労働委員会関係裁判例データベース

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概要情報
事件名  済生会中央病院 
事件番号  東京高裁昭和60年(行コ)第78号 
控訴人  社会福祉法人恩賜財団済生会 
被控訴人  中央労働委員会 
被控訴人参加人  全済生会労働組合 
被控訴人参加人  全済生会労働組合中央病院支部 
判決年月日  昭和61年 3月31日 
判決区分  控訴の棄却 
重要度   
事件概要  本件は、昭和60年7月19日に最高裁が破棄差戻した事件の差戻審の判決である。事件の内容は、病院が、一時金の算定基礎となる新賃金が未妥結であることを理由に昭和51年夏季及び年末一時金を組合員に支給しなかったことが争われたもので、済生会及び病院は、初審東京地労委の救済命令を支持した中労委命令の取消しを求めて行政訴訟を提起し、東京地裁は、済生会の請求を棄却し、病院の訴については訴訟当事者能力なしとして却下したが、東京高裁は、済生会には病院あての命令の取消しを求める訴の利益はなく、また、ポスト・ノーティスの提示期間は経過しており、履行不能であるから、これの取消しを求める利益もないとし、一審の請求棄却部分を取消した。これに対して最高裁は、病院を名宛人としている命令部分は実質的には済生会を名宛人として、これに対して命令内容の実現を義務づける趣旨のものであること、ポスト・ノーティスについても命令が命じている掲示期間が経過したからといって、履行しない限り掲示義務は消滅しないと判断し、原判決の済生会に関する部分を破棄し、東京高裁に差し戻した。東京高裁は、最高裁判決の趣旨にのっとり、東京地裁の判決を支持し、済生会の本件控訴を棄却する旨の判決を言渡した。 
判決主文  本件控訴を棄却する。
 差し戻し前の控訴審及び上告審の訴訟費用中控訴人に関する分並びに差戻後の控訴審における訴訟費用は全部控訴人の負担とする。 
判決の要旨  2245 引き延ばし
6344 支配介入に関する不当労働行為の成否の判断の誤り
新賃金が未確定であることを口実に病院が一時金に関する交渉、妥結を引き延ばし一時金の支給を遅延させたことが不当労働行為であるとした原判決は相当である。

4300 労組法7条2号(団交拒否)の場合
年末一時金要求に当たり、交渉が延ばされていた状況下において、支給日現在在籍者条項が付された実額方式の協定案を示したからといって、既に行われた不当労働行為が払拭され、組合の救済利益が喪失されたといえないとした原判決は相当である。

5008 その他
6320 労委の裁量権と司法審査の範囲
一時金交渉が容易に妥結し難い状況下では、長期間に亘って支部組合の不利益が大きく、これを早急に回復させるべき必要性が認められるから、労委が、労使間の合意がないにもかかわらず一時金の支払いを命ずることも、裁量権を付与した目的を逸脱し、これを濫用したと認めることはできない。

4905 経営補助者
独立の法人格を有しない病院を被申立人と表示し名宛人とした救済命令は、表示上の名宛人を支配する実質上の使用者を名宛人とし命令の内容を実現することを義務づける趣旨の命令と解した原判決は相当である。

業種・規模  医療業 
掲載文献  労働委員会関係裁判例集21集233頁 
評釈等情報  労働判例 476号 42頁 

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顛末情報
行訴番号/事件番号 判決区分/命令区分 判決年月日/命令年月日
東京地労委昭和52年(不)第29号 全部救済(命令主文に棄却又は却下部分を含まない)  昭和52年 8月 2日 決定 
中労委昭和52年(不再)第58号 再審査棄却(初審命令をそのまま維持)  昭和53年 3月15日 決定 
東京地裁昭和53年(行ク)第64号 全部認容  昭和54年 5月25日 決定 
東京地裁昭和53年(行ウ)第55号 請求の棄却  昭和55年 8月 8日 判決 
東京高裁昭和55年(行コ)第83号 一審判決の一部取消し  昭和56年 9月28日 判決 
最高裁昭和56年(行ツ)第206号/他 控訴審への差戻し  昭和60年 7月19日 判決 
最高裁昭和56年(行ツ)第205号/他 控訴審への差戻し  昭和60年 7月19日 判決 
最高裁昭和61年(行ツ)第108号 上告の棄却  平成 1年 3月 3日 判決 
 
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