国金属機械労働組合港合同南労会支部 
命令年月日  平成18年 3月15日 
命令区分  一部変更(初審命令を一部取消し) 
重要度   
事件概要  法人は、(1)平成3年度賃上げを実施しなかったこと、同年夏季一時金につき別組合と差別取扱いとしたこと、同年年末一時金の未妥結を理由として支払拒否したこと、(2)平成4年から同8年の間の各一時金において、遅刻早退控除、ワッペン控除及び処分等控除の導入提案により、妥結に至らしめず、支給しなかったこと、(3)平成3年度及び同4年度賃上げ並びに同3年年末一時金から同6年年末一時金に関する支部の妥結通告について、妥結の成立を否定し、各賃上げについて妥結月実施を条件とするなどして支払拒否したこと、(4)平成7年度及び同8年度賃上げについて、新賃金体系に合意することを条件とし、さらに同8年度賃上げについては、妥結月実施を条件とし、各賃上げを行わなかったこと等が不当労働行為であるとして、争われた事件で、大阪府労委は、法人に対し、平成7年度及び同8年度賃上げについて妥結月実施を条件とせず、新賃金体系に関して十分な説明を行うなど組合らと誠実に協議すること、平成4年から同8年の間の各一時金につき、遅刻早退控除、ワッペン控除及び処分等控除の実施を条件とすることなく妥結し、支払うこと及び文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。
 これを不服として法人及び組合が再審査を申し立てたが、中労委は、初審命令を変更し、その余の再審査申立てを棄却した。 
命令主文  主   文

Ⅰ 初審命令主文を次のとおり変更する。

 1 医療法人南労会は、平成4年ないし同8年の間の夏季及び年末の各一時金について、下  記の各点を条件とすることなく、全国金属機械労働組合港合同南労会支部と誠実に団体交  渉を行わなければならない。
① 平成4年ないし同8年の間の夏季及び年末の各一時金について、全国金属機械労働組   合港合同南労会支部組合員が平成3年8月4日以前の勤務時間制度にもとづいて勤務し   ていたことによって、同月5日以降の勤務時間として医療法人南労会が実施した勤務時   間制度(平成7年年末一時金並びに同8年夏季一時金及び同年年末一時金については、   同7年5月2日以降の勤務時間として業務指示書により指定された勤務時間制度)を全   国金属機械労働組合港合同南労会支部組合員に適用した場合に生じる勤務開始及び終了   時刻の差異による時間を遅刻あるいは早退と捉え、これを対象として遅刻早退を理由と   する控除を行うこと。
② 平成5年ないし同7年の間の夏季及び年末の各一時金について、医療法人南労会が平   成5年夏季一時金ないし同7年年末一時金において回答した内容及び方法(aワッペン   着用就労した各日を欠勤扱いとする、b算定対象期間の全日にワッペンを着用していた   場合には、一時金は半額支給とする、c支部組合員は算定対象期間の全日にワッペン着   用就労しているものとして取り扱う、dワッペン着用就労していない日がある場合には   全国金属機械労働組合港合同南労会支部組合員が自主申告し、着用していなかったことを証明する)によって、ワッペンを着用したことを理由とする控除を行うこと。
③ 平成7年年末一時金、同8年夏季一時金及び同年年末一時金について、支部組合員が   平成3年8月4日以前の勤務時間制度にもとづいて勤務していたことを理由とする警告   書交付や懲戒処分を理由に控除を行うこと。

 2 医療法人南労会は、上記第1項の団体交渉によって同項の各一時金について妥結が成立  した場合には、当該妥結内容に従って、全国金属機械労働組合港合同南労会支部組合員に対し、上記各一時金を支給しなければならない。

 3 医療法人南労会は、平成7年度賃上げについて全国金属機械労働組合港合同南労会支部  と誠実に団体交渉を行わなければならない。

 4 医療法人南労会は、平成8年度賃上げについて、同年4月に遡及して実施するか否かに  ついて全国金属機械労働組合港合同南労会支部と誠実に団体交渉を行わなければならな   い。

 5 医療法人南労会は、上記第3項及び第4項の団体交渉について、妥結に至ったときは、  この賃上げによって生じる前記第2項で支給すべきことになる平成7年及び同8年の夏季  及び年末の各一時金に係る差額を清算しなければならない。

 6 医療法人南労会は、全国金属機械労働組合港合同及び全国金属機械労働組合港合同南労  会支部に対し、下記の文書を本命令交付後速やかに手交しなければならない。

                  記

                          年  月  日

                     (注:年月日は手交の日を記入すること)

  全国金属機械労働組合港合同

   委員長   X1 殿

  全国金属機械労働組合港合同南労会支部

   執行委員長 X2 殿

                          医療法人南労会

                          理事長 Y1 印


 当医療法人が行った下記の行為は中央労働委員会によって不当労働行為であると認定されました。今後このような行為を繰り返さないようにします。
 (1) 平成4年夏季一時金以降同8年年末一時金までの各一時金に関する回答において、全国金属機械労働組合港合同南労会支部組合員が同3年8月5日実施の勤務時間制度に従わず、同月4日以前の勤務時間制度に基づいて勤務していたことを遅刻、早退と捉えて上記各一時金からの控除を行うと回答し、また、平成5年夏季一時金以降同7年年末一時金までの各一時金に関する回答において、全国金属機械労働組合港合同南労会支部組合員がワッペンを着用して就労していることを捉えて、ワッペンを着用して就労した日を欠勤と取り扱い、各一時金の算定対象期間の全日着用していた場合には本来全額の控除となるところ各一時金の半額を控除することとし、全国金属機械労働組合港合同南労会支部組合員についてはその全日についてワッペン着用就労しているものとみなし、ワッペン着用就労しなかった日については、各組合員が自主申告することとの回答をなし、さらに、平成7年年末一時金、同8年夏季一時金及び同年年末一時金に関する回答において、全国金属機械労働組合港合同南労会支部組合員が同3年8月4日以前の勤務時間制度で就労していることについて警告書を交付し、あるいは懲戒処分を行ったことを理由とする控除を行うことを回答し、これらの控除を行うことを各一時金支給の条件としたことによって、上記各一時金について妥結に至らず、結局、全国金属機械労働組合港合同南労会支部組合員に上記各一時金を支給しなかったこと。
  (2) 平成7年度賃上げ及び同8年度賃上げに関する交渉において、新賃金体系への移行に合意するとの妥結の条件としながら、これについて十分な説明、協議を行わなかったこと。
  (3) 平成8年度賃上げに関する回答において、妥結月から実施することを妥結の条件としたこと。

