回復へのマイ・ステップ

誰しも立ち直れる病気だと知ってほしい
Yさん (女性・33歳)
【統合失調症 発症時期:結婚後20代後半 現在:介護補助】

今、34歳です。現在は、以前入院していた病院で、介護補助の仕事を
させていただいています。障害者雇用です。
発症したのは、今から6年前の28歳のとき。
自分では気づかなくて、母と父が異常に気づいたんです。

生活が一変、つらくて涙がとまらなかった

発症したとき、あとになって母から聞いたら、言っていることが支離滅裂、訳のわからないことを口走っていたそうです。
「誰かが私の悪口を言ってる」とか、「誰かがサインを送っている」とか、「私を犯罪者扱いしている」とか……。

当時、身内の不幸というとてもショックな出来事があったんです。
周囲の人たちもみんな暗くなってしまって……。
私が明るくしなきゃいけない、自分を高めなきゃいけない、という思いが強くなっていって、それがストレスになっていたんだと思います。
誰かに相談すればいいものを、何も言わず自分一人で抱えて込んでいたんですね。

ちょっと前まで、ごく平凡に生活していたし、楽しく暮らしていたのに、一変してしまった。とても、つらかったです。実家でも、どんどん悪くなっていくばかりで……。
外が怖くて、怖くて、家の中にずっと閉じこもっていました。買い物も行けない、ご飯も食べられない、お風呂にも入れない。
そういったことがすごくつらくて、恐怖心がありました。

初めはうつ病といわれていたんですけど、よくよく診断してもらったら統合失調症ということでした。
症状は幻聴、妄想です。
最初は、ささやくような声で聞こえてきて。「死のう、こっちにおいで」とか……。
その後、誰ともわからない声が聞こえるようになりました。「あいつだ」とか、声がして。誰も何も言っていないのに、まるで現実のように感じていました。
さすがに病気じゃないかということで両親が心療内科を受診させたんです。

 

病気のことを理解してもらえたことが大きな安心に

実家からクリニックに通院していたんですが、対応できなくなって、大きい病院に入院しました。でも、その病院の精神科がなくなるというので、今働いているこの病院に転院したんです。4年前のことです。
病院が変わってからは、少しずつ薬の量を減らし、組み合わせを変えたりしていきました。
ソーシャル・ワーカーさんや、主治医の先生に診てもらうようになってからよくなっていきました。
幻聴には薬で対処していたんですが、それでも耐えられないというときには、スタッフや看護婦さんに話を聞いてもらいました。
「ああ、わかってもらえた」って安心したし、すごくうれしかったですね。

同じような症状の人がいることを知ったときに、「あ、仲間もいるんだ」って思いました。
入院している人たちと話しているうちに、私も普通とちょっと違うのかなって思えるようになってきて。
あと、「認知機能訓練」や「作業療法」等をやっていくうちに、今いろいろ聞こえるけど、それも現実ではないんだということが、わかるようになっていきました。

入院中、両親がお弁当をつくってきてくれたことがあるんです。公園に行って一緒に食べました。
なつかしいなあって、小学生の頃を思い出して、お弁当っていいなあ、と思いました。

回復を実感した出来事ですか? 運転免許証の書き換えをできたということですかね。2時間の講習を受けなければいけなかったので、すごく不安だったんですけど、ちゃんと受けられたので、自信になりました。
それと、ちょうど今から3年ぐらい前、退院してからのことなんですけど、病院で知り合ったケアワーカーさんに刺激されて、私も同じような仕事にたずさわりたいなと思ったんです。それで、ヘルパー2級の講習を受けました。
講習を受けて、修了証書を受け取るまで、まる4カ月でした。週に4日、3時間程、長いときは半日の講習を受けました。
この頃には、症状のほうもかなり軽減していました。

 

家族や周囲の人たちの支えに感謝する

今、症状がないって言ったら嘘になる、やっぱり幻聴も聞こえたりすることもありますが、日常生活に支障はないです。
以前はもう怖くて、一人で泣きじゃくったりとか、物を投げたりとかすごかったので、そのときに比べれば……。

今は、家族のありがたさを感じます。
私の病気のことを心配してくれましたし、地域の理解だったりとか、そういったことに本当、感謝しています。
たくさんの友逹も支えてくれました。友逹も病気のことを知ったうえでつきあってくれている人もいます。
友逹から言われてうれしかったのが「つらいときはつらいって言っていいんだよ」っていう言葉です。その友逹には弱いってところを見せたことがなかったんで、余計に……。
病気から回復して、以前より人に優しくなったかなあと思います。つらそうな人に「どうしたの?」って聞くことができるようになったり。家族に対しても、昔より本当に優しくなりつつあるかなと思います。

今の仕事を続けて、いずれは介護福祉士という資格を取ってみたいです。
人のことをケアするというのは自分のためにもなっていくのかな、成長にもなっていくのかなっていう思いでいます。

 

誰しも立ち直れる、回復への道筋ができる

統合失調症の場合、10代から20代前半にかけて多い病気っていわれているようですが、私はちょっと遅い時期に発症しているんですね。
でも、遅かれ早かれ、みんな誰しも立ち直れるし、何かきっかけがあれば、回復の道筋ができるということを伝えたいですね。
デイケア、作業所に来ている人との交流があれば、きっと乗り越えていけると思います。以前の私みたいに、家に閉じこもってしまって、なかなかそういう場所に行けない人たちも多いと思うんですけど。
そういった方たちも、何らかの支援だったり、機関につながることで、きっといい方向に向かうことができると思います。
同じ症状の人とお話をすることも必要な時があるんじゃないかと思います。
ささいなことでいい、今日何があったとか、ちょっとした日常生活のことについて話したうえで、この病気のことも話せるようになればいいんじゃないでしょうか。

 

 

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