概要情報
事件名 |
第一小型ハイヤー
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事件番号 |
札幌高裁昭和44年(行コ)第2号
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控訴人
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第一小型ハイヤー株式会社
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被控訴人
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北海道地方労働委員会
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参加人
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第一ハイヤー労働組合
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判決年月日
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昭和47年10月17日
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判決区分
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棄却
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重要度 |
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事件概要 |
1 会社が、組合内の批判勢力の活動を援助し、組合執行委員長の懲戒解雇、執行委員X1の降職、執行委員4名の出勤停止及び組合員6名の訓戒処分を行ったことが、不当労働行為であるとして争われた事件である。
2 北海道地労委は、会社に対し、組合運営に対する介入禁止及び降職された者の復帰を命じ、その余の申立てを棄却した。
会社は、これを不服として、札幌地裁に行政訴訟を提起したが、同地裁は会社の請求を棄却した。
本件は、同地裁判決を不服として、会社が札幌高裁に控訴した事件であるが、同高裁は、控訴を棄却した。
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判決主文 |
本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
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判決の要旨 |
1 当裁判所も控訴人の請求を理由がないと判断するものであって、その理由は、付加、訂正するほかは、原判決の理由と同一であるから、これを引用する。
2 会社は、本件命令主文第1項〔注;支配介入禁止〕はその必要性を欠くと主張する。
しかし、会社は、組合内の執行部に対する批判勢力と連携を保ちつつ、その活動を援助し、助長したものであり、右審問終結当時会社において同種又は類似の行為を繰り返すおそれがあったものというべきところ、その後このようなおそれを解消させるような事情の変更があったと認めるに足る証拠はないから、審問終結後本件命令発令までに相当の期間を経過したことの故をもって、本件命令主文第1項はその必要性を欠くものとはいえない。
3 会社は、さらに本件命令主文第1項は、労組法7条3号の文言をそのまま引用したもので、抽象的であり、救済命令として違法であると主張する。
しかし、命令主文だけを取り出して見れば、法文の繰り返しにすぎないように見えるものでも、理由をも含めて救済命令を全部見れば、その命令の趣旨を具体的なものとして理解することも可能な場合も少なくなく、本件命令主文第1項も、命令全部を読めば、会社に対し、理由中で認定されているように、組合内の批判勢力と連携を保ち、その活動を援助するなどして、組合の運営に介入してはならないという趣旨であることは明らかである。
会社が主張するとおり、救済命令に違反したときは、過料または刑罰の制裁があることよりすれば、救済命令の内容は、出来るだけ具体的であることが望ましいが、事件の性質上技術的に困難であり、内容の限定がかえって使用者の脱法手段を招くおそれがあるような場合には、不当労働行為制度の目的に照らし、その実効性を確保するために、ある程度抽象的な内容の救済命令発することも直ちに違法ということはできない。
使用者が組合内の批判勢力と連携し、これを援助する場合、使用者はさまざまな手段、方法を選ぶことができるから、先にあった特定の手段、方法だけを禁止しても、不当労働行為制度の目的は殆んど達せられないことになる。
したがって、このようなおそれの存する限り、本件命令主文第1項のような命令も許されるものと解すべきところ、会社には、このようなおそれが十分にあったものというべきである。
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掲載文献 |
労働委員会関係裁判例集12集359頁 |
その他 |
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