国立療養所菊池恵楓園

入所者の自立および尊厳を

大切にする療養所へ

平成29年10月
園長  箕田誠司


    菊地恵楓園のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。
平成29年10月31日よりWebページのアドレスが変わりました。あわせて約1年半ぶりに園長挨拶を更新し、皆様への現状報告とその間の園長としての取り組みを簡単にご紹介致します。

    昨年の熊本地震では入所者および職員とも人的被害はなく、建物被害も一部に解体を要するものが生じましたが、病棟や居住施設の被害は軽微でした。また、県内のお墓の被害が甚大であったように、当園でも1,300柱を超える、社会の差別偏見により故郷のお墓に入れない入所者のご遺骨をお納めしている納骨堂で骨壺の破損が起こりました。ハンセン病療養所にとって、特に納骨堂は重要ですので、災害や地震対策を施した修復を急ぎ、昨年のお盆の入りには法要を行う事が出来ました。

    さて、平成29年9月現在、園内の入所者数は240名(男性105名、女性135名)で平均年齢が84才です。240名の内訳は後期高齢者が約8割で残り約2割が前期高齢者です。後期高齢者のうち、90才以上の方が60人を超え、100才以上の方も最高齢107才を筆頭に5名いらっしゃいます。私が赴任後の2年半の間に、再入所者は2名、死亡退所者は52名でした。全入所者がハンセン病そのものは何十年も前に治癒していますが、多くの皆さんが、高齢に加え、手足や目を中心に重複した後遺症を抱えておられ、転倒骨折や認知症の悪化などもあって、皆さんのADL(日々の生活活動力)は少しづつ低下しているのが現状です。そういった現状だからこそ、出来るだけ安寧な日々を過ごしていただくために、かってのハンセン病療養所運営の反省に立ち、平成21年に施行された、おひとりおひとりのご意向と人権回復を重視した「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律」、いわゆるハンセン病問題基本法に沿った運営が求められています。

    昨年9月には、人権軽視をはらんだ事案が多発する現代社会への危機感から、入所者自治会と園で広く人権擁護の重要性を共有した「あらゆる人権を大事にする菊池恵楓園決議2016」を決議しました。 このように、入所者はもちろんのこと、入所者自治会と協力しながら、広く人間の尊厳を大切にする精神を改めて再確認しました。 よって、園内の基本方針は、医療においては全人的医療に努め、介護においては、自立と尊厳を大事にし、福祉を含め、医療介護全般にわたって公平性と公正性を重視しています。 特に高齢化した園内では、これまでの包括ケアシステムを深化させる必要がありますので、本年度から、医療ケアチーム、介護ケアチーム、認知症チーム、生活機能支援チーム、在宅医療チームによる多職種協働のチーム医療を導入しました。 これにより、入所者おひとりおひとりに最適の医療、介護、福祉などの支援を包括的に行う園内ケアシステムがさらに充実すると確信しています。 また、入所者の皆さんの最も切実な願いのひとつである、「元気で長生き」を支援するために、理学・作業・言語療法などのリハビリも積極的に行い、また、その体力を作るうえで重要な、そして日々のささやかな楽しみでもある、美味しい給食の実現にも力を入れています。

    この2年半の園内改革を通じての私の実感として、90年間に及んだらい予防法時代の悪しき慣習が染み付いた園風土は、簡単には変わらないということがあります。入所者と職員にとっては長年の間に日常化している何気ないことが、入所者本位の観点からは、様々のシステムが業務本位で、入所者の皆さんの自立や尊厳に配慮できていない点も残っていますし、社会化という点でも十分ではありません。しかしながら、園長には、全職員の意識改革を主導し、ハンセン病問題基本法に沿った改革を根気強く進めて行く責務があります。

    最後になりますが、国立機関である菊地恵楓園のミッションはハンセン病回復者へ寄り添う医療・福祉を通じて、ハンセン病問題の歴史的教訓を発信し続け、入所者自治会とともに人権が尊重される社会づくりに貢献することであると考えております。今後とも引き続き、地域住民の皆様を始め、多くの皆様に菊池恵楓園へのご理解ならびにご支援をお願い致します。