概要情報
事件名 |
INAXメンテナンス |
事件番号 |
最高裁平成21年(行ヒ)第473号 |
上告人 |
国(処分行政庁:中央労働委員会) |
上告補助参加人 |
全日本建設交運一般労働組合大阪府本部 全日本建設交運一般労働組合建設一般合同支部 |
被上告人 |
株式会社INAXメンテナンス |
判決年月日 |
平成23年4月12日 |
判決区分 |
破棄自判 |
重要度 |
重要命令に係る判決 |
事件概要 |
1 Y会社が個人業務委託契約を締結して親会社の製品である住宅設備機器の修理等の業務に従事するCE(カスタマーエンジニア)が加入するX組合本部、X組合支部及びX組合支部分会からの団体交渉申入れに対し、CEは個人事業主であり労組法上の労働者に当たらないとしてこれに応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、X組合本部及び同支部が大阪府労委に救済を申し立てた事件である。 2 初審大阪府労委は、Y会社に対し、CEはY会社との関係において労組法上の労働者と認めるのが相当であり、Y会社がX組合本部及び同支部との団体交渉に応じなかったことは同法7条2号に該当する不当労働行為であるとして、Y会社に対し、団体交渉応諾、文書手交を命じた。 Y会社は、これを不服として、再審査を申し立てたところ、中労委は、初審命令を維持し、Y会社の再審査申立てを棄却した。 これに対し、Y会社はこれを不服として、東京地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は、中労委命令を支持し、Y会社の請求を棄却した。 Y会社は、同地裁判決を不服として、東京高裁に控訴したところ、同高裁は、原判決を取り消した。 このため、同高裁判決を不服として、中労委が最高裁に上告及び上告受理申立てを行ったところ、上告は棄却されたが、上告受理申立てについては受理決定され、本件において、最高裁は、原判決を破棄自判し、Y会社の控訴を棄却した。 |
判決主文 |
原判決を破棄する。 被上告人の控訴を棄却する。 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。 |
判決の要旨 |
1 原判決の判断を是認することができない理由 (1) Y会社の従業員のうち、Y会社の主たる事業である住宅設備機器に係る修理補修業務を現実に行う可能性がある者はごく一部であって、Y会社は、主として約590人いるCEをライセンス制度やランキング制度の下で管理し、全国の担当地域に割り振って日常的な修理補修等の業務に対応させていた上、各CEと調整しつつ業務日及び休日を指定し、日曜日及び祝日も各CEが交替で担当するよう要請していたのであるから、CEは、Y会社の上記事業の遂行に不可欠な労働力として、その恒常的な確保のためにY会社の組織に組み入れられていたとみるのが相当である。 (2) また、CEとY会社との間の業務委託契約の内容は、Y会社の定めた「業務委託に関する覚書」によって規律されており、個別の修理補修等の依頼内容をCEの側で変更する余地がなかったことも明らかであるから、Y会社がCEとの間の契約内容を一方的に決定していたというべきである。 (3) さらに、CEの報酬は、個別の業務委託に応じて修理補修等を行った場合に、Y会社が商品や修理内容に従ってあらかじめ決定した顧客等に対する請求金額に、当該CEにつきY会社が決定した級ごとに定められた一定率を乗じ、これに時間外手当等に相当する金額を加算する方法で支払われていたから、労務の提供の対価としての性質を有するということができる。 (4) 加えて、①Y会社から修理補修等の依頼を受けた場合、CEは業務を直ちに遂行するものとされ、修理依頼データの送信を受けた場合にCEが承諾拒否通知を行う割合は1%弱であったというのであって、業務委託契約の存続期間は1年間でY会社に異議があれば更新されないものとされていたこと、②各CEの報酬額はY会社が毎年決定する級によって差が生じており、その担当地域もY会社が決定していたこと等にも照らすと、たといCEが承諾拒否を理由に債務不履行責任を追及されることがなかったとしても、各当事者に認識や契約の実際の運用においては、CEは、基本的にY会社による個別の修理補修等の依頼に応ずべき関係にあったものとみるのが相当である。 (5) しかも、①CEは、Y会社が指定した担当地域内において、Y会社からの依頼に係る顧客先で修理補修等の業務を行うものであり、原則として業務日の午前8時半から午後7時まではY会社から発注連絡を受けることになっていた上、②顧客先に赴いて業務を行う際、INAXの子会社による作業であることを示すため、Y会社の制服を着用し、その名刺を携行し、業務終了時には業務内容等に関する所定様式のサービス報告書をY会社に送付するものとされていたほか、③INAXのブランドイメージを損ねないよう、全国的な技術水準の確保のため、修理補修等の作業手順やY会社への報告方法に加え、CEとしての心構えや役割、接客態度等までが記載された各種のマニュアルの配布を受け、これに基づく業務の遂行を求められていたから、CEは、Y会社の指定する業務遂行方法に従い、その指揮監督の下に労務の提供を行っており、かつ、その業務について場所的にも時間的にも一定の拘束を受けていたということができる。 (6) なお、原審は、CEは独自に営業活動を行って収益を上げることも認められていたともいうが、平均的なCEにとって独自の営業活動を行う時間的余裕は乏しかったものと推認される上、記録によっても、CEが自ら営業主体となって修理補修を行っていた例はほとんど存在していなかったことがうかがわれるのであって、そのような例外的な事象を重視することは相当とはいえない。 (7) 以上の諸事情を総合考慮すれば、CEは、Y会社との関係において労組法上の労働者に当たると解するのが相当である。 2 団体交渉拒否についての不当労働行為該当性 以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。 そして、本件議題はいずれもCEの労働条件その他の待遇又はX組合らとY会社との間の団体的労使関係の運営に関する事項であって、かつ、Y会社が決定することができるものと解されるから、Y会社が正当な理由なくX組合らとの団体交渉を拒否することは許されず、CEが労組法上の労働者に当たらないとの理由でこれを拒否したY会社の行為は、労組法7条2号の不当労働行為を構成する。 したがって、本件命令の取消しを求めるY会社の請求を棄却した第1審判決は正当であるから、Y会社の控訴を棄却する。 |
その他 |
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