概要情報
事件名 |
南労会(賃金・一時金等)・(平成9年度賃上げ等) |
事件番号 |
東京地裁平成18年(行ウ)第238号 平成18年(行ウ)第462号 |
原告 |
医療法人南労会 |
被告 |
国(裁決行政庁:中央労働委員会) |
被告補助参加人 |
全国金属機械労働組合港合同 |
被告補助参加人 |
全国金属機械労働組合港合同南労会支部 |
判決年月日 |
平成20年4月23日 |
判決区分 |
一部取消 |
重要度 |
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事件概要 |
「238号事件」について X組合とその支部(以下「X組合ら」という。)は、平成3年度、4年度、7年度、8年度の各賃上げ並びに各年度の夏季一時金、年末一時金を巡り、Y医療法人(以下「Y法人」という。)が誠実に団体交渉に応じないこと等の不当労働行為があるとして大阪府労委に救済を申し立てた。大阪府労委は、X組合らの申立てを一部容れ、Y法人に誠実団交等を命じる旨の命令を発した。Y法人はこれを不服として、中労委に再審査を申し立てた。中労委は、大阪府労委の命令を一部を変更する命令を発したが、Y法人はこの命令の取消しを求めた。
「462号事件」について X組合らは、平成9年度の賃上げ並びに夏季一時金、年末一時金を巡り、Y法人が誠実に団体交渉の応じないこと等の不当労働行為があるとして、大阪府労委に救済を申し立てた。大阪府労委は、Y法人に対して、誠実団交等を命じる旨の一部救済命令を発したが、Y法人及びX組合らは、これを不服として中労委に再審査を申し立てた。中労委は大阪府労委の命令を一部変更する旨の命令を発したが、Y法人はこの命令の取消しを求めた。 本件では、上記238号事件と462号事件とが併合された。
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判決主文 |
1裁決行政庁が中労委平成12年(不再)第3号及び同第4号併合事 件について平成18年3月15日付けで発した命令主文第Ⅰ項の3な いし6を取り消す。 2 裁決行政庁が中労委平成12年(不再)第45号及び同第47号併 合事件について平成18年7月5日付けで発した命令主文第Ⅰ項3な いし5を取り消す。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,補助参加によって生じた部分はこれを4分し,その1 を被告補助参加人らの負担とし,その余を原告の負担とし,その余の 費用はこれを4分し,その1を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 |
判決の要旨 |
① Y法人がX組合の支部の同意を得ないまま、旧就業規則を変更しないで、勤務時間等を変更し、変更に従わないX組合の組合員の賃金から同組合員らが勤務していない時間相当分をカットして支給したことの不当労働行為性について(3年変更の不当労働行為性) 第二次再建案すなわち3年変更の実施は、Y法人にとって、急を要し、必要やむを得ないものであったところ、Y法人は、事前協議合意協定の趣旨を踏まえて、経営状態に関する説明会を含む多数回に及び協議又は事前折衝を重ねて第2次再建案の理解を求める努力を尽くし、それでもなおX組合の支部との合意に至らなかったのであるから、使用者であるY法人としては、3年変更前の協議等において、労働組合であるX組合の支部との第2次再建案についての合意達成の可能性を模索したものいうのが相当であり、誠実交渉義務を尽くしていないということはできない。そして、Y法人が事前合意がないまま3年変更を実施したことが、事前協議合意協定を無視し、X組合の支部の自主的運営を阻害するものであるともいえない。 したがって、3年変更におけるY法人の対応については、労働組合法7条2号及び3号の不当労働行為であるということはできない。 ② Y法人がX組合の支部の同意を得ないまま、新就業規則を実施し、Y1診 療所において週休2日制等を導入するとともに、変更に従わないX組合の組 合員の賃金から同組合員らが勤務していない時間相当分をカットして支給し たことの不当労働行為性について(7年変更の不当労働行為性) Y法人は、X組合らに対して、団体交渉等を通じて、既に週休2日制を導入していたY2病院との勤務体制の統一を図る、という説明をし、勤務パターンを示し、一定の周知期間をおいた後、個々の組合員の具体的な勤務時間を明示して、新就業規則を導入しようとしたものであるが、一方、X組合らにおいては、Y法人との妥協というよりも、Y法人を経営危機に追い込むような攻撃をし、Y1診療所の支配権を奪うような姿勢をもってY法人と交渉していたのであり、その結果、Y法人とX組合の支部との合意に至ることができなかったのであるから、使用者であるY法人は、7年変更前の協議等において、X組合らの前記姿勢に照らし、労働組合であるX組合の支部との新就業規則についての合意達成の可能性を模索したものいうのが相当であり、誠実交渉義務を尽くしていないということはできない。 そして、Y法人が事前合意がないまま7年変更を実施したことが、事前協議合意協定を無視し、X組合の支部の自主的運営を阻害するものであるともいえない。 したがって、7年変更におけるY法人の対応については、労働組合法7条2号及び3号の不当労働行為であるということはできない。 ③ 平成4年ないし平成9年の各一時金に関する団体交渉等におけるY法人の対応の不当労働行為性 平成4年ないし平成9年の各一時金に関する団体交渉等において、Y法人 が提案した遅刻早退控除、ワッペン控除、処分等控除という妥結条件は、そ の方法又は程度において合理性を欠いており、にもかかわわず、これに固執 し、当該各条件を受け入れなかったX組合らと妥結に至らないものとして、 各一時金を支給していないことは、労働組合法7条1号及び3号に該当する 不当労働行為である。 ④ 平成7年ないし平成9年の各賃上げに関する団体交渉等におけるY法人の対応の不当労働行為性 平成7年ないし平成9年の各賃上げに関する団体交渉等において、Y法人の新賃金体系の導入のための協議態様に誠実交渉義務違反はなく、新賃金体系の導入への同意及び妥結月実施を妥結の条件としてことについて、X組合らへの支配介入であるといえば、これに同意しなかった結果、賃上げ分の支払が遅れたとしても、これをX組合の組合員であることを理由に不利益に取り扱ったものということもできない。 |