労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  西日本旅客鉄道(大阪・岡山不採用) 
事件番号  東京地裁平成 6年(行ウ)第72号 
       平成 8年(行ウ)第35号 
原告  個人1名 
原告  個人2名 
原告  国鉄労働組合岡山地方本部 
原告  国鉄労働組合近畿地方本部 
被告  中央労働委員会 
被告参加人  西日本旅客鉄道株式会社 
判決年月日  平成12年 5月31日 
判決区分  請求の棄却 
重要度   
事件概要  国鉄改革として参加人が設立され、国鉄から旅客鉄道事業、貨物鉄道 事業を承継したが、国鉄の職員であり国労の組合員であった甲事件原告X1、同X2及び乙事件原告X3が参加人に採用されな かった。この件に関し甲事件原告ら及び乙事件原告らが労働委員会に対してそれぞれ救済申立てをしたが、被告はこれらを棄却す る各命令を発した。本件は、原告らが被告の右各命令の取消しを求める行政訴訟を提起していたが、大阪地裁は、原告らの請求を いずれも棄却した。 
判決主文  1、原告らの請求をいずれも棄却する。
2、訴訟費用は参加によって生じた訴訟費用を含めて原告らの負担とする。
判決の要旨  1500 不採用
1501 黄犬契約
新規採用は、「労働者が労働組合に加入せず、若しくは労働組合を脱退することを雇用条件とすること」に当たる場合を除き、不 当労働行為に該当せず、労働者の再雇用の拒否、営業譲渡の場合は、既に存する労働契約関係における不利益取扱いとして不当労 働行為該当性を肯定することができるか否かの問題として検討すべきとされた例。

1500 不採用
改革法二三条は、設立委員が承継法人の職員の募集、採用を行うこととしており、かつ、設立委員から採用する旨の通知を受けた 者であって附則二項の規定の施行の際、現に国鉄の職員である者は、承継法人の設立の時において、当該承継法人の職員として採 用されることとしているのであって、これは、同法二三条による採用を新規採用として行うものとする趣旨であると解するのが相 当であるとされた例。

1500 不採用
4911 解散事業における使用者
改革法は、採用手続きに段階を設け、各段階ごとに行う事務手続きの内容とその主体及び権限を規定しており、国鉄が行った採用 予定候補者の選定及び採用予定候補者名簿の作成過程において、労働組合の所属等による差別的取扱いと目される行為があり、設 立委員がその採用候補者名簿に基づき採用予定者を決定して採用を通知した結果、それが不当労働行為に該当すると判断される場 合、その責任は設立委員に帰属すると解することは困難であって、各権限の保有主体はそれぞれの権限の行使に関して労働組合法 七条一号の使用者性が認められ、それぞれの権限行使に応じて不当労働行為責任が帰属するものと解するのが相当であるとされた 例。

1500 不採用
1501 黄犬契約
設立委員は採用の基準を決定する権限を有するから、これから雇用契約を締結することのできる地位にあり、この地位に基づき労 組法七条一号後段にいう「雇用条件」を定めることのできる者として、同法七条一号にいう「使用者」に当たることになるとされ た例。

1500 不採用
4911 解散事業における使用者
承継法人の職員の採用は、設立委員が国鉄を通じ労働条件及び職員の採用の基準を提示して職員の募集を行うことを不可欠の手続 きとして内包しているから、募集段階において設立委員の行為と見ることのできる国鉄の行為は、承継法人の職員の採用について 承継法人の設立委員がした行為に当たり、改革法二三条五項による当該承継法人がした行為とされるものと解するのが相当である とされた例。

1500 不採用
1501 黄犬契約
新規採用は、使用者に採用の自由があることに照らし、不当労働行為に当たらないと解すべきであるが、新規採用であっても、黄 犬契約は禁止されており(労働組合法七条一号後段)、その趣旨に照らせば、組合員でないことを募集条件に掲げた上で、組合員 を不採用とすることも、労働組合法七条一号後段に準じ、許されないものと解するのが相当である。

1500 不採用
4911 解散事業における使用者
改革法が承継法人の職員の採用については専ら採用を決定する側に自由があることを規定しており、同法二三条はこれに基づく採 用候補者の決定につき採用の自由を付与したものと解するのが相当であること、同法二三条による採用は新規採用に当たること等 からすれば、国鉄と会社らとが実質的に同一であることを理由に国鉄が行った採用候補者の選定及び名簿の作成につき原告らに不 当労働行為責任が帰属するものということはできない。

1500 不採用
1501 黄犬契約
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
労使共同宣言、人材活用センターの設置及び配属、国鉄幹部職員及び職制の言動に関する事実等をもって、国鉄が組合差別的な募 集条件を付加したことを認めるに足りる証拠はないから、設立委員が、設立委員の行為とみることができる国鉄の行為を含めて、 提示した採用基準により不当労働行為を行ったということはできないとされた例。

1500 不採用
4911 解散事業における使用者
6342 不利益取扱いに関する不当労働行為の成否の判断の誤り
改革法が承継法人の職員の採用については専ら採用を決定する側に自由があることを規定しており、同法二三条はこれに基づく採 用候補者の決定につき採用の自由を付与したものと解するのが相当であり、同条による採用は新規採用に当たることから、組合の 主張する実質的同一性の法理を肯定することができるか否かはともかくとして、国鉄と会社らが実質的に同一であることを理由に 国鉄が行った採用候補者の選定及び名簿の作成につき会社らに不当労働行為責任が帰属するものということはできないとされた 例。

1500 不採用
ILO条約加盟国が自国の法律をもって労働者が労働組合の組合員であること等を理由として(決定的動機として)採用しないこ とを不当労働行為として禁止することはILO九八号条約一条一項及び二項にかなうものであるが、実際には立証が困難であり救 済の実効性に乏しいという問題があるから、ILO九八号条約は救済に当たる機関及び手続の整備と併せて条約加盟国の立法政策 にゆだねることとしたものと解するのが相当であり、ILO九八号条約一条一項の定めは、新規採用の場合が労働組合法七条一項 前段の不当労働行為には該当しないとの解釈の妨げにはならないとされた例。

業種・規模  鉄道業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集35集348頁 
評釈等情報  中央労働時報 2000年7月10日 970号 25頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
大阪地労委昭和62年(不)第82号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  昭和63年11月28日 決定 
岡山地労委昭和62年(不)第5号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  平成 2年 1月12日 決定 
中労委昭和63年(不再)第66号 全部変更(初審命令を全部取消し)  平成 5年12月15日 決定 
東京地裁平成 7年(行ク)第27号 参加申立ての却下  平成 7年 8月24日 決定 
中労委平成 2年(不再)第11号 全部変更(初審命令を全部取消し)  平成 7年11月 1日 判決 
東京高裁平成 7年(行ス)第4号 参加決定  平成 8年 3月25日 決定 
最高裁平成 8年(行ト)第22号 参加決定  平成 8年11月 1日 決定 
東京高裁平成12年(行コ)第210号 控訴の棄却  平成13年12月26日 判決 
 
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