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第9回全般コード化情報の分析について
第9回全般コード化情報の分析について
1.全般コード化情報の収集状況
報告施設数 | :250施設(前回250施設) |
収集期間 | :平成15年7月〜9月 |
全般コード化情報事例数: | :14263件(前回12909件) |
2.分析方針
分析は以下の方針に基づき実施した。1) | 収集した全事例について、頻度を単純集計し、その傾向を把握した。 |
2) | 収集した全事例について、項目間の相互関係を把握するため、それらのクロス集計を行った。 |
3) | 報告事例の多い「処方・与薬」「ドレーン・チューブ類の使用・管理」「療養上の世話、療養生活の場面」および影響度の大きい事例の割合が高い「医療機器の使用・管理」「輸血」については、該当するデータを抽出のうえ、単純集計および項目間のクロス集計を行った。 |
3.分析項目
以下の項目について、単純集計、クロス集計を行い、この結果を集計表とグラフに整理した。
<単純集計>
以下の項目について単純集計を行った。
・ | 発生月(A) |
・ | 発生曜日(B) |
・ | 発生時間帯(C) |
・ | 発生場所(D) |
・ | 患者の性別(E) |
・ | 患者の年齢(F) |
・ | 患者の心身状態(G;多重回答) |
・ | 発見者(H) |
・ | 当事者の職種(I;多重回答) |
・ | 当事者の職種経験年数(J) |
・ | 当事者の部署配属年数(K) |
・ | ヒヤリ・ハット事例が発生した場面(L) |
・ | ヒヤリ・ハット事例が発生した要因(N;多重回答) |
・ | 間違いの実施の有無および事例の影響度(O) |
<クロス集計>
以下の項目間のクロス集計をおこなった。

4.分析結果
1)全事例【14263事例】
報告事例数が約1割増加している(前回12909例)が、頻度分布に特におおきな変化は見受けられず、全体的にほぼ同様な傾向となっている。
○発生曜日【図1−2】
これまでと同様、平日(月〜金)の発生件数は土・日よりも多いが、平日の中で特定の曜日に集中する傾向は見当たらない。
○発生時間帯【図1−3】
これまでと同様、6〜7時台になると増加し、8〜11時台にほぼピークとなっている。その後、緩やかに減少し、午前2時〜5時台がもっとも少ないという日内変動を示している。
○患者の性別【図1−5】
これまでと同様、男性患者に発生したヒヤリ・ハットは女性患者よりも1.3倍程度多い。これは、男性患者は何らかのリスク要因を有している、または女性患者にリスクを回避する要因を有していることが予想される。
○患者の年齢【図1−6】
これまでと同様、71〜80歳、61〜70歳、51〜60歳の順に多く、中高齢患者はリスク要因が高い可能性がある。この年齢層は男性患者の割合も高いため、リスク要因は性別によるものか、年齢によるものか、などについて検討する必要がある。また、0〜10歳の区分での発生も多く、小児に対する対策も必要である。
○職種経験年数、部署配属年数【図1−10〜11】
職種経験年数、部署配属年数ともに0年のヒヤリ・ハットがもっとも多く、その後、徐々に減少している。新入職員および部署異動後の教育・指導体制の充実が求められる。実態としては図1−9に見られるように看護師による報告が多いことから、看護部内の教育が重要となるが、例えば薬剤に関する情報については薬剤師が教育に関与するなど、他職種との連携体制も必要と考えられる。
○発生場面【図1−12】
これまでと同様、「処方・与薬」「ドレーン・チューブ類の使用・管理」「その他の療養生活の場面」におけるヒヤリ・ハットの発生件数が多い。
○発生要因【図1−13、表1−1】
これまでと同様、発生要因として「確認」をあげている件数が最も多く、ついで「観察」「心理的状況」「勤務状況」「判断」となっている。個別の選択肢で見ると「勤務状況」では「多忙であった」「夜勤であった」が突出しており、「心理的状況」では「思い込んでいた」「慌てていた」「他のことに気をとられていた」が多い。これらの状況が確認不足等を引き起こしている可能性が推測されるものの、根本原因に達しているとは断定できない。記述情報など、他の情報と組み合わせて分析することも考慮する必要がある。
○影響度【図1−14】
間違いが実施された事例が7割を超えており、従来よりも多い(第8回:68%、第7回62%など)。
2)処方・与薬
○発生時間帯【図2−3】
これまでと同様、二峰性の頻度分布を示し、午前では8〜9時台、午後は16時〜19時台の発生頻度が多い。
○患者の性別【図2−5】
これまでと同様、男性患者のヒヤリ・ハット発生が多い。
○発見者、当事者の職種【図2−8〜9】
これまでと同様、同職種者が発見するケースと、当事者本人のケースが多く、看護職者による自己確認、相互確認によって発見される割合が高い。一方、患者本人や家族・付き添いによる発見の事例があり、入院時の患者教育や患者参加型の医療の実践などがヒヤリ・ハットの予防策のひとつになりうると思われる。
