調 査 結 果 の 概 要 1.取組状況 約半数の企業が「方針の明確化と周知・啓発」に取り組み、他の2項目に比べ対 応が進んでいる。 均等法に基づく指針により事業主に求めている3項目についての取組状況をみる と、「方針の明確化と周知・啓発」は49.0%と約半分が既に取り組んでおり、検討 中(13.5%)をあわせると6割を超えている。 「苦情・相談の窓口の設置」をしていると回答した企業は34.3%、「事後の対応 」のための方法は36.8%の企業で決めている。(第1表) 大企業ほど指針のすべての項目において対応が進んでいる。 3項目すべてに対応した企業は29.4%、全く対応していない企業も29.7%で拮抗 している。 1,000人以上の大規模企業は70.9%が3項目すべてに対応しているが、規模が小 さくなるに従って対応している割合が低下し、30人未満では6.8%にすぎない。 各項目毎の対応状況も規模による格差が大きいが、中でも相談・苦情窓口の設置 についての格差が大きい(1,000人以上規模77.2%、30人未満規模8.7%)。 (第2表) 産業別にみると金融・保険業がすべての項目への対応が進んでいる。 産業別にみると、3項目とも実施している企業の割合は金融・保険業で高く、建 設業、サービス業、卸・小売業、飲食店で低くなっている。(第3表、付表1) 2.方針の明確化のための方法 「社内通達で明記」する企業や、「就業規則に規定」する企業が多い。 1社平均2.2種類の方法が行われている。 方針の明確化の方法をみると、@社内通達で明記(42.7%)、A就業規則に規定 (41.4%)、B朝礼などで口頭で説明(32.8%)、C社内報に掲載(30.8%)の順 になっている。(第4表) 1社平均2.2種類の方法で取り組んでいる。 1,000人以上規模では、1社平均2.9種類が実施されているが、取組が多いのは 「社内通達で明記」(56.2%)に次いで「社内報への掲載」(53.5%)、「就業規 則に規定」(46.5%)の順となっている。 30人未満規模では「朝礼など口頭で説明」(56.7%)が最も多く、次いで、「社 内通達で明記」(26.1%)、「就業規則に規定」(18.4%)の順となっている。 産業別では、金融・保険業で、「就業規則に規定」、「社内通達で明記」に次い で「倫理規程や行動基準を策定」が43.1%と他の産業に比べて著しく高い。 (付表2) 3.意識改革・啓発のための方法 「管理職研修を実施」した大企業が多い。 従業員の意識改革・啓発のために講じた対策としては、「パンフレットや手引の 配付」(37.3%)、「管理職が各職場で注意喚起」(36.1%)、「管理職研修を実 施」(35.6%)が多くなっている。(第5表) 1,000人以上規模では、「管理職研修を実施」(53.7%)が最も多く、次いで、 「パンフレットや手引きを配付」(46.6%)、「管理職が各職場で注意喚起」 (37.8%)、「従業員研修を実施」(29.9%)となっている。 30人未満規模では、「職場ミーティング等での話し合い」(49.8%)、「パンフ レットや手引を配付」(32.2%)、「管理職が各職場で注意喚起」(23.7%)とな っている。(付表3) 4.相談・苦情窓口の設置方法 「人事労務担当者が対応する」が圧倒的に多い。 相談・苦情の窓口の設置の方法については、「人事労務担当者が対応する」が 66.9%で最も多い。次いで、「各職場の管理職が対応」21.2%、「相談室を設置し、 専門の担当者を配置」16.8%となっている。 また、「労働組合も窓口を担当する」企業は18.3%、「相談窓口担当者に女性を 含めている」ところが35.7%となっている。「相談窓口担当者の研修」は11.8%で 実施されている。(第6表) 1,000人以上規模では、「相談窓口担当者に女性を含め」(41.2%)て「人事労 務担当者が対応」(71.7%)しているところが多い。規模が小さくなるほど「各職 場の管理職が対応」している企業が多くなり、30人未満では36.7%で「人事労務担 当者が対応」(37.8%)と同程度になっている。 産業別では、すべての産業で「人事労務担当者が対応」が最も多いが、金融・保 険業では「相談室を設置し、専門の担当者を配置」(28.7%)している企業が他の 産業に比べて多い。