7 全国金属機械労働組合港合同及び全国金属機械労働組合港合同南労会支部のその余の救  済申立てを棄却する。


Ⅱ その余の本件各再審査申立てを棄却する。 
判定の要旨  1201 支払い遅延・給付差別
法人が平成3年度賃上げを実施しなかったのは、同賃上げについて、支部との間で、妥結に至らなかったためであり、妥結に至らなかったことについて、法人が支部を他組合と差別的取扱いをしたということができず、妥結できない状況に支部を追い込んだということもできないことから、同年度賃上げを実施しなかったことを不当労働行為であるということはできないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
法人が、平成3年夏季一時金について支部組合員に対して清算を行っていないのは、同年度賃上げが未妥結のままであり、一時金の算定基礎である平均基本給の額を確定することができない事情によるものと認めることができ、他に特段の事情を認めることができないことから、法人が支部組合員に対して同一時金の清算を行っていないことをもって、他組合と差別的に取り扱ったものということはできず、不当労働行為には当たらないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
平成3年年末一時金について、法人が、支部が到底受け入れることのできないような条件を付しているなど、支部が受け入れないことが無理からぬと認められるとすべき事情は存しないのであるので、同一時金が支払われないことをもって不当労働行為とすることはできないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
法人が、遅刻早退控除の導入を妥結の条件とし、その結果合意・妥結が成立せず、平成4年夏季一時金を支部組合員に支給しなかったことは、3年変更に反対する支部及び3年変更前の勤務時間に従って勤務している支部組合員を嫌悪し、法人の方針に従わせるためにことさら不利益に取り扱ったものとみることができるものであり、また、組合らの運営に支配介入しその弱体化を図ったものということができるとされた例。

2240 説明・説得の程度
法人は、支部からの遅刻早退回数の明示要求に対しこれを拒否し、遅刻早退控除が実施された場合の支部組合員に対する影響について十分な説明を行っておらず、このような対応は、遅刻早退控除について誠実な団体交渉を行ったものとは認めることができないとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
2803 その他
ワッペン控除に係る法人の行為は、労務の受領をしながら、平成5年夏季一時金の半額までという相当大幅な減額を行おうとするものであり、その方法は、ワッペン着用の有無を現認しない杜撰なものであって、相当と認められる範囲を超えるもので合理性を欠くものであり、このことにより支部組合員に一時金を支給しないという経済的不利益を与え、もって組合らを弱体化することを目的とした不当労働行為であるといわざるを得ないとされた例。

2244 特定条件の固執
重要な労働条件の変更を行うものである新賃金体系については支部とは実質的な協議を行うことのないまま、新たに新賃金体系への合意を条件として支部に新賃金体系への同意を求め、同意しなければ平成7年度賃上げを実施しないとして同年度賃上げを実施していないので、新賃金体系への移行に関する法人の対応については、誠実な団体交渉を行ったものとは認められず、労組法第7条第2号に該当するとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
平成7年年末一時金について合意が成立せず、支部組合員に対して同一時金を支給しなかったことは、3年変更及び7年変更に従わず、支部の指示に従い3年変更前の勤務制度に従って勤務している支部組合員をその活動のゆえに不利益に取り扱おうとするものであり、同時に支部の運営に支配介入するものであるとされた例。

1201 支払い遅延・給付差別
平成8年度賃上げにおいて、法人が妥結の条件として提案した妥結月実施条項は、新賃金体系に関する不誠実な団体交渉という不当労働行為を介在させることによって、組合らの方針を変更させるために行われたものであると評さざるを得ないものであって、組合らの弱体化を企図したものであり、その運営に支配介入したものといわざるを得ないものであるとされた例。

業種・規模  医療業 
掲載文献   
評釈等情報   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成4年(不)第30号、平成4年(不)第33号、平成5年(不)第2号、平成6年(不)第19号、平成7年(不)第27号、平成7年(不)第28号、平成7年(不)第53号、平成8年(不)第28号、平成9年(不)第16号及び平成9年(不)第17号 棄却(4-30)、一部救済(7-53、9-16)、全部救済(その他) 平成11年12月27日
大阪府労委平成10年(不)第27号 一部救済 平成12年7月17日
中労委平成12年(不再)第45号・第47号 一部変更 平成18年7月5日
東京地裁平成18年(行ウ)第238号 平成18年(行ウ)第462号 一部取消 平成20年4月23日
東京地裁平成18年(行ク)第330号、第364号 緊急命令申立ての一部認容 平成20年4月23日
東京高裁平成20年(行コ)第240号 棄却 平成21年5月28日
最高裁平成21年(行ツ)第267号
最高裁平成21年(行ヒ)第341号
上告棄却・不受理決定 平成22年2月4日
最高裁平成21年(行ヒ)第342号 不受理決定 平成22年2月4日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約363KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。