○発生要因【表2−1】
個別選択肢として、「看護職間の連携不適切」をあげる事例が312件あった。
3)ドレーン・チューブ類の使用管理
○発生曜日・発生時間帯【図3−2、3−3】
時間帯、曜日による発生頻度の差があまり見られないことが特徴であるが、今回の集計では夜間(0〜1時台)の発生がもっとも多かった。
○発生場所【図3−4】
病室およびICUでのヒヤリ・ハットが9割弱を占めている。
○患者の性別【図3−5】
男性患者のヒヤリ・ハット件数が女性の1.7倍程度となっており、とくに男性患者での発生傾向が強い。内容的には自己抜去が多いことを考慮すると、医療者側の要因よりも、患者、とくに男性患者は抜去など危険性の高い行動を起こしているため、ヒヤリ・ハットを発生させている可能性がある。
○患者の心身状態【図3−7】
相対的に「意識障害」「痴呆・健忘」という状態が多く、精神的な障害がリスクの一要因となって、チューブトラブルを引き起こしていると思われる。
○発生場面×発生内容【表3−2】
栄養チューブ、末梢静脈ライン、中心静脈ラインの「自己抜去」が3割を占めている。
○影響度【図3−15】
「間違いが実施」が8割を超えており、未然に発見されにくいといえる。
4)医療機器の使用・管理
○発生曜日【図4−2】
平日のうち、月曜日と木曜日の発生が少ないが、理由は不明である。
○患者の性別【図4−5】
男性患者は女性患者よりも医療機器に関するヒヤリ・ハットが5割程度多い。医療機器に関するヒヤリ・ハットは患者側の要因よりも医療者側の要因が大きく影響すると思われるが、なぜ男性患者にヒヤリ・ハットが多いのか、不明である。
○患者の年齢【図4−6】
今回の集計では、0〜10歳台の発生がもっとも多かった。次いで61〜70歳、71〜80歳での発生頻度が多い。
○影響度【図4−13】
実施されていれば患者への影響は大きい(生命に影響)と思われる事例が12件(2.7%)となっており、前回(18件、4.4%)よりも減少している。
5)輸血
○発生時間帯【図5−3】
今回の集計では14時〜15時台にピークが認められた。
○患者の性別【図5−5】
男性患者と女性患者の発生件数の差は小さく、他の場面でのヒヤリ・ハットに比べ、性別による変動が少ない傾向があった。
○発見者【図5−8】
今回の集計では、当事者本人、同職種者、他職種者の件数が拮抗している。
○当事者の職種【図5−9】
発生頻度では看護師がもっとも多いが、次いで医師によるヒヤリ・ハットが多く、発生した割合でも3分の1以上となっている。他の発生場面のヒヤリ・ハットよりも、医師の関与が大きい。
○影響度【図5−13】
実施されていれば患者への影響は大きい(生命に影響)と思われた事例が14件(11.8%)報告されており、ハイリスクな領域といえる。
6)療養上の世話等
○発生曜日、発生時間帯【図6−2〜3】
曜日、時間帯による発生頻度の差が小さく、どの曜日・時間帯でも発生するリスクがある。
○患者の性別【図6−5】
男性のほうが女性よりも1.2倍発生しているが、全事例のデータと比べると、男女差は小さい。
○患者の年齢【図6−6】
71〜80歳台がもっとも多く、16.6%を示す。
○患者の心身状態【図6−7】
歩行障害、下肢障害を有する患者の発生頻度が多い。
2)処方・与薬
3)ドレーン・チューブ類の使用・管理
4)医療機器の使用・管理
5)輸血
6)療養上の世話等
全般コード化情報集計結果
(第9回報告事例 14263件)
菅原 浩幸 | 財団法人日本医療機能評価機構・審査部長兼研究主幹 |
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橋本 廸生 | 横浜市立大学医学部医療安全管理学講座・教授 |
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長谷川 友紀 | 東邦大学医学部公衆衛生学講座・助教授 |
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福留 はるみ | 社団法人神奈川県看護協会 医療安全対策推進班主幹 |
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◎ | 武藤 正樹 | 国立長野病院・副院長 |
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山本 実佳 | 東海大学医学部付属病院 診療情報管理課・副主事 |
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(敬称略・五十音順) | |||
◎は班長 |
全般コード化情報集計結果
(第9回報告事例 14263件)
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