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あさコラム vol.22
感染症エクスプレス@厚労省 2016年9月23日

カメ犬

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
   
 前回、麻しんの予防接種歴にかけて、記憶と記録のお話をいたしましたが、
その直後、横浜DeNAベイスターズの三浦大輔投手が引退を発表しました。
 平成3年(1991年)に入団し、横浜ひと筋25年。
 リーゼントが似合うハマの番長として、まさに記憶と記録に残る投手でした。
   
 さて、その三浦投手、現在の背番号は18番ですが、入団時の背番号は何番だ
ったでしょうか?
 ・・・といった、マニアックな質問を記憶だけで正解できるのは、コアな横浜
ファンのみだけではないでしょうか?
 それほど、大事なことの確認について、過去の記憶だけに頼るのはいかがな
ものかと、思うのです。
 やはり、記録は大切ですね。
   
 さて、今回の話題は「カメ犬(かめいぬ)」です。
 カメ犬と聞くと、皆さんはどんな犬を想像されますか?
 中には「亀の甲羅を背負った犬」を思い浮かべた方がいらっしゃるかも知れ
ませんね。
 かつての私もそうでした。
 しかし、赤塚不二夫さんのマンガのウナギイヌじゃあるまいし、さすがにそ
んな犬は存在していません。
   
 一説では、明治時代に西洋人が「Come here!」と飼い犬を呼んだところから、
カメ(Come)を犬の意味としてとらえ、カメ犬は西洋犬のことであるとされて
います。
 この説はかなり有力なのですが、他にもカメ犬は「噛む犬」、「オオカミの
ような犬」という説もあるようです。
 諸説ありますが、私が初めてカメ犬の存在を知ったのは、ハマの番長が一軍
デビューした平成4年(1992年)、秋田県鷹巣保健所勤務の時でした。
   
 秋田といえば、ご存じ「秋田犬」という、由緒正しい日本犬のふるさとです。
 今や天然記念物の日本犬種のひとつである秋田犬、かの渋谷の忠犬ハチ公で
も有名です。
 実は、「秋田犬」は「あきたけん」ではなく、「あきたいぬ」と読むのです。
(ちなみに、「あきたけん」と読むヒトは、秋田県外のヒトとのこと。)

 その秋田、県北地方の大館市や鷹巣町や北秋田郡(現在の北秋田市)では、
秋田犬以外の雑種のことを「カメ犬」と呼んでいました。
 例えば、秋田犬と秋田犬以外の犬とを交配させた雑種を大型犬として育て、
熊や鹿の狩猟をしていたマタギの狩猟犬として活躍していた犬もカメ犬。
 明治時代、小坂鉱山で指導していたドイツ人技師が連れてきたドイツ原産の
シェパードなどの洋犬と秋田犬を交配させて、闘犬などで活躍していた犬もカ
メ犬。
 同じくドイツ原産のダックスフントと秋田犬と交配させて誕生した胴長短足
の犬も、カメ犬。
 もちろん、ただの雑種犬もカメ犬として呼ばれていて、何が何だか当時の私
は戸惑うばかり。
   
 確かに、ドイツ原産などの洋犬との交配が多い秋田のカメ犬ですので、その
言葉の由来は「Come here!」説にも近いなぁという気もします。
 しかし、ドイツ語だとComeはKommですから、「コム犬」になってもおかしく
はないのですけれども・・・。
 その一方、秋田、県北地方と馴染みが深い津軽弁では、犬のことを「カメ」と
呼ぶと記述されている文献もあるとか。
 横浜や神戸など海外との往来が多い港町ならともかく、秋田の山間部におけ
る犬の呼称であることを考えますと、カメ犬は外来語説ではなく、方言説の方
がしっくりきます。
 また、ポチやタロウ、シロのように、カメは当時の犬の名前としてつけられ
ていたことから、一般的に犬をカメと呼ぶようになった説もあります。
 う~ん、秋の夜長にカメ犬の謎は深まります。
   
 さて、9月28日は狂犬病ワクチンを開発したパスツールの命日を起源にした
世界狂犬病デー。
 狂犬病対策に取り組んでいた当時の鷹巣保健所獣医師の中田克平さんが、東
京から鷹巣町に来たばかりの私に、嬉しそうに熱く語ってくれたカメ犬のうん
ちく。
 中田さんや他の狂犬病担当の皆さんを思い出す時、どうしてもカメ犬のこと
も一緒に思い出すのでありました。

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