「相談窓口担当者に女性を含める」としている企業の割合は、 製造業(38.9%)、サービス業(36.7%)で高くなっている。「労働組合も窓口を 担当」は、製造業(25.1%)、卸小売業(24.5%)で高い。(付表4) 5.相談・苦情窓口の周知の方法 約半数が「社内通達で周知」している。 相談・苦情の窓口の従業員への周知をみると、「社内通達で周知」(51.5%)が 最も多く、次いで「社内報に掲載」(29.6%)、「朝礼など口頭で説明」(25.0% )、「チラシやパンフレットを配付」(23.6%)の順になっている。(第7表) 1,000人以上規模では、「社内通達で周知」(57.7%)、「社内報に掲載」 (44.6%)、「チラシやパンフレットを配付」(33.1%)の順になっているが、 100人未満の規模では、「朝礼など口頭で説明」が多くなっている。(付表5) 6.事後の対応方法 セクシュアルハラスメントが生じた場合は「人事労務責任者が対応する」と答え た企業が多い。 セクシュアルハラスメントが生じた場合の対応方法としては、「人事労務責任者 が対応する」(69.6%)が最も多い。(第8表) 1,000人以上規模では、「苦情処理委員会が対応する」(21.9%)が多いのが特 徴的である。(付表6) 7.自由記入欄にみる企業の担当者の意識 T 現状についての意見・感想 ○ 「受け手によって異なる概念は対応が難しい」「どこまでがセクシュアルハ ラスメントかわからない」等、セクシュアルハラスメントの概念の多義性に対 してはいくつかの意見がみられる。 ○ 「管理職の認識が甘い」「管理職に認識させるのが難しい」等管理職層の意 識改革の必要性は多くの人が指摘している。 ○ 「管理職の判断で内々に処理しようとする風潮がある」という企業もある。 ○ 「意識しすぎて職場がぎすぎすしないか」「セクハラにふれたくないという 傾向あり」等この問題を避けたいという意見もある。 ○ 「女性がしっかりしていれば問題は起こらない」「悪意のある女性に振り回 されることもある」等女性に問題ありとする意見もある。 ○ 「加害者が上司である場合が多く対応が難しい」「取引先や親会社から受け るセクハラへの対応は困難である」との指摘もある。 ○ 「人権問題と認識」「教育が必要」「本気で取り組んでいきたい」等積極的 取組の決意は多い。 ○ 「企業の危機管理の問題としてよくわかった」「予防対策としての管理者教 育の必要性を感じた」等雇用管理上の問題として把握されている。 ○ 「相手を尊重する気持ちがセクシュアルハラスメントの防止につながると思 う」と指摘されている。 U 周知・啓発についての意見 ○ 「管理職の理解を促進する」「事業所としての対応を確立する」「具体的な 対応を進めたい」「継続的な広報活動が必要」等前向きに対処しようとしてい る企業が多い。 ○ 「周知が形式的になり、本当に個人の意識が改革されるか難しい」との危惧 もある。 ○ 「社内の徹底が難しい」「研修・広報の時間やエネルギーをかけることが難 しい」という社内事情もある。 V 相談・苦情窓口についての意見 ○ 「窓口担当者の育成・教育がポイント」「窓口の相談しやすさが課題である 」という認識をしている企業は多い。 ○ 「窓口担当者の選任が難しい」と認識しているが、選任された担当者は「相 談を受けた経験がなく不安」「相談担当の役割が不明確であり、対応に不安」 という者が多い。 ○ 「相談がないが、隠れた問題があるのか心配している」「担当者が男性のみ なので相談しにくいのではと心配」等潜在化が憂慮されている。 ○ 「小規模事業所では担当者を決めにくい」「第三者的立場の人がいない」 「余裕がない」等が規模の小さい企業の意見である。 ○ 「人事では相談がしにくいと考えて、外部機関と契約した」企業もある。 ○ 「従業員が安心して相談できる社風が必要だが、それができる企業はセクハ ラは起こらない」という指摘がある。 W 事後の対処についての意見 ○ 「迅速かつ正確な事態把握の難しさ」「窓口の対応についての教育が難しい 」等実際に相談があった企業はその対処に苦労している。 ○ 「事実関係の手法や事実確認のノウハウが乏しい」「プライバシーの保護と 人権を考えながら行動しなくてはならないので時間がかかる」という問題点が 指摘されている。