概要情報
事件名 |
第一小型ハイヤー
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事件番号 |
札幌地裁昭和41年(行ウ)第11号
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原告
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第一小型ハイヤー株式会社
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被告
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北海道地方労働委員会
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参加人
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第一ハイヤー労働組合
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判決年月日
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昭和44年3月10日
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判決区分
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棄却
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重要度 |
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事件概要 |
1 会社が、組合内の批判勢力の活動を援助し、組合執行委員長の懲戒解雇、執行委員X1の降職、執行委員4名の出勤停止及び組合員6名の訓戒処分を行ったことが、不当労働行為であるとして争われた事件である。
2 北海道地労委は、会社に対し、組合運営に対する介入禁止及び降職された者の復帰を命じ、その余の申立てを棄却した。
本件は、これを不服として、会社が札幌地裁に行政訴訟を提起した事件であるが、同地裁は会社の請求を棄却した。
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判決主文 |
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
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判決の要旨 |
1 認定事実を総合すれば、会社は組合内の執行部に対する批判勢力と連携を保ちつつ、その活動を援助し、これを助長したこと、および会社は組合員であるX1を、組合活動をしたことを理由に降職処分に付した事実を認めることができる。
2 会社はX1の降職処分につき、右は同人が入院加療中の身でありながら会社の指示に違反し組合活動をしたのは会社の服務規定に違反し情状が重い場合であるのに拘らず、本件命令が単に自宅療養中のX2の組合活動を不問に付したことと比較して、これを不当労働行為にあたると認定したことは、これまでにも組合の書記長が同じく自宅療養中に組合活動をしたことを不問に付していることを看過して事実の認定ならびに法令の解釈を誤った違法があると主張する。
しかし、入院加療中の者が組合活動に参加した事実を捉えて直ちに届出義務違反があってひいて懲戒事由としての服務規律違反となるという解釈は、いたずらに届出義務の内容を拡大するものであって直ちに賛同し難い。もっとも病気欠勤中の者が、欠勤の趣旨に反して休暇時間を病気療養以外の目的に利用しながら使用者に対しては病気療養中である旨偽っているような場合とか、又は、その時間を病気療養以外に費やすことによって健康の回復を著しく遅延させ、早期の職場復帰を遅らしめているなど、背信性が顕著な場合には信義則上使用者はこれを理由に不利益処分を課することが許される(その対象とされた行為が組合活動である場合でも不当労働行為の成立を阻却する)余地のあることも考えられるが、それには、右被用者の行為が明らかに病気療養の目的を逸脱し、且つ他方そのような行為をなし得る以上、通常の業務にも復し得る能力を備えたと認め得るのに故意に病気欠勤をこれに利用する場合であるとか、又は明らかにその行為が病気の回復を遅らせ、それによって、使用者の業務の運営に著しい支障を来すような場合でなければならないと解すべきである。
そうだとすれば、これを個々の病状と行為の態様を具体的、相対的に判断すべきであり、一律に自宅療養中ならば処分の対象となし得ないが入院加療中ならば処分が許されるという性質のものとはいい難い。さらにその対象行為が組合活動であることによってその情状が重いと解してはならないことは労組法7条の法意に照らし明らかであり、かえってその背信性は同条の阻却事由として働くからその存否には慎重な判断がなされなければならない。
これを本件についてみると、X1の組合活動は、同人の属する組合による時限ストライキの期間中のことであり(そのストライキが違法ストであるとの証拠はない)、同人の労働力不提供自体が許容される場合であったところ、会社がX1の処分に際し特段の調査をしたことを認めるに足る証拠はなく、かえってX1の行為の態様〔注;入院中の病院から約100メートルくらい離れた職場集会に赴き、組合財政部長として組合員らに争議中の賃金カット分を交付し、約3、40分で直ちに病院に戻った等〕からすれば、入院加療中に行われたからといって、自宅療養中の者の行為と区別して特に情状が重いとは認められず、且つ右行為の態様自体労組法7条の適用を排除し得るほどの背信性が存するとは認められず、結局降職処分が右組合活動を理由として行われた以上、右入院加療中であったことは何らその不当労働行為性を喪失するものではない。
3 そうだとすれば、会社が組合内部の執行部批判勢力と連携を保ちつつその活動を援助し、これを助長した事実は労組法7条3号の支配介入に、またX1に対する降職処分は同人の組合活動を理由とするものであるから同法同条第1号の不利益取扱いにそれぞれ該当する。
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掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集11集52頁 |
その他 